平成15年中小企業団体情報連絡員総括報告



 当会では、県内中小企業の動向、問題点、要望を迅速かつ的確に把握すべく、中小企業団体情報連絡員制度を昭和49年に発足させ、地域別、業種別に勘案して36名の委員を委嘱し、毎月、情報の提供をお願いいたしているところです。
 ここで集められた業界の動向、要望などについては、適宜関係機関に報告し、また当会としてもそれらを基に組織化支援をはじめとする関連事業に活用させていただくと同時に、このような情報交流が当会と中小企業及び業界との接点になり、円滑な交流の一翼としての役割を果たすことが期待されています。
 こうした情報活動の重要性は、今後益々高くなっていくことが予想され、この中小企業団体情報連絡員制度に対する認識も、以前にも増して拡大していくと存じます。
 皆様方におかれましても、この趣旨について十分にご理解を賜り、一層のご協力をお願い申し上げる次第です。

T 業種別平成15年の状況
U 業種別平成16年の景況予測
V 中央会・行政庁への要望事項
各種 統計・景況グラフ

     

T 業種別平成15年の状況
1.食料品製造業
(1)  豆富業界は、小売店の廃業が多く、4月から8月までの長雨などによる天候不良のため、売上高で5%程度減となり、7年連続のダウンとなった。  価格面では、中小スーパーのグループ化が進み、広島県など県外からの一括仕入が強化されたため、価格の地域間競争が激化し、20年前の卸価格となっている。
 収益面をみると、売上高増が望めない現状では、その対応に苦慮せざるを得ない。打開策の1つとして、県内産大豆使用豆富など、利益率の高い商品のPRを検討している。
 操業面は、週休2日制の完全実施で、少数精鋭により集中生産を行っており、又雇用面では、新規採用は見送り、退職者補充をパートへの切替で対応している。
(2)  醤油業界は、平成15年の県出荷量が前年比97.7%、全国の出荷量平均前年比98.5%で、双方前年出荷量を下回り、その中でも県出荷量は全国平均を更に割り込むという非常に厳しい状況であった。売上では、醤油の品種や、つゆ類など醤油関連調味液の生産数量によって違いがあるが、県内の調味液生産割合が少ないので、醤油の出荷量減が売上減に直接つながり、前年と比べ10%以上の落ち込みであったと推測される。
 価格面では、宅配方式による一般家庭向けについて比較的安定しているが、主婦の就労と高齢化により低下傾向で、反面、スーパー等量販店での販売が増え、大手メーカーの廉売品との競合で単価が下がってきている。
 収益面では、売上減少と価格低迷に加え、JAS制度改正による表示変更などの商品管理費負担増から、厳しい状況にある。
 操業面は、出荷量の減少と業界従事者の高齢化で、製麹からの一貫生産工場が減り、低下している。
 雇用面は、厳しい経営環境から家族労働が主で対応しており、新規採用に至っていない。
 このような中、業界では、新商品開発のための研修会や、青年部活動を中心に業界の活性化に取り組んだ。
(3)  水産練製品業界は、需要の低迷により売上を伸ばすことが困難な状況で、他食品との品質価格競争も激化し厳しい局面であった。
 価格面では、消費者の買い離れ不安から原料価格の上昇を製品に上乗せできず、また、他食品との競争も熾烈を極め特売などが増加したことから、ほぼ横ばい状態であった。
益面では、原料価格高、売上減少により、大幅に悪化した。
 操業面では横バイか若干の減少傾向で推移し、雇用面でもなんとか現状維持するに留まっている。
 このような状況下、業界は、地元で水揚げされた生魚の活用や、企業の営業面、生産面での個性を引き出すための経営支援活動を行った。

