平成14年中小企業団体情報連絡員総括報告



 当会では、県内中小企業の動向、問題点、要望を迅速かつ的確に把握すべく、中小企業団体情報連絡員制度を昭和49年に発足させ、地域別、業種別に勘案して36名の委員を委嘱し、毎月、情報の提供をお願いいたしているところです。
 ここで集められた業界の動向、要望などについては、適宜関係機関に報告し、また当会としてもそれらを基に組織化支援をはじめとする関連事業に活用させていただいております。そして、このような情報交流が当会と中小企業及び業界との接点となり、円滑な交流の一翼としての役割を果たしてきました。
 こうした情報活動の重要性は、今後益々高くなっていくことが予想され、この中小企業団体情報連絡員制度に対する期待も、以前にも増して拡大していくと存じます。
 皆様方におかれましても、この趣旨について十分にご理解を賜り、一層のご協力をお願い申し上げる次第です。

T 概 況
U 業種別平成14年の状況
V 業種別平成15年の景況予測
W 中央会・行政庁への要望事項
各種 統計・景況グラフ

     

T 概  況
 2002年の日本経済は、事実上の景気底入れ宣言を行った政府の5月の「月例経済報告」や、やや慎重な表現ながらもやはり景気が最悪期を脱したとの認識を示した日銀の6月の「金融経済月報」にみられるように、景気は底入れをしたものの11月に両者が再び下方修正発表するに至り、また、米国経済の夏以降の景気低迷や株下落の影響から先行き不透明感が強まるなど、景気回復の脆弱さが目立つ年であった。また雇用状況では、年平均の完全失業率が5.4%と、1953年の調査開始以来最悪で、予断を許さない情勢にあり大量失業時代到来を懸念させる結果となった。
 こうした状況下、県内の産業活動では、大手コールセンターの創業などがある一方で、デフレ傾向と消費全般の伸び悩みによる企業収益の減少、前年度並みの企業倒産件数、相次ぐ誘致企業の撤退などにより、停滞感を拭い切れていない。
 業種別にみると、建設業は、県の一般会計の減額予算の中、公共事業費が’05年度までに’02年度比で30%の減額が予定されていることを背景に、その影響が如実に倒産件数増に反映され、関連業種への連鎖倒産となって表面化した。
 小売業は、個人消費低迷の煽りを受け、各企業とも収益性などの見直しに迫られ、マイカル破綻後の支援企業についても、出雲及び浜田サティ跡ではそれぞれ地域流通の明暗を分けており、昨年からの厳しい経営環境は変わらない。
 卸売業は、デフレ経済下における流通コスト削減の余波が大きく企業収益も伸び悩んでいるが、県西部では中山間地域に対する共同配送の試みがされるなど明るい兆しもみられる。
 サービス業、特に観光関係では、個人消費の冷え込みに加え、フォーゲルパークのオウム病問題、一昨年の米国多発テロ事件の反動による国内旅行回復の思惑が外れるなど、観光客の伸び悩みが見受けられる。
 以上のことから総じて県内経済は、依然先行き不透明な経済動向に翻弄されていることは否めず、今後、経済政策をはじめとする早急な対応が急がれる状況にあると言える。

1.生  産
 本県の平成14年鉱工業生産指数(平成7年=100)は81.3で、対前年比3.2ポイントの減となった。(全国は対前年比▲1.4ポイント)季節的にみると、前半から徐々に上昇傾向にあったものの、後半になって伸び悩んだ。 
 業種別では、「金属製品工業」をはじめ全体的において特に後半にかけ低調に推移した。「電気機械工業」、「精密機械工業」、「輸送機械工業」、「化学工業」は年間を通して比較的堅調に推移したものの、「繊維工業」はここ数年間では顕著な右下がり傾向を示しており生産の低迷振りが窺える。

2.建設動向
 保証実績からみた島根県の平成14年公共工事請負件数は5,712件(対前年比▲7.8%)、請負金額は301,285百万円(対前年比▲7.5%)で、昨年に引き続き共に減少となった。
 発注者別にみると、「国」は請負件数488件(対前年比+0.2%)、金額51,856百万円(対前年比+7.7%)と共に増加している一方で、「島根県」では請負件数2,781件(対前年比▲10.7%)、金額125,725百万円(対前年比▲15.2%)と共に減少している。また、「公団・事業団等」は請負件数121件(対前年比+5.2%)、金額11,740百万円(対前年比▲29.3%)で、「市町村」においても請負件数2,127件(対前年比▲5.6%)、金額96,393百万円(対前年比+5.7%)と、件数及び金額が増加減少(減少増加)と対照的になっている。
 本県の平成14年新設住宅着工件数については、4,182戸(対前年比▲21.2%)で、昨年に比べ1,128戸の大幅減となった。(全国約115万戸/対前年比▲2%)

