平成21年県内企業の景況を振り返って

-情報連絡員年間報告-
平成21年1月~平成21年12月

まえがき

 当会では、県内中小企業の動向、問題点、要望を迅速かつ的確に把握すべく、中小企業団体情報連絡員制度を昭和49年に発足させ、地域別、業種別に勘案して30名の委員を委嘱し、毎月、情報の提供をお願いいたしているところです。
 ここで集められた業界の動向、要望などについては、適宜関係機関に報告し、また当会としてもそれらを基に組織化支援をはじめとする関連事業に活用させていただいています。
 情報連絡員制度は、当会が中小企業及び業界との接点になり、多方面との円滑な交流を図る役割を担っており、今後益々その必要性が高くなっていくものと存じます。
 皆様方におかれましても、この趣旨について十分にご理解を賜り、一層のご協力をお願い申し上げる次第です。

 平成22年3月

島根県中小企業団体中央会 
 会長 杉 谷 雅 祥 

目次

平成21年情報連絡員報告総括

1 業種別平成21年の状況

2 業種別平成22年の景況予測

3 中央会行政庁への要望事項

4 その他資料

平成21年情報連絡員報告総括

 国内経済をみると、大手シンクタンクによれば、実質GDP成長率は3四半期連続でプラス成長を記録しており、外需寄与度は輸出が中国をはじめとするアジア向け、IT関連材や建設機械が牽引する形で高い伸びを維持する一方、内需は民需・公需共に堅調であった。個人消費は、家計最終消費支出の内訳で半耐久財、非耐久財、サービスが冴えない動きを続ける中、耐久財は高い伸びを維持した。エコポイントなどの支援策が消費者の耐久財購入マインドを引き続き刺激している模様である。民間の投資活動では、住宅投資が減少し、設備投資、在庫投資は増加した。公需は、医療費など社会保障関連の支出が着実に増加する中で政府消費は増加したが、公共投資は2四半期連続で減少した。また、デフレ色が一段と強まっている。総じて、平成21年春以降、日本経済は再びプラス成長に戻ってはいるが、それは輸出と景気対策に支えられたものであり、海外景気の減速や対策効果の息切れ、内需の低迷などから、景気が息切れの懸念も燻っている。
 島根県の経済をみると、「過去5年間の倒産件数・負債総額」は、平成21年負債総額153億円・倒産件数54件となっており、平成19・20年(平成19年:負債総額247億円・倒産件数59件、平成20年:負債総額217億円・倒産件数70件)から減少となった。また、「平成21年業種別倒産件数」では、建設業が全体の30%余りを占め、次いで製造業、小売業、サービス業の順となっている。「勤労者世帯家計消費支出」は、平成17年から減る傾向にある。(平成17年:松江352,862円、平成21年:松江303,894円)「発注者別公共工事請負金額推移」では、平成20年(請負金額:171,567百万円)は平成16年(請負金額:202,253百万円)に比べ15%ダウンとなったものの、平成21年(請負金額:201,701百万円)は平成16年水準に戻しており、その発注者の平成20年請負金額対比内訳割合をみると島根県(約29%増)、国(約19%増)、市町村(約12%増)の順となっている。「新設住宅着工数」は、平成17年(島根県:4,257戸、全国:1,236,175戸)に比べ、平成21年は島根県及び全国共に約40%近くの落ち込みとなっている。(島根県:2,631戸、全国:788,410戸)「労働需給状況(求人倍率)」では、平成21年島根県新規1.10、有効0.61(全国新規:0.82・有効:0.50)で、平成19年(島根県新規:1.40・有効:0.92、全国新規:1.52・有効1.04)と比べ厳しい結果となった。また、「島根県常用労働者雇用指数」では、平成17年を100とした場合、平成21年においては建設業が大幅減となっている。(5人以上:89.7、30人以上:75.7)「大型小売店販売額(百貨店+スーパー)」は、平成16年島根県731億円に対し平成21年は島根県598億円と約28%減となっている。(全国:平成16年214,672億円・平成21年197,779億円・約18%減)