2.繊維・同製品製造業
 主として冷夏暖冬の影響から売上高は例年以上に低下した。また、受注量を増やすため従来手掛けなかった通信販売・訪問販売の商品を受注する事業者もあったが、これらは発注元の要求が多岐にわたるので、量が確保できても生産効率が悪いため、売上増に直結していない。(この分野は、優秀な技術者がいれば、ある程度期待できる)
 価格面では、発注側もより安価な受注者を求めるし、受注者自身も受注獲得競争から自ら赤字をいとわない単価切り下げの働きかけを行っている例も認めら、加えて、中国からの廉価な輸入品価格の影響もあり、依然として下落傾向にある。
 収益面では、売上高低迷、価格安の影響から生産コストが高くなり、人件費を抑えるため夏以降短いところで2〜3日、長いところで10日間休養せざるを得ない事業者もあり、当然のことながら収益増は望めなかった。このようなことから、事業主の指向するところは、事業主等、家族の生計の維持、従業員雇用の場の確保に目標を変換したところが多い。
 操業面では、5月頃まで夏物を主体にある程度の受注があり相応の操業が確保できたが、6月後半以降、不景気の上に冷夏暖冬の影響で低下した。このため毎月のように雇用調整に迫られる事業所もあり、また、短納期が部品の準備不足という現象も生じさせ、操業に影響を及ぼした。学販物を扱う事業所は、メーカーの努力にもよるが一般に操業度が高かった。
 雇用面では、現時点において雇用が増加する可能性は全くない。但し、若い技術者については、ほとんどの事業所が喉から手が出るほど欲しいが、当業界は、若い人の求職ニーズに合わないため求職者がない。他方、外国人技能実習生が増加している現状について再認識する必要がある。
このような情勢下、従来から営業能力の高い企業を中心とした小グループを単位とする垂直連携の強化により、全体の受注量を増加させることを施策としていたが、今年は更なる受注・発注の斡旋に努め、県外の新天地に販路を拡大した。

3.木材・木製品製造業
(1)  合板業界は、売上高前年対比7%アップとなっている。
  価格面では、平均単価0.5%アップとなっている。これは、品質向上(低ホルムアルデヒド放散量の接着剤使用)合板にシフトした結果である。
 収益面では、広葉樹合板工場が依然厳しい経営状況ながら少し改善された程度である一方、針葉樹合板工場が昨年に引き続き利益を上げることができ、対照的な結果となった。
 操業度面はほぼ100%の稼働率で、雇用面では昨年の550人に比べ、560人〜565人規模で推移している。
 また、平成15年は、JAS法及び建築基準法の改正があり業界も対応に追われた。しかし、輸入合板が入り難い状況があったためかえってこれが追い風となり、国内メーカーは活況を呈した。
 このような動きの中、業界では木材産業高度化事業を継続し、併せて、JAS法改正、建築基準法改正に対して業界をあげて啓発活動を行った。また、新JAS法でのノンフォルマリン合板及び構造用合板の利用促進を図るべく、展示会への参加、PR活動を行った。
(2)  木材業界全体では、需要の大半を占める新設住宅着工数が85.4%と著しく減少しているため、売上高が大幅にダウンした。価格面では、原木が6月まで下げ続けたが、7月以降、多少荷動きがあり値上げに転じたものの長続きしなかった。原木市場においては、値がつかず不落の材が増加した。檜・杉に至っては、それぞれ10月、11月に早くも値下がりした。収益面では、受注量の減少と価格競争激化の煽りを受け、経費削減や人員整理も限界で、著しく減少した。
 また、個別にみると、柱材等製品は、乾燥規制が厳しく、対応に手間を取られる割に価格に転嫁していない。建築材は、山陽筋の大手木材メーカーからの営業攻勢が厳しくなり、大幅にダウンした。梱包材製材は、鉄鋼輸出が上向いてきたが、木枠製品から鉄枠その他に係わっていた地域パレット商社の撤退もあり、厳しい状況に変わりはない。併せて、チップ業も価格低迷で対応に苦慮している。
 このような現状の中、業界では木材の需要拡大を図るために、しまね木の香の家推進事業の実施(100戸・地場産材を50%以上利用した木造住宅へ支援金30万円助成)、しまね木材まつりの開催(木のPR・安来、松江会場来場者7,000人)、中学校へのものづくり教材の配付(「スギ板くん」2,000枚)、その他エンドユーザーへのパンフレット、冊子、ポスターの配付、住宅展示会の開催などに取り組んだ。
(3)  家具業界は、耐久消費財の買い控え、海外品(東南アジア、中国)増加による単価下落(1人当たり客単価)、住宅内部の収納機能付クローゼット等の増加、ライフスタイルの変化(ブライダル向けタンス離れ等)から、厳しい状況となった。また、マンション建設等の工事物は、広島・福岡等の物件まで物理的距離があり、経費高で減少している。一方で、通販製品に活路を求め、一部誌上掲載され、今後に注目が集まる企業も出てきた。(難点は小物故に価格が安い)
 価格面では、一部ブランド商品、高級商品の販売強化に取り組み単価下落を抑えたところもあるものの、全体的に安価な海外商品の市場占有率が高く、平均価格が更に下がった。消費者動向は、価格の安い小物が売れ筋となっている。
 収益面では、売上減少、経費削減も進まず、固定費が吸収できないため、大きくダウンした。
 操業面では業界全体が売上不振にあえぎ活気がみられず、雇用面では従事者の高齢化傾向が目立ってきた。
 このような現況下、傾向的にチラシによる集客依存型となり、どうしても低価格で粗利益の高い海外商品が好まれることから、海外商品の開発仕入れに強化せざるを得ない状況がある。