3.個人消費
 個人消費をみると、百貨店及びスーパーの売り上げ動向は落ち込みが目立つ。
 平成14年消費者物価指数(平成12年=100)について松江市をみると、年平均で対前年比1.3ポイントの減(全国は対前年比▲0.9ポイント)となっている。下落幅大きかったのは、「家具・家事用品」(対前年比▲3.9ポイント)、「被服・履物」(対前年比▲3.6ポイント)で、以下「教養娯楽」、「保険医療」と続いている。
 また、同様に松江市の平成14年勤労者世帯家計消費支出(前年同月比)では、年間を通して右下がり模様になっており、デフレ傾向を反映した動きとなった。

4.雇  用
 本県の雇用動向について平成14年常用労働者雇用指数(平成12年=100)(常雇規模30人以上の事業所対象)をみると、94.0(対前年比▲3.6ポイント)と微減で、産業別では製造業が85.6(対前年比▲10.7ポイント)と大きく落ち込んでいる。
 また、労働力の量的な需給関係を示す月間有効求人倍率では、平成14年平均0.61倍(全国0.54倍)と、昨年平均0.72倍に比べ更に悪化した。

5.企業倒産
 平成14年島根県倒産件数(負債1,000万円以上、内整理を含む)は60件(対前年比+7.1%)と微増しているが、負債総額は116.7億円(対前年比▲53.4%)と激減している。
 規模別にみると、資本金1,000万円未満の企業が36件(60.0%)と、全体の半数以上を占めた。
 業種別では、建設業22件(36.7%)及び小売業13件(21.7%)で半数を占めており、以下製造業・卸売業、サービス業、不動産業と続いている。



U 業種別平成14年の状況
1.食料品製造業
(1)  豆富業界は、納入先である大型店の倒産、小売店の廃業により、売上高(対前年比▲8%)は減少となった。(約20年前の売上に匹敵)
 価格面では、デフレの影響を受け価格を下げても販売につながらず、更なる値下げ競争に陥っており、特に県外中スーパーは安売り店が多く対応が出来ていない。
 収益面はここ数年間減益傾向であり、今後人件費などコストの見直しと共に企業の再構築が迫られている。
 雇用面では、従業員退職後の補充について新規採用はせず、パート雇用で補っている。
 このような現状下、業界では、地産地消を推進するため原材料の大豆生産者と協議を重ね、県内産大豆(サチユタカ)を使用した豆富を今年度から学校給食に納入予定としている。また、しまねブランドとして試食、販売などのテストマーケティングを行った。
(2)  醤油業界は、全般的に売上高減となった。平成14年の年間醤油出荷量をみると、全国では対前年比3.9%減(見込み)、島根県は対前年比2%減見当であった。県内出荷量の内訳では、淡口醤油が対前年比15%増で、濃口・再仕込(かけ醤油の高級品)醤油とも対前年比10%見当減となった。消費傾向として家庭での煮物などが今までより更に減り、醤油全体の消費量が下がったと推察される。併せて、従来から比較的伸びていた再仕込醤油出荷が、前年を下回ったこともその要因である。
 価格面をみると、県内一般家庭向け醤油小売価格は、宅配方式販売により従来の価格が維持されている。しかし、量販店向け醤油価格は、大手メーカーの安売り攻勢を受けており、前年より更にダウンを強いられた。
 収益面では、売上及び価格低迷の二重苦により、打撃を受けている。
 操業度は、生産量の減少と設備の老朽化、従業員の高齢化で、製麹からの一貫生産を生揚からの生造りに変えたりと、全体的に下がった。
 雇用面では、売上減少、価格低迷、収益減少で、家族労働で済ませる工場が更に増え、業界全体の従業員数は減少している。
 このような動向の中、業界では、消費拡大を目的に造り手と消費者のコミュニケーションを図るため、県内醤油工場見学制度の整備を推進した。また、前年の食品安全性や表示違反の問題を教訓に、工場調査、製品買上調査を実施した。
(3)  水産練製品業界は、全般的に製品単価安、需要の減、ヒット商品の不在で、非常に厳しい状況であった。業界としては、早急の新しい売り場を確保する必要がある。各企業によってバラツキはあるが、売上高は対前年比5〜10%減で推移した。
 価格面は、価格に対する締め付けは厳しく、売価は前年並み若しくはダウンとなった。
 収益面では、原料価格が前年より10〜15%アップしているが、製品価格に反映させることができないため、経営状況は厳しい。
 操業度は対前年比5〜10%減程度で移行しており、雇用面においても現状維持をどうにか保っている。
 この厳しい現況下、業界では夏の不需要期に大手スーパーと協力して島根県蒲鉾フェアを開催した。また、Eマーク商品(しまねふるさと認証食品)の販促活動を行った。