 情報連絡員報告の年間関係業界全体の売上高・収益状況・景況の推移をみると、製造業は、毎月の僅かな上げ下げを繰り返し秋頃に大きく下げたが、年初に比べやや持ち直し基調にある。非製造業では、毎月の上げ下げのブレが大きく、年間を通じると年初なみとなった。
 情報連絡員の年間業種別報告をみると、食料品製造業において、菓子業界は売上高が減少傾向で観光客減少が起因すると推測しており、原料高の価格転嫁が難しい状況にある。雇用の明るい材料として、女性の求職希望者が増えている。醤油業界では、一昨年に18年ぶりの価格改定を行ったが、買い控えと低価格化が進み、ナショナルチェーンのPB商品の台頭と相まって売上高減となった。また、大豆等の原材料費は高止まりであると共に、食品表示改正の費用負担が重なり厳しい経営状況にある。水産練製品業界は、主原料価格の低下による練り製品特売の増加と需要不振により激しい販売競争となった。
 繊維・同製品製造業は、加工賃の切り下げに伴い売上高・収益面共に悪化状況が数年続いている。雇用面では、慢性的な労働者不足である。
 木材・木製品製造業において、合板業界は住宅着工数の落ち込みに連動して売上高が大きく落ち込むと共に、引き続き生産調整を行った。木材業界では、年間を通じて売上高・価格・収益面が減少・悪化したとする事業者が増となった。また、県の県産材住宅補助金の申込は順調に推移している。家具製造業は、大手販社が大幅黒字を計上する中、価格帯がワンマーク下がるなどの影響で、売上高・収益面共に減少した。
 出版・印刷業では、需要の停滞、製品(加工)単価の低下・上昇難、製品ニーズへの変化への対応から売上高減となっており、収益状況についても極めて悪化傾向にある。
 窯業・土石製品製造業において、瓦業界は、平成21年の出荷枚数が前年対比18.1%減の6,529万枚で、前年実績割れが5年連続となった。(平成6年のピーク時は2億2,809万枚)生コンクリート業界では、地域別の出荷量に温度差があり、結果、出荷実績が前年比92%と割り込んだ。生産規模の適正化、集約化を引き続き押し進めている。コンクリート二次製品業界は、売上の上昇要因が皆無であり厳しい経営を余儀なくさせられている。現在の組合員事業者数は12社となっており、10年前と比べ半減している。
 鉄鋼・金属製造業において、鉄鋼業界では、受注環境が極めて厳しく、売上高が大幅に減少しているものと忖度される。特に、機会加工関連業種は、対前年40%~50%程度落ち込んでいるものと推察される。また、雇用安定助成金の受給を多くの事業者が受けており、現在も継続中である。大手金属メーカーの中小企業の協力工場が集積する安来地区においても、年初から秋口まで未曾有の危機的状況であり、一時帰休、雇用安定助成金の活用などの対応に迫られた。10月以降、受注状況は7~8割まで回復している。鋳物業界は、生産量、売上高共に前年比40%ダウンとなり、収益面では、全ての企業で減収・減益となった。
 一般機器において、金属加工機械製造業は、売上高が前年比47%減となり、価格面では円高の影響を受け結果的に値下げになった。役員報酬カット、雇用安定助成金利用などの取り組みを行ったが、収益面はマイナスとなった。