4.出版・印刷業
 業界新聞のアンケートで売上伸び率を前年同期比で調査したところ、平成15年は、増加46%、減少54%で、平均増加率5.5%、平均減少率△5.9%、全国平均で△0.7%となっている。最も高い伸び率は15%、大部分は5%以内で、逆に最も低いのは△30%、後は△5〜10%の占める割合が高い。規模別では、50〜99人、200人規模で増加と回答した企業が、減少を上回っている。当県は、アンケート結果よりも更に厳しい経営環境であることと推測される。印刷業界は、昨年7月以降、経済産業省による「不況業種」の指定を受け、現在もその指定延長となっていることから深刻さは計り知れない。
 価格面では、前述のアンケート・受注競争と印刷料金への影響について、「依然厳しい」89%、「落ちついた」9%、「変化なし」2%となっており、下降率の単純平均で9.2%〜9.5%、最高30%、最低3%で、10%という回答が最も多い。この傾向は、当県でも見られると共に、更に悪化していると考えるべきであろう。加えて、価格下落が続き、コスト削減による対応は限界で、現在は人件費に手をつけざるを得ないところまで追い込まれているのが実態である。
 収益面では、企画提案営業に積極的にチャレンジし、新分野への進出や新商品開発で新たな需要を開拓し売上を伸ばしても、コストがかかりすぎ減益となるケースもみられる。多品種、小ロット化への流れは避けて通れないが、現状を維持するために毎日の営業、新規開拓を疎かにすることができず、その対応は後手に回っている。
 雇用面では、厳しい経営環境から新規採用者の抑制、定年退職者の不補充で対応を余儀なくされている。
 また、業界を取り巻く経営環境の変化として、インターネットの普及、デジタル化の進展があげられ、それらに対応するため業務の再構築が課題となっている。
 このような経営環境下、業界では人材育成に重点をおき、「DTPエキスパート養成」などのセミナー、研修会に取り組んだ。

5.窯業・土石製品製造業
(1)  瓦業界は、産地間競争激化、地域間格差の影響、住宅需要の先細りで、売上高は対前年比80〜90%となった。
 価格面では、前年並みに推移しながらも、デフレ圧力による影響も受けており、収益面でも、売上の大幅な減少やコスト削減も限界で、悪化の一途をたどっている。
 操業面では、需要減から長期的な生産調整がなされ、大幅ダウンとなっており、雇用面でも、生産調整、規模縮小等で、定年退職者の不補充を併せ減少となっている。
 このような動向の中、業界では、瓦のPR事業、販売エリアの拡大・新市場を求める活動、廃棄物のリサイクル活動、原料の新配合についての研究開発、国・県の集積活性化事業に取り組んだ。
(2)  生コンクリート業界は、公共事業の削減に伴い、3年連続の需要減少となった。平成15年の出荷量は、対前年比△15%となり、価格面では、ほぼ横ばいで推移したものの、収益面でも、需要の減少に伴い悪化した。
 操業面では出荷量減少により低下しており、雇用面でも人員配置の合理化に努め削減となった。
 このような状況の中、建設投資減少に対応するために、生コンクリートの供給体制のスリム化を図ると共に、工場の集約化、ミキサー車の減車などの合理化策に取り組んだ。また、火力発電所から排出される石炭灰等の産業廃棄物を原料とする生コンクリートを製造した。
(3)  コンクリート二次製品業界は、厳しい経営環境下、売上高は対前年比50%ダウンとなり、価格の低迷、売上の減少により、収益面でも悪化した。
 操業面では80〜90%程度で推移し、雇用面では過剰気味となっている。