2.繊維・同製品製造業
 売上高は、受注量の減少、単価の切り下げにより減少している。特に急激なデザインの変化、高付加価値の製品加工などに対して、技術力が即応できないことがあげられる。
 価格(製造工賃)面については、デフレ経済にあっても、より安くすることが売上につながることからメーカーからの切り下げ要求が強く、加えて各事業者が受注を得たいことから応ずる気配もあり、引き続き少しではあるが低下している。また、新商品ごとに若干低下気味である。
 収益面では、仕事をすればするほど人件費などコストがかさみ、減少傾向にある。
 操業度は、最近の消費者ニーズにおいて春、夏、秋、冬といった季節物の認識が希薄になり、年間を通して着用できるTシャツなどのカジュアルウェアの加工が多く、全般的に11〜2月の冬季は低下基調にある。
 雇用面では、少なくとも雇用が増加する要因はなく、高齢者が退職すれば補充をしない可能性が強い。若年の技術者については、雇用機会が多いものと推し量られる。
 このような現状の中、業界では多品種、小ロット、短納期に即応するため、広範な地域において営業能力の高い企業を核として数社(小グループ)を単位とする垂直連携を強化し、受注量増加対応策を講じた。また、資材などの預り管理業務、生産管理業務代行にも取り組んだ。

3.木材・木製品製造業
(1)  合板業界は、針葉樹構造合板が順調に推移し、出荷量、売上高共に前年より増加した。(対前年比+7%程度)
 価格面では低位安定傾向で移行し、収益面は広葉樹合板工場は減益であったものの、針葉樹合板工場は増益となった模様である。
 操業度は、年初に針葉樹工場の増設もあり、各工場共に対前年比0〜10%減程度で推移した。
 雇用面では、人材も含めた企業の再構築も一段落し、従業員数は年間を通して550人規模で変移した。
 また、大型倒産(整理・更正)が多発し、信用不安も大きな問題となった。
 このような動きの中、業界では木材産業高度化事業を継続し、また、アジア合板会議、日韓台合板業者懇談会を開催して需給のあり方について協議した。併せて、JAS法順守の徹底、ノンフォルマリン合板及び構造用合板の利用促進を図るための展示会参加など、広告宣伝活動に取り組んだ。
(2)  木材業界は、売上高の面で前年同月比を割り込んで推移しており、秋口から増加がみられたが大きな改善には至っていない。また、売掛金の回収不能が懸念される取引先が増え、それが妨げとなり抜本的対策が打てない状況にある。
 価格面では全般的に低下しており、収益面では減益で苦しむ企業が増加している。また、厳しい単価を提示されると同時に、多品種小ロットの注文が多くなっており、価格は平方メートル当たりの計算で据え置かれ、実質的に引き下げられている。
 操業度は、多品種小ロットに対応するため忙しさは変わらない。
 雇用面では、現状の事業を行う上で、最低限の人員配置となっている。
 このような情勢の中、業界では木材の需要拡大を図るため、関連業界と連携しイベントを開催した。また、県の助成事業に積極的に取り組むと共に、関係機関に対して要望、陳情を行った。
(3)  家具業界は、耐久消費財の依然とした低迷のため、売上は落ち込んでいる。
 価格面では単価の下落が顕著であり、収益面では経費削減により辛うじて前年並みの利益率を確保をしている。
 操業度は受注減少で低下しており、雇用も減少している。