 自動車部品・付属品製造業は、売上高が対前年比23%減となった。平成20年初冬が底で徐々に回復し、平成21年12月には対前年度1割減程度まで回復している。
 畳製造業では、売上高が前年対比約15%減となっており、受注・販売共に減少傾向にある。また、死亡・廃業等により、業界組織の維持が懸念される。
 卸売業において、県東部は、販売額が対前年比減少としている企業が増加すると共に、収益面においても「不変」から「悪化」に転じた企業数が増となった。雇用面では増員するまで至っていない。県西部は、売上が冷夏等の影響で大幅にダウンした。取引メーカーからのリベート等の提示条件が著しく悪くなっている。新規雇用は、パート採用が多くなっている。
 小売業において、共同店舗では、大半の店舗が売上の伸び悩みに苦心する一方で、年間で前年対比100.5%で推移する店舗あり、二極分化の構造となっている。また、地産地消推進フェアを秋口から開催し、新たな魅力度アップに努めた。石油製品販売は、売上高が販売数量減に伴い減少した。価格面は、年後半に仕入価格が値上がりしたにも関わらず、小売価格は横ばい状況であった。過当競争による価格競争は依然厳しい。市街地の商店街では、本当に必要なものしか売れず、売上確保が厳しい状況にある。特に高額品の動きが悪い。郊外のロードサイド型商店街は、インフルエンザの影響で飲食店等の予約キャンセルもあり、売上高ダウンとなった。低価格傾向にあり、収益面は悪化している。
 サービス業において、旅館業界は、日本三大神事の一つ「ホーランエンヤ」の集客効果が奏功し平成21年の松江市の観光入り込み客数が前年比0.17%増(約887万4千人)と健闘する中、各温泉地は景気後退の打撃を受け、宿泊客数の減少などで苦戦する状況となった。(玉造温泉:前年比11.8%減の約60万人、松江しんじ湖温泉:約10.9%減の約16万人)価格面では宿泊客の低価格傾向が根強く、収益面は大変厳しい状況がある。自動車整備業界は、受注減・低価格競争の影響から売上が減少傾向にある。新車販売は、エコカー補助金効果から9月より4ヶ月間前年を上回った。情報サービス業界は、年前半は順調に推移していたが、後半からIT投資が冷え込み前年比で5%ダウンとなっている。価格面では、ハードの低価格傾向と合わせ、システム開発費もオープンソース普及と共に下落している。雇用面では、特に雇用調整を必要としないが、余剰感が漂う。ビルメンテナンス業界は、低価格競争のあおりを受け、売上高が減少傾向にある。価格面では入札物件の落札価格が下がり、収益を圧迫している。際限ない価格下落の動きが懸念される。
 建設業において、総合工事業界は、一昨年秋以降の景気悪化を受け、経営環境の更なる悪化に歯止めをかけるため、国や県による公共事業費を大幅に上積みした経済対策の実施により、売上高が前年度比約20%増となった。しかし、依然価格についてダンピングが横行しており、収益状況は厳しさを抜け切れていない。電気工事業界では、公共投資削減、景気低迷により設備投資・増改修工事が乏しく、売上高が減少傾向にある。また、低価格競争が、結果的に企業の経営体力を削ぐ格好となっている。
 運輸業は、一昨年からの燃料価格高騰による深刻な経営危機を脱しない中、国内景気の悪化を受け荷物需要が大幅に減少しており、売上高確保が厳しい状況にある。過当競争が低運賃を招き、収益面は大幅に落ち込んでいる。また、長引く運送需要の低迷が事業者の休車・減車対応を余儀なくさせており、スポット的に荷物が多くなった場合車両不足に陥るといった悪循環を招いている。
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平成21年中小企業団体情報連絡員年間報告