6.鉄鋼・機械製造業
(1)  鉄鋼業界は、機械加工、鉄鋼関連で受注に持ち直しの傾向がみられ、売上高が微増となる企業がある一方で、全体的に受注価格の低迷、公共工事の大幅な減少と併せ民間工事の低調により、売上ダウンとなっている。
 価格面では、市場の縮小、海外製品との競争激化などにより、コストダウン要請が依然強く、横ばい乃至下降気味で推移している。県内企業は下請がほとんどであり、取引条件の悪化が目立つ。中国の需要増により、鉄鋼鉄源の販売価格が急上昇している。
 収益面では、中国の生産拡大による材料費、鋼材等の上昇の中で、コスト削減要求や受注価格の低迷で、大幅な悪化となった。
 操業面では、機械部品製造・金属製品加工業で、納期、受注額等が厳しく、バラツキが大きい。鉄鋼業は後半から高水準の操業となり、長引く不況で人員減、設備能力が低下した中で上昇している。
 雇用面では、一部で開発部門の人材を必要としているが、厳しい情勢下の先行き不安から、現状維持が精一杯である。また、契約社員、人材派遣などの対応をしている企業もみられる。
 このような動向の中、業界では、人材育成や技術面の強化を図るために研修会を開催したり、環境整備活動、企業の受注量の確保などに取り組んだ。
(2)  鋳物関連業界は、1月から8月までの生産量は前年を9%上回ったが、9月以降5%ダウンで推移した。その結果、前年対比で生産量106%、売上高105%となった。
 価格面では、自動車関係以外の需要が依然低水準であることや、海外製品との競合が激化しており、更にコストダウン要請もあり、値戻し運動を展開したにも関わらず、低価格で推移しおおむね前年と同水準であった。
 収益面では、原材料の銑鉄やスクラップの大幅な値上がりに加え、コークスなどの副資材の値上げが生産コストにはね返り、生産量が幾分上昇したにも関わらず一段と悪化傾向にある。
 操業面では、時期的、企業により格差はみられたが、年間を通して上昇傾向であった。
 雇用面では、生産量の増加傾向が続く反面、収益の低下から全般的に減少した。
 このような経営環境下、業界では構造改善事業に取り組むと共に、業界上部団体と連携して全国新聞紙などを利用した「値戻し運動」の展開、施策・税制要望について陳情を行った。

7.電気機械器具製造業
(1)電気機械器具(環境)
 経済の落ち込みも若干明るさが見られたが、為替変動、円高傾向と依然不安定要素があるため先の見通しが立ちにくい1年であった。設備投資に対して上向きの気運があり、前年に比べ受注増となった。しかし、公共事業関連は、受注減となり、厳しい状況であった。  価格面では、設備投資において、ユーザーの最終判断が価格で決まる傾向が強く、値引きによる調整が行われた。
 収益面では、前年を上回る増益となったが、全体として利益率の減少が続いていることから、更なる経費削減が必要である。
 操業面では、前年に比べ活発化している。但し、現状が今後も続くとは考えられない。  雇用面では、大幅な変動がなく推移した。
 このような状況の中で、業界では研究開発、新しいビジネスモデルの構築、情報発信・共有化の促進策、意識改革・人材育成のセミナー開催などに取り組んだ。
(2)電気機械器具(電子部品)
 売上高は、昨年に比べ生産数量の持ち直しがあり、情報通信関連の仕事量が県内に確保され、下落するようなことはみられなかった。
 価格面では、部品単品の製造単価の下落よりも、客先別からトータルコストを下げるよう要請があった。
 収益面では、今までの長い期間のロット生産から、短納期、小ロット生産への移行が進んでおり、現状維持が精一杯という利益なき繁忙が下請企業には続いている。
 操業面では、利益を確保をするために、昼夜勤の2交代制の対応を取らざるを得ない状況であり(設備能力不足も含む)、一部、休日出勤している事業所もみられる。
 雇用面では、昼勤雇用についてパート、臨時工等での対応でまかなえるが、夜勤シフトともなると、正規の職員又は派遣労働者に対応を求めざるを得ない。(コストアップにつながる)
 このような状況下、1企業1親企業という形態では維持がとても困難であるので、複数の親元と取引ができるよう業界をグループ化してまとまりを作り、仕事量を確保するための営業活動をおこなった。(物流、管理、設備等を含めて)

8.畳製造業
 売上高は、全体として前年比約10%減となった。受注減少に伴う販売不振により、価格面では、畳表が相場により変動するため、国産表が高値、中国表横ばいで推移している。その他、副資材等は、変化がほとんどない状況である。
 収益面では、畳表の使用材料の品質向上に伴い、国産表から中国表にシフトしているものの、販売不振のため仕入コスト減の恩恵を受けることなく悪化した。
 雇用面では、後継者も含め、従業員の若手採用が進みつつある。
 このような情勢の中で、業界では、材料価格を下げるために畳表をコンテナ仕入したり、共同受注に積極的に取り組んだ。