4.出版・印刷業
 売上高について全国をみると、平成9年をピークに下降基調が続いており、平成12年以降、減少幅は大きくなっている。(平成9年=100/平成14年82.3)県内においても同様の傾向で、今後企業間格差が拡大するものと推察される。
 価格面では、価格競争が激化しており、健全な企業存立を根底から危うくする状況になっている。
 収益面は、売上減少、単価引き下げ、印刷用紙の値上げなどに加え、電子入札といった受発注の形態変化への対応も重なり、厳しい経営が続いている。
 操業度は印刷機械を含め稼働率が低下しており、雇用面では経営合理化の跡がみられる。
 このような経営環境下、業界では従業員教育に重点をおき、「DTPエキスパート実力養成講座」などのセミナーを開催した。

5.窯業・土石製品製造業
(1)  瓦業界は、住宅建設及び葺替需要の減少により、売上高(対前年比▲13〜15%)が落ち込み大変厳しい状況であった。
 価格面では、競争激化により下落傾向、若しくは前年並みとなっている。
 収益面では、売上減少、価格の下落、材料費の値上げ、高付加価値商品の売上不振により、状況は悪化している。
 操業度は、需要減から年末、年始、連休など長期的生産調整がなされ、対前年比8〜12%減であった。(バブル時に比べ▲約30%)
 雇用面では、若年者の雇用がスムーズになった一方で、生産調整・規模縮小などで前年末より人員は減少した。
 また、これまで減産という場当たり的な対応でしのいできたが、今後は抜本的に大幅な改善をしなければ企業の存続が難しい状況になっている。
 このような動向の中、業界では原料確保対策、産業廃棄物問題、PR事業、また国・県の集積活性化事業に取り組んだ。
(2)  生コンクリート業界は、財政悪化に伴う公共事業の削減と景気低迷により官公需・民需とも全般に減少し、売上高が前年と比べ15%程度下回った。このような中、わずかに三刀屋道路、益田道路の建設特需に支えられた雲南、益田地区だけは、辛うじて前年並みを維持できた。
 価格面では、全般的にほぼ横ばいで推移したが、浜田地区だけはやや弱含みとなった。
 収益面は、売上高の減少により悪化した。販売先の建設業者の倒産、民事再生法適用など、回収困難な不良債権が多発しつつある。
 操業度は需要の減少に伴いここ数年低下し続けており、雇用面では合理化による余剰人員の対応などが図られている。
 このような状況の中、業界では操業率を高め効率的な生産体制に移行するため、工場の集約化計画を推進した。また、手形サイトの短縮、現金取引化など取引条件の改善に取り組んだ。
(3)  コンクリート二次製品業界は、売上高が前年を割り込み、厳しい経営環境であった。価格面は受注が減少し下落傾向で推移、収益面では今後の見通しが立たないことから益々悪化の一途をたどっている。
 操業度は対前年比10〜20%減で、雇用面では過剰気味である。
 このような現状の中、業界では県外企業及び製品の進出による競争激化に対応するため、具体策の協議を行った。

6.鉄鋼・機械製造業
(1)  鉄鋼業界は、年間を通じて需要低迷など受注量の落ち込みにより、売上高も前年と比べ減少した。特に工作機械、農業機械分野における機械加工業種が不振である。
 価格面では、先行き不透明な景気とデフレの進行、海外製品との競合による競争激化、コストダウン要請などにより取引条件が悪化し、低下を余儀なくさせられた。
 収益面では、メーカー主導による一部材料の値上げ、価格下落などにより、全般的に減収減益傾向となった。また、鉄屑、銑鉄は、外国需要(中国、東南アジア)が活発で、値が大幅に上昇している。高い原材料により加工を営む中小鉄工所は、得意先単価の上昇難が収益を圧迫している。
 操業度は、一時の最悪状態を脱し業況好転の兆しがみられた。しかし、依然として月によってムラがあり、短期的な受注、単価の切り下げに加え小ロット受注のため現在の設備では人件費がかさみ、現場レイアウト改善などの取り組みにより対応している。設備が老朽化しても、更新は難しい状況にある。
 雇用面では、厳しい経営環境から現状維持で推移している。併せて、若年者の定着率が悪く、一部において若手技術者の不足から人材派遣、アウトソーシング、パート増で対応するところがある。
 また、受注先の開拓や受注量拡大に向け、地域企業が連携した共同受注組織設立の動きがみられた。
 このような動向の中、業界では、公共事業関連の発注において地元企業へ優先発注の陳情を行うと共に、企業の受注量確保に努め連帯意識の昂揚を図った。また、人材育成に重点をおき、各種セミナーを開催した。
(2)  鋳物関連業界は、売上高をみると、約1年続いた前年6月以降の大幅な減少が本年6月より回復基調となり、9月以降は対前年比5〜15%増で推移している。しかし、前半の落ち込みが大きく、トータルでは生産量、売上高共に7%ダウンとなった。
 価格の面では、コスト切り下げ要求は依然強いが、前年と比べほぼ横ばいとなっている。
 収益面は、売上高の減少が悪化の一途で、ほとんどの企業が減収減益となっている。
 操業度は、企業間に差はあるが、前半は大幅に低下し、後半になりやや持ち直した。
 雇用面では、下方傾向が続いていたが、今後生産量の増加に伴い持ち直すものと推測できる。しかし、短期的な回復に留まるのではないかと懸念される。
 また、倒産・廃業が2社あり、その原因は売上高の減少によるものである。
 このような環境の中で、業界では構造改善事業を実施すると共に、鋳物用銑鉄の値上げに伴う対応策として陳情、全国紙への記事掲載、ユーザーに対する価格折衝を行った。