1 業種別平成21年の状況

平成21年関係業界全体の売上高・収益状況・景況の推移(前年同月比DI値)

1.食料品製造業

(1)菓子製造業
 菓子業界では、売上高の面では、9月のシルバーウィークまでは、わずかな落ち込みだったが、シルバーウィーク以降は激減している。観光客が減少し、松江の銘菓を買い求める人が減ったことが原因と推測される。
 価格の面では、安売りの店が増え、安くしないと売れない傾向にある。原材料は高止まりであり値上げはできないが、消費者が低価格志向であり、卸値を安くという要望が多い。
 収益の面では、客単価が下がる上に、販売数量も減っているので下がっている。
 操業度の面も同様に下がっている。
 雇用の面では、新規雇用はできない傾向にある。しかし、菓子職人に興味を持つ女性が増えており、明るい材料である。

(2)醤油製造業
 醤油業界では、売上高の面は、サラリーマン世帯を中心に所得が減少し、節約志向が高まり、消費量が減少。プライベートブランドなどの低価格品が好まれ、伸び悩んだ。外食産業などの業務用醤油も売上げが落ち込んだ。
 価格の面では、18年ぶりに醤油の価格改定を行ったが、景気の悪化で消費量の買い控えと低価格化が進み、一般価格帯の商品は売上が落ちた。これにより大型店で価格競争が激しくなり、価格維持が難しくなっている。価格維持と市場の正常化が業界の課題である。
 収益の面では、ガソリン灯油など燃料費、原材料の大豆など高止まりではあるが、落ち着いている。しかし、主原料の国内小売価格は大幅値上げとなった。また、消費者の安心安全指向から食品の表示改正がたびたび行われ、シールの作り替えなどで製造コストは上がる一方である。売上の伸び悩みもあり、経営は大変厳しい状況である。
 操業度の面では、出荷量の減少で生産量は下がっているので、機械類の使用頻度は少なくなっている。しかし、製品の小型少量化により人手間がかかり思ったほど操業時間数は減っていない。
 雇用の面では、就業人員はあまり変わっていない。しかし、生産量の減少から雇用人員数は少なくなっている。
 このような状況の下、業界では、松江市で行われた内閣府主催の食育全国大会に上部団体と共催参加し、県内産醤油全製品を展示した。また、併せて醤油造りの全工程を実演して、県内醤油の特徴を来場者にわかりやすく説明するなど醤油の価値の復権を図るPR活動を行った。

(3)水産練り製品製造業
 水産練製品業界は、売上高の面では、主原料価格の低下による練り製品の特売の増加と需要不振により厳しい販売競争となった。
 価格の面では低下傾向、ただし、主原料のすり身の価格も低下した。
 収益の面では、販路をしっかりと持ち、製品にこだわったメーカーは収益を確保している。ただし、後半の需要不振は、粗利を確保しても売上がついていかないという状況を生み全
 体的に厳しい。
 操業度の面では、若干低下した。雇用は現状を維持している。

2.繊維・同製品製造業

 繊維・同製品業界では、売上高の面は、製品によって異なるが全般的に悪化している。
 価格の面は、学生服の注文に対応したが、学生服の単価は紳士服の半分であり、仕事が安定的ではなかった。
 収益の面は、加工賃は下がっており、悪化状態が数年続いている。
 操業度の面では、変化はない。
 雇用の面では、依然労働者不足である。島根県外国人研修生受入組合連絡協議会の拡充に期待している。また、外国人技能実習制度への制度変更により、それに対応する必要がある。
 このような状況の下、業界では情報収集、コスト削減と業務の効率化に努めた。

3.木材・木製品製造業

(1)合板製造業界では、売上高の面は、全国的な不況、住宅着工数の落ち込みに連動して、大きく落ち込んだ。着工数は28%減となり、地区組合員の売上高の落ち込みは対前年比20%減となった。
 価格の面では、大幅な落ち込みで対前年比17%減となった。
 収益の面では、生産の効率化及び原材料の転換等コスト低減を図るも、損失幅は拡大している。
 操業度の面では、引き続き生産調整を行っている。生産能力の70%程度の操業度であった。
 雇用の面では、就業者数は5%程度減少した。
 このような状況の下、業界では木材産業高度化事業の継続、国産材(地域材)利用率向上に努めた。その他にも需要拡大策の推進、価格維持の為の減産を行った。また、合板の国内需要が減少する中、海外への輸出を模索する動きが出てきた。