9.卸売業
 売上高については、マイナスを余儀なくされた企業が50%以上となっており、昨年に引き続き2年連続で、極めて深刻な状況と言える。その主な要因は、冷夏と多雨、公共事業の激減、個人消費の低迷など、多岐にわたっている。
 価格面、収益面共に、前年同様に低位、底這いが続き、一向に改善の気配がみられない。
 雇用面では、退職者不補充による実質的な人員減となっている企業が大半を占めている。質的な人材不足感は、相変わらず根強い。また、社会保険の総報酬制が実施され、ほとんどの企業で負担増となっており、新規採用を難しくしている。
 このような現状下、業界では、盆・年末の資金対応と共に、IT研修会を行った。流通団地では、企業PRと従業員の志気昂揚を目的にイベントを開催し好評を得た。

10.小売業
(1)  専門店は、昨年下半期以降、個人消費の低落が一層強まり、大幅な売上減となっている。
 価格面では、どうしても価格訴求に頼らざるを得ない状況があり、それが悪循環となり競争激化を招いている。
 収益面では、売上減と低価格の影響で困窮を極めており、経費の削減も限界で、人件費のカットにより対応をするしか術がなくなっている。
 雇用面では、元々余裕がなく現状の人員で対応しているのが実情であり、今後益々厳しくなると予想される。
 その他では、医療福祉関連企業が堅調であり、新商品販売や販売戦略に関心をもって取り組んでいる専門店も同様に前年並みに推移している。
 このような厳しい現状の中、業界では、貸し渋り、貸しはがしへの対策と資金繰りの対応を図るために、制度融資に関する研修会を行った。
(2)  共同店舗は、空き店舗が益々増え、本来の店舗コンセプトを維持できない状況が生じている。また、経費削減の流れが販促費の大幅なカットにつながり、客離れに拍車をかけている傾向がみられる。そのような厳しい状況下、必死の経営努力により、売上高は善戦をしているものの、依然厳しいことに変わりはない。
 価格面では、低価格競争に巻き込まれており、その対応に苦慮しており、収益面でも、赤字経営の個店が増加しており、経費削減による対応も限界である。
 雇用面では、パート雇用にシフトしており、最低人数での対応が目立っている。また、新規採用においては、雇用側と求人側のニーズがかみ合わず、雇用のミスマッチが生じている。
 このような困難な情勢下、共同店舗では、空き店舗への誘致活動、施設管理費見直しなどの経費削減に最大限取り組んだ。
(3)  市街地の商店街は、売上高の大幅な減少と共に、低価格競争に陥っており、収益の改善に至っていない。雇用面では、賃金カットでしのいでいるが、このままの状況が続くと、人員削減が避けられない状況にある。
 郊外のロードサイド型商店街では、売上高が前年と比べほぼ横ばいで、低めに安定をしている。価格面では、業種によって様々で、低価格にシフトしているところもある。収益面では比較的安定しており、雇用面ではパート、アルバイトの確保が欠かせないが、現状において雇用側の買い手市場である。
 このような動向の中、商店街では消費拡大のためのプレミアム商品券を販売(完売)したり、テレビ番組とタイアップして販促活動などに取り組んだ。