7.電気機械器具製造業
 売上高は、不況が一段と深刻化した一年であり、設備投資の落ち込みの影響を受ける製品がある一方で(対前年比▲25%)、順調に推移する製品もあり(対前年比+10.0%)、明暗を分ける格好になった。しかし、後者においても15年度以降の公共工事削減の影響が懸念される。
 価格面では、全体的に大きな変化はなかったが、価格競争による値下げ要請があった。
 収益面では、過去10数年来の堅調な収益率が、売上減少によりダウンとなった。
 操業度は、売上減による影響は少なかった。
 雇用面では、人員削減などの経営の合理化は行われていない。新しいビジネスチャンスを如何に創造するかが課題である。
 このような状況の中で、業界では研究開発の促進、人材教育研修の充実などに取り組んだ。

8.卸売業
 売上高については、業種(取扱商品)によりバラツキはあるものの、対前年比でマイナスを余儀なくされた企業が半数を超した。消費者の平均購入額の低下もその要因である。
 価格及び収益面では、前年以上に低位、底這いが続き、月を追って深刻の度合いを増した。価格ダウンは限界で、流通量は同じでも収益を圧迫している。また、共同配送によるコスト削減も、結果が出るまでには時間が必要である。
 雇用面では、人員削減の動きはないが、定年後の再雇用、退職者の補充を見合わせることなどにより、実質的な人員減となっている企業が半数程度ある。企業間では、特に質的な人材不足感が強く、中でも「営業職」、「技術・研究職」で適正な人材を求めている。併せて、新規採用者を育成する時間的な余裕がないことから、即戦力としての中途採用が増えつつある。最近の傾向としては、人材のアウトソーシング化での対応が顕著に現れている。
 このような現状下、業界では、中高年従業員を対象としたIT講習会、中山間地への共同配送、盆・年末の資金対応などを行った。また、流通団地では、企業PRと従業員の志気の昂揚を目的にイベントを開催し好評を得た。

9.小売業
(1)  専門店は、厳しい経営状況は変わりなく、前年を更に下回る売上高となった。
 価格面は低下傾向で、収益面では消費者の買い控えにより不振を極め、特に零細小企業の経営難は深刻である。
 雇用面では、人員削減による経営の合理化は出尽くした感がある。
 コストダウンによる経営の効率化は限界で、経営者・役員の報酬カットで収支をカバーしている。
(2)  共同店舗は、長引く消費低迷を背景に、昨年に引き続き売上高減となった。しかし、チラシ・イベントなどを打てば来店客数は従来に引けをとらないものがあり、経費削減が妨げになって十分な販促が行えない悪循環に陥っている。
 価格面では、大型量販店並みの価格訴求は不可能であり、限界に達している。専門店は、価格競争に巻き込まれないような販売展開を模索したが、万策尽きた状況である。
 収益面でも、売上減少を経費削減で補う経営体制は限度を超えている。
 雇用面では、正規従業員のパート・アルバイト化が更に進んでおり、接客力の低下が危惧される。
(3)  市街地の商店街は、消費者の購買意欲の低迷も影響して、前年を大幅ダウンする売上結果となった。価格面では価格競争から値崩れが生じており、収益面でも悪化している。雇用面では、パート・アルバイトへのシフト、賃金カットがみられた。また、空き店舗の増加と共にその対応に苦慮している。
 郊外のロードサイド型商店街では、前年と比べ減少若しくは横ばいの売上となった。価格面は、同業者間の競争激化により低下しつつあり、収益面でも悪化している。雇用面では、パート・アルバイトの確保に問題がないため、雇用者数は増えている。また、営業時間が長くなる傾向がみられる。
 このような厳しい状況の中、消費拡大のためのプレミアム商品券を販売(完売)したり、販促イベントを積極的に開催した。