11.サービス業
(1)  旅館業界では、県東部において、中・高校生のスポーツ大会開催や国外のサーズの影響などにより、ホテル、温泉地に訪れる県外観光客が前年と比べ微増となった。一方、県西部では、観光客、公共工事関係者の宿泊が減少し、前年対比微減となった。
 価格面では、旅行代理店間での価格競争の激化、同業者間での低価格化により、昨年と比べ宿泊単価が僅かであるが低下している。
 収益面では、宿泊料金の低下、土産品の買い控え、また、施設管理費などの支出増により、悪化傾向で廃業・休業が出ている。
 このような現状の中で、観光客誘致促進策として、山陰路キャンペーンの実施、九州地区の旅行代理店招致などを行った。
(2)  自動車整備業界は、点検項目の削減などにより1台当たりの売上高が減少し、その上に価格競争による低価格の受注などと相まって、より厳しい状況で推移した。また、関連業種の売上減少も全体的に影響を及ぼした。
 価格面では、1台当たりの整備単価の下落に加え、異業種を含めた業者間の価格競争が激しくなり、低下傾向で推移した。
 収益面では、全体的な仕事量及び売上高の減少、価格の低下などにより、悪化傾向にある。
 雇用面では、収益の悪化により、専業とディーラーの賃金体系において格差が生じている。
 このような現況下、自動車使用者対策としてマイカー点検教室の開催、各種調査による業界動向の把握などを行った。
(3)  情報機器ソフトウェア業界は、売上高がほぼ横ばい又はやや下落で推移した。
 価格面では単価が下がり気味で推移したが企業努力によって原価低減を図り、売上高の落ち込みをカバーして、収益面では昨年並の水準を確保した。
 雇用面では、従業員の数は変わらないが、人材の採用意欲はある。
 このような中、業界では、受注量の確保を促すため企業に対する仕事の紹介を一層進め、スキルアップのための啓発セミナーなどを行った。また、企業間の親密度を高めるために交流会を開催した。
(4)  建築設計業界は、長引く景気低迷の中で、民間投資の落ち込みと公共事業削減により、受注量の大幅な減少を余儀なくされている。
 価格面では、公共事業の人件費単価が下がっており価格も低下している。また、一部では、受注競争の激化による低価格入札もある。
 収益面では、売上の減少、単価の切り下げなどの影響により悪化している。
 雇用面では、厳しい経営環境を理由に、新規雇用はほとんど行われていない。若干の雇用調整も見られる。
 その他、市町村合併を控え若干の特需がある。
 このような厳しい動向の中、業界では、公共建築の設計者選定方法の改善について陳情(入札方式→設計競技方式)すると共に、新事業への調査研究、経費削減のための勉強会を行った。

12.建設業
(1)  平成15年は、年明けに消防庁舎建築工事(木次町)が発注され、対前年比104.3%の滑り出しとなった。その後4月に、江島大橋、浜田合庁、隠岐空港用地造成、6月に仏教山トンネル、益田川ダム、7月には最大規模の芸文センター、市民病院関連、8月から12月にかけては、小学校改築などが発注されたが、公共事業縮減の中、全体としては、件数で△6.7%(△380件)、契約高で△23.8%(△718億)と大幅な落ち込みになっている。
 価格面では、ここ数年減少傾向が続いている。労務単価は、4月に50職種平均で3.4%減の17,940円に改訂された。建築資材については、市場調査に基づき、8月に鉄筋、H型鋼の改訂、10月に全面改訂を行ったが、傾向として鋼材関係が10%以上のアップ、側溝製品などが5%程度ダウンした。
 収益面では、受注量減の中、労務単価の切り下げに加え、競争の激化により、収益性が大きく落ち込んでいる。
 雇用面では、公共事業削減による建設業の景況感について、依然として明るい兆しを見るに至っていない。倒産企業も増加傾向にあること、人員整理の動向についても建設業の増加傾向が続いている。
 このような困難な環境下、公共事業予算確保については、業界中央団体や各県協会と歩調を合わせ、国などへ協力の要望活動を展開した。また、設計、積算、入札制度など、建設業の経営環境向上のため、国などと意見交換会を実施した。この他、PFI、ISO、施行体制の適正化、JV会計、連鎖倒産防止、新分野進出などの研修会を始め、県内高校生を対象とした建設工事現場の見学会、技術展への出展参加、ボランティア活動として定着した県内国道の一斉清掃などにも取り組んだ。
(2)  舗装業界は、対前年比15%減の受注に至り、大変厳しい状況となっている。
 価格面では昨年とあまり変わらないが、収益面では売上高の減少に伴い悪化している。
 雇用面では、退職者の補充や新規雇用について、できるだけ最小限度に留める意向が働いている。
 このような状況下、業界では舗装技術向上のための研鑚に努めた。

13.運輸業
 売上高は、物流需要が依然として低調で数字に出ておらず、特に年度替わりの4月〜6月が顕著であった。
 価格面では、需要の減少による過当競争、取引先のコスト削減による値下げ要請により、下落傾向で推移し、収益面でも、一段と厳しさが加わり、企業の大半が赤字経営、利益減の経営を余儀なくされている。
 雇用面では、4月〜6月で人員削減を行う企業が見受けられた。また、一部の企業では、高年齢者を再雇用しているが、様子見でその場をやり過ごしている感が拭いきれない。


U 業種別平成16年の景況予測
1.食料品製造業
(1)  醤油業界は、主原料の大豆が米国、国内とも昨年は不足、価格は高騰しており、更に値上がりする模様である。製品への転嫁は望めず消費の低迷と併せ、景況は更に悪化するものと予想される。
(2)  水産練製品業界は、原料価格の下落により採算面で明るい兆しがあるが、売上の確保が重要であることは言うまでもない。

2.繊維・同製品製造業
 縫製業界の景況は、もちろん経済情勢に左右されるが、15年の夏以降のように冷夏、暖冬といった気象条件に左右される傾向が強い。その意味で16年1月以降の冬の気象、夏の気象によって良くも悪くもなる可能性をもっている。また、最近の円高は、更に安価な衣料品輸入の増加の可能性をもっているので、先行きは不安定である。以上のことから、年間を通しての予測は、一概に言えない状況にある。

3.木材・木製品製造業
(1)  合板業界は、輸入合板の圧力も次第に高まり、また、原材料である原木価格の上昇も著しい中、厳しい状況が考えられる。
(2)  木材業界は、住宅着工件数が増加しない限り景況の好転が望めないが、改正建築基準法、シックハウス対策等健康志向が高まる中で、消費者と木材供給者との連携を今まで以上に深め、地場産材の需要増を指向して、消費者との信頼関係を高めていけば、多少の業況好転が期待できる状況にある。
(3)  家具業界は、景気への先行き懸念又は景気動向に関係なく、ナショナルチェーンの出店及び通販業の攻勢などがあり、中規模小売店は更に厳しい状況におかれると予想される。

4.出版・印刷業
 総需要の減退と低価格化の進行、過剰な供給力とコスト削減が迫られる中、業界においても一層厳しい経営環境が続くものと推測される。

5.窯業・土石製品製造業
(1)  瓦業界は、住宅建設着工件数が引き続き110万棟程度と予想され、また、公共工事削減の影響も受けることから、更に厳しい状況になると予測される。
(2)  生コンクリート業界は、公共工事削減の影響が大きく、官公需を中心とする生コンクリート需要が前年対比10%程度減少する見通しである。
(3)  コンクリート二次製品業界は、好転の兆しは全く見られず、益々下落するものと推測される。

6.鉄鋼・機械製造業
(1)  鉄鋼業界は、依然厳しい状況に変わりはないが、納期、受注金額等の状況によって成約の機会に恵まれるチャンスもあると予測される。
(2)  鋳物関連業界は、元来から下請の体質が強く、また、最近の円高傾向や近隣諸国の攻勢を背景に、厳しい状況が続くと予想される。その中で、国内メーカーの部品需要が高水準にあるため、コスト高を如何に単価に転嫁できるかどうかがカギとなる。

7.電気機械器具製造業
(1)電気機械器具(環境)
 中小企業及び地方の合併、倒産、廃業が増えることが否めず、改革を進め原点を顧みて再構築をすることが生き残りの条件になると予測される。債権管理の徹底によるリスクマネジメントの重要性が更に高まる1年であると考えられる。
(2)電気機械器具(電子部品)
 県外からの受注を確保しなければならず、そのための営業活動の中で客先からの要望が強いのは、「ISOの認証取得」、「トータルコストの減少」である。企業が客先の要望にどれだけ答えられるかによって淘汰されるであろう。

8.畳製造業
 新築住宅着工数の減少、リフォームによる畳離れなどから、一層厳しい経営環境におかれると予測される。

9.卸売業
 経営環境は益々厳しさを増しており、特に建築関連資材を取り扱う企業に至っては、公共工事の大幅削減から予断を許さない情勢にある。

10.小売業
(1)  専門店は、自治体の予算減、賃金カットから消費の低迷が続き、依然厳しい経営が続くと予想される。
(2)  共同店舗は、消費低迷や空き店舗問題など、依然厳しい景況になると予測される。
(3)  商店街は、業種間で格差が出てくると思われ、良くて現状維持が精一杯と推測される。

11.サービス業
(1)  旅館業界は、本年8月開催される中国’04総体による県外客の入り込みを期待しているが、業況は依然厳しいものと予想される。
(2)  自動車整備業界は、自動車保有台数の微増、買換年数の長期化などにより、整備業に対する依存度が変わらないことから、ほぼ横ばいで推移すると推測され、加えて、企業間格差が一段と広がる可能性がある。
(3)  情報機器ソフトウェア業界は、ITバブル時のようにハード中心でなく、ソフトを中心にした案件の受注が出てくると思われる。県内は、公共事業を中心に厳しい経営環境が続くと予想され、特に県内ユーザーを主に対象としている企業に不安感が募っている。
(4)  建築設計業界は、公共事業が更に減少することから、経営環境が一段と厳しくなると予想している。