10.サービス業
(1)  旅館業界では、前年9月の米国多発テロ事件の反動により国内旅行が回復するものと期待されたが、それも瞬時で、海外旅行の急回復、景気停滞などによる温泉観光地の県外観光客の大幅減少、建設工事関係者などの長期滞在宿泊者減に加えて、忘年会の中止・日帰り傾向などにより、売上状況は悪化している。しかし、販促など工夫を凝らした旅館については微増となった。
 価格面は、前年に引き続き利用客の低価格志向が依然として根強い上に、旅行代理店間での価格競争の激化により、宿泊単価は低下している。
 収益面では、宿泊料金の下落、酒飲料の飲み放題企画・土産品など付帯商品の買い控えと共に、従来と変わらない施設管理費の支出により、悪化基調にある。一部施設の閉鎖、休業が出た。
 雇用面では、パート採用で充当している。
 また、宿泊定員規模別からみると、中規模旅館の稼働率が最も良く、以下大規模旅館、小規模旅館の順で、小規模に至っては経営の困窮が際立っている。
 このような現状の中で、観光客誘致促進策として、山陰路キャンペーンの実施、九州地区の旅行代理店招致などを行った。
(2)  自動車整備業界は、一昨年の法改正以降、点検項目の削減などにより、売上減少と共に経営環境は悪化した。不況感が強いため、必要以外の費用は極力抑えたいとするユーザーが増えている。
 価格面では、一台当たりの整備単価が下がったことに加えて、短時間車検の登場によりユーザーの意識が変化した結果、業者間競争が激しくなり低下傾向で推移した。
 収益面では、売上高減少、低価格志向により減益となっている。
 雇用面では、売上不振による廃業又は企業合併などによる人員整理、従業員の高齢化といった問題が露呈している。
 このような現況下、自動車使用者対策としてマイカー点検教室の開催、各種調査による業界動向の把握などを行った。
(3)  情報機器ソフトウェア業界は、IT不況の影響もあり、一般的には売上を落としている。但し、内容の悪い企業や収益の見込めない官公庁からの受注については、各企業が手控えている面もある。
 価格面では、ハード、ソフト共に下落しており、技術革新による価格低下というよりも不況デフレ要因が強くなっている。
 収益面では、主に従来からのハード販売、ソフトウェア開発などは低下しているが、一方で保守サービスや運用支援サービスなどは伸びた。従来型事業の企業は業績を落としている。

11.建設業
(1)  公共工事については、年明けの低調(対前年比▲34%)な滑り出しを経て、中半期(対前年比▲13〜22%)の大規模工事発注によりやや上向いた状態が続き、年末に病院建設工事の発注が好材料となったが、総括的には前年と比べ、件数(対前年比▲7.8%)、契約高(対前年比▲7.5%)共に減少しており、地元企業の観点からみても公共投資削減の影響で受注が落ち込み厳しい状況であった。
 価格面では、労務費について4月に50職種平均で約2.6%の切り下げとなったが、建設資材は鉄筋単価が8月にアップした以外は横ばい状態であった。
 収益面では、建設工事量が減少した中で、労務単価の切り下げに加え、競争激化により、収益性は大きく落ち込んだ。
 雇用面では、景気の先行き不透明感及び公共事業予算の削減により、多くの企業は雇用の手控えに併せ、希望退職者を募るなど、生き残りをかけた対応に迫られた。倒産、廃業も前年に比べ多くなっている。
 このような情勢の中で、業界では公共事業予算確保など関係機関への要望及び意見交換会を行った。また、下請セーフティネット債務保証事業を一部で実施し、事業推進のための研修会も開催した。更には、PFI事業やISO及び県内高校生を対象としたセミナー、人材育成、ボランティア活動などにも取り組んだ。  
(2)  舗装業界は、売上高(対前年比▲5%)、価格(対前年比▲3%)共に減少・低下しており、収益面では減益となっている。操業度、雇用面は前年並みとなった。
 このような状況下、業界では舗装技術向上のための研鑚に努めた。