12.建設業
(1)  建設業界は、高規格幹線道路の整備方針が、山陰道(宍道〜出雲間)は公団方式、尾道松江線は新直轄方式と決定したことについて、素直に評価すべきと考える。しかし、公共投資関係予算全体で見れば、昨年に続き、国は3%強の削減、県においても財政健全化計画に基づき縮減することとなっているため、H16年は一層厳しい状況と予測している。特に、都市再生や市町村合併など重点投資分野以外の公共事業については、更なる効率的執行が求められるため、地方においては地域格差が広がる懸念がある。従って、県内企業への優先策について格別なる配慮を望むと共に、企業としては自助努力による経営合理化などが必至であることを認識しなければならない。
(2)  舗装業界では、前年対比10%程度の受注減を予測している。

13.運輸業
 前年10月〜12月は輸送需要が回復してきており、収受料金面にも好影響を及ぼすことになるため、その傾向の持続に期待している。


V 中央会、行政庁への要望事項
1.金融・税制・支援関係
(1)  中小零細企業に対する貸し渋り対策、公的信用保証等融資改善対策を望む。
【木材・木製品製造業界】
(2)  住宅建設促進に向けた税制面の優遇措置を望む。
    【木材・木製品製造業界】
(3)  地場企業を優先する発注、助成、支援を望む。
    【出版・印刷業界】
(4)  金融面において、制度資金及び保証協会の更なる拡充を要望する。
   【鉄鋼・機械製造業界】
(5)  中小企業の育成、情報提供、助成事業など中小企業の強化施策を望む。
    【鉄鋼・機械製造業界】
(6)  高齢者雇用への助成金が減らされる傾向にあるが、従来通り継続をお願いしたい。
   【鉄鋼・機械製造業界】
(7)  高度化事業制度既往借入金の金利引き下げ(借入年度によって生じる金利格差の是正)を望む。制度上引き下げが難しいのであれば、利子補給制度等の創設を要望する。
    【卸売業界】
(8)  高度化事業制度借入金の返済支援措置を要望する。
    【共同店舗業界】
(9)  所得減税を含めた長期の減税施策実施を望む。
    【小売業界】
(10)  金融面において、長期的な展望をもった経営ができるように、安定的な長期の運転資金(10年超)制度を望む。
    【電気機械器具製造業】

2.公共事業関係、その他
(1)  売上に直結する各種情報の提供を望む。
    【食料品製造業界】
(2)  昨年経団連がまとめた外国人技術研修者(技能実習)の在留期間(最長2年)を更に延長する施策を切望する。
    【縫製業界】
(3)  工場の環境対策、煤煙などに対する研究や対応に向けた支援を望む。
   【木材・木製品製造業界】
(4)  IT化が盛んに説かれるが、工場がある地域は光ケーブル網の設置が遅れており、計画もないと言われる。早急な光ケーブル網の確立を望む。
    【木材・木製品製造業界】
(5)  地場産材の需要拡大支援策を要望する。
    【木材・木製品製造業界】
(6)  基幹的社会資本の着実な整備を望む。
    【窯業・土石製品製造業界】
(7)  地域産業の活性化に寄与する生コンクリートの使用拡大を望む。
   【窯業・土石製品製造業界】
(8)  県内公共工事については、県内産のコンクリート製品を最優先で利用することを切望する。
    【窯業・土石製品製造業界】
(9)  島根県が導入の産廃税について、その導入を見合わせていただきたい。
   【鉄鋼・機械製造業界】
(10)  地産地消推進に向けた、取り組みを望む
    【小売業界】
(11)  公営宿泊施設の早期廃止、入湯税の廃止を望む
    【旅館業界】
(12)  車検期間の延長は断固反対する。
    【自動車整備業界】
(13)  公共事業における事業の確保と適正価格での発注を望む。
    【建築設計業界】
(14)  中小運送業者で組織する協同組合に対して、現行と同程度の割引制度を継続していただくよう要望する。
    【運輸業界】
(15)  ISOなどの国際規格を取得する際に生じる費用負担等について、公的支援を要望する。
【電気機械器具製造業】