12.運輸業
 売上高は、製造業の低迷、消費関連の手控え及び公共投資の抑制などマイナス要因が重なり、物流需要が低迷し減少となった。
 価格面では、値引き要請、競争激化により、低下傾向で推移した。前年までは比較的安定していた公共工事関連についても、工事単価の見直しなどの影響から同様の傾向をたどっている。
 収益面では、収受料金の低迷と需要の減少で悪化した。企業のコスト削減(主に人件費)による対応は限界で、経営は困難を増している。
 雇用面では、公共工事関連での車輌の減車により、雇用調整も見受けられた。
 また、稼働率は極端に低下していないものの、業態によっては内容が悪くなってきている。
 このような中、業界では、厳しい経営環境に対応するため組織の再編を含めた改革を行った。



V 業種別平成15年の景況予測
 2003年の日本経済は、景気判断を弱含みとした3ヶ月連続の下方修正となる1月の政府の「月例経済報告」や、2ヶ月連続で判断を据え置いた日銀の1月の「金融経済月報」などから、景気の停滞により先行き不透明感が一段と強まる感が窺える。更には、国際政治情勢問題、国内株価動向、不良債権処理問題などの懸念材料もあり、経済への影響度合いも留意される状況にある。
 一方、県内の経済環境は、景況に与える好材料は乏しく、民間及び公共事業需要の減少が予想されるなど、厳しさは未だ脱していない。その中でも、1月の有効求人倍率みると、コールセンターの大量求人という側面から一時的な上昇を示したものの、他業種は伸びておらず、これからの展開は極めて憂慮される。また、3月から供用開始となる宍道−三刀屋・木次間に始まる高速道路整備においても、荒波にさらされおり、インフラ整備が早急に求められる当県に与える影響は大きい。
 今後、この非常時を乗り切るためにはどうすればよいのか、大いに知恵を出し合い考え抜いて模索する区切りの一年と予測される。

1.食料品製造業
(1)  豆富業界は、納入先である小売店の廃業が年度の前半進むと推測され、売上高は30%程度減になる可能性が強い。
(2)  醤油業界は、長引く景気低迷から、廃業に踏み切らざるを得ない工場も出てくると予想される。
(3)  水産練製品業界は、需要、原料価格及び売上について前年並みと予測している。

2.繊維・同製品製造業
 最近におけるアパレル業界(メーカー、商社)の視点は、専ら中国に向いており、結果として人件費の安い中国に発注したいが相手が受けてくれないため、国内業者に発注している傾向も認められる。今後早ければ本年4月以降には、2001年秋に中国がWTOに加盟した成果として、アメリカ、ヨーロッパから中国に縫製品の発注が予想されるため、従来中国に出していた日本製品の縫製作業が再び日本国内に回る可能性もある。

3.木材・木製品製造業
(1)  合板業界は、住宅建築着工数の伸び悩みから、厳しい経営環境になるものと推察される。
(2)  木材業界は、住宅建築着工数の伸びが期待できないため、見通しは厳しい。梱包材製材は、鉄鋼、自動車などの輸出産業に依るところが大きいが、これらの今後の展開が読めないため先行き不透明である。
(3)  家具業界は、前年並み若しくは悪化すると予想される。

4.出版・印刷業
 産業界における総需要の減退と価格破壊の進行、過剰な供給力とコスト削減が迫られる中、業界においても一層厳しい経営環境が続くものと推測される。

5.窯業・土石製品製造業
(1)  瓦業界は、前年に引き続き冷え込むことが予想される。一方で、住宅取得目的のための生前贈与の非課税枠に関する税制改革及び、既存住宅の性能表示制度の導入によるリフォーム市場の一層の活性化に期待している。
(2)  生コンクリート業界は、需要は引き続き減少の一途をたどり、対前年比5%以上の低下を予測している。
(3)  コンクリート二次製品業界は、好転の兆しはなく、益々落ち込むものと予想している。

6.鉄鋼・機械製造業
(1)  鉄鋼業界は、大手メーカーの調達先の絞り込みやコストダウン要請と共に、業種規模を問わず二極化が進み、経営環境は更に厳しいものになると推測される。
(2)  鋳物関連業界は、中国からの海外調達や生産拠点シフトの動きが更に強まり、景況は悪化するものと予測される。

7.電気機械器具製造業
 経営環境は悪化の一途をたどり、企業としての生き残りが難しい状況になることが予想される。ピンチをチャンスに変えるためのあらゆる手を打つことが必要である。

8.卸売業
 経営において深刻な状況を予測する企業が、大半を占めている。建設関連資材を取り扱う業種は、公共事業削減と相まって予断を許さない。また、企業間格差は益々拡大すると思われる。

9.小売業
(1)  専門店は、前年と比較し更なる景況の低迷、悪化が予想される。
(2)  共同店舗は、デフレ不況に伴う深刻な消費低迷や空き店舗問題など、依然厳しい景況になると予測される。
(3)  商店街は、価格面において同業種間の競争が一層激化し、前年に増して経営環境は悪化すると推測している。

10.サービス業
(1)  旅館業界は、国内の景気について前年同様厳しいものと予想している。
(2)  自動車整備業界は、自動車販売の伸び悩みから整備業に対する依存度は高いと思われるが、売上面では減少若しくは横ばい程度であると推測される。

11.建設業
(1)  建設業界は、昨年度からの公共事業の大幅削減が、経営環境に一段と大きな影響を及ぼすものと予測される。
(2)  舗装業界では、対前年比10%程度の売上減と予想している。

 
12.運輸業
 一般の物流需要の下落は底に達しており、今後の上昇が期待される。一方、公共事業関連需要は更に落ち込むと推測される。価格面(収受料金)においては、物流企業の存続性から限界を超えており、大きな変動は無いとみている。


W 中央会、行政庁への要望事項
1.金融・税制関係・支援関係
(1) 既存借入金の返済を長期にシフトする方策支援を期待する。
【食料品製造業】
(2) 保健所の調査による設備の改善指導に対して、低利な融資制度を要望する。
【食料品製造業】
(3) 行政官庁において電子政府の実現、電子自治体の構築が進む中で、情報化に取り組む中小企業に支援、助成などの実現を望む。
【出版・印刷業界】
(4) 金融面において、制度資金及び保証協会の更なる拡充を要望する。
【鉄鋼・機械製造業界】
(5) 中小企業の育成、情報提供、助成事業など中小企業の強化施策を望む。
【鉄鋼・機械製造業界】
(6) 高度化事業制度既往借入金の金利引き下げ(借入年度によって生じる金利格差の是正)を望む。
【卸売業界】
(7) 貸し渋り、貸し剥ぎなど中小企業への選別融資に対して、強く改善を求める。
【卸売業界】
(8) 高度化事業制度借入金の返済支援措置を要望する。
【共同店舗業界】
(9) 小売業に特に対応した金融支援を望む。
【小売業界】
(10) 所得減税を含めた長期の減税施策実施を望む。
【小売業界】
(11) 環境規制の施行に伴い事業者が負担するコストについての助成を望む。(速度制御装置、ディーゼル車の排出ガス規制)
【運輸業界】

2.公共事業関係、その他
(1) 抜本的な構造改革を行い将来への堅実な展望の下、景気回復を望む。規制緩和と同時に規制のあるものについてはその遵守の徹底を望む。
【木材・木製品製造業界】
(2) 公共事業について、資材業者に対する代金支払いの適正化指導を求める。
【窯業・土石製品製造業界】
(3) 県内産資材及び製品の優先使用の指導を求める。
【窯業・土石製品製造業界】
【木材・木製品製造業】
(4) 公共事業において、県内事業者への優先的発注を望む。
【鉄鋼・機械製造業界】
【建設業界】
(5) 内需拡大を図る経済対策の実施を求める。
【鉄鋼・機械製造業界】
(6) 行政機構の改革を断行して、経費削減と歳出の削減を進めることを望む。
【鉄鋼・機械製造業界】
(7) 早期のデフレ対策を望む。
【小売業界】
(8) 公営宿泊施設の早期廃止、入湯税の廃止を求める。
【旅館業界】
(9) 道路特定財源の投入による高速道路通行料金の引き下げを要望する。
【運輸業界】