(2)木材業界は、売上高の面では、年間を通じて前年同期及び前期より減少したとする事業体が多かったが、4~6月期及び10~12月期は前期より増加したとする事業体が多かった。
 価格の面では、年間を通じて前年同期より低下したとする事業体が多く、1~3月期及び4~6月期は前期より低下したとする事業体が多かった。
 収益の面では、年間を通じて前年同期より悪化したとする事業体が多く、特に4~6月期は顕著であった。
 操業度の面では、年間を通じて前年同期より低下した事業体が多かったが、10~12月期は操業度が上昇した事業体もあった。
 雇用の面では、一部で雇用を増やした事業体もあったが、パートを中心に雇用を削減した事業体が多かった。
 このような状況の下、業界では公共施設の建設計画に対して木造で計画してもらうよう陳情するとともに、地域の事業体が連携して木材の円滑な供給に努めた。また、県の「県産木材を生かした木造住宅づくり支援事業」の申し込みが順調に続いている。

(3)家具製造業
 家具業界を見ると、売上高の面では、大型チェーン店(ニトリ)以外はすべて落ち込みである。特に家具売上については、全体が減少しており、自社も同じく対前年比8%減となった。また、売上高が減少している関係により、広告宣伝費、運賃、人件費については縮小している。
 価格の面では、単品で100,000円を超える商品が売れなくなった。平均の客単価は30,000~40,000円代で、昨年より下がった。
 収益の面では、単価が下がった分、売上も下がり、収益もダウンとなった。円高については、収益向上に繋がっているが、仕入が減っているため思ったよりは効果が少ない。
 雇用の面では、人員削減とまではいかないが、補充程度の採用となっている。
 このような状況の下、業界では円高差益還元セールを行った。その他では、介護施設等に国産材を使った木のおもちゃ等で癒しを提供していくことを検討している。

4.出版・印刷業

 組合員事業所における年間売上高は、減少している。売上高減少の主な要因として、需要の停滞、製品(加工)単価の低下・上昇難、製品ニーズへの変化への対応等が挙げられる。
 価格の面では、販売価格は低下傾向にある。販売価格低下の主な要因として、売上高減少の要因でもある「製品(加工)単価の低下・上昇難」があり、また一方、大企業進出による競争の激化も挙げられる。
 収益の面では、悪化傾向にある。収益状況の悪化傾向は極めて憂慮すべき事態である。
 操業度の面では、低下傾向にある。設備操業度の低下は、売上高減に連動するものであり、資本投資の回収が遅れ、コスト負担増の要因となる。
 雇用の面では、就業人員は既に今日に至る迄、大半の事業所で合理化を図るために削減が行われており、景況の回復が遅れれば、更に減少することも予想される。
 このような状況の下、業界では生き残りを懸け、「印刷媒体製造業」から「情報価値創造産業」へ向けて、業態変革に取組んだ。
 一方、「官公需問題」では、平成16年に島根県に提出した「印刷発注に関する要望書」の趣旨の実現に向けて、島根県内で製造する中小印刷業者への優先発注をはじめとする4つの事項について、要望活動を展開した。また、助成事業、厚生労働省島根県労働局所管の労働時間等設定改善推進事業「計画的で効率のよい仕事~ゆとりある生活をめざして~」を前年度に引続き実施し、委員会を設置して所定外労働の削減等諸課題の解決に取組み、改善を図った。
 その他、地域金融機関からのビジネスマッチング事例について情報収集に努めた。

5.窯業・土石製品製造業

(1)瓦業界を見ると、売上高の面では、対前年比81.9%となった。改正建築基準法の影響で平成19年7月以降大幅に減少した新設住宅着工数は、平成20年7月以降上向きに転じた。
 しかし、直後の世界的金融不安を背景とした急激な景気後退で横這いから減少に転じ、対前年比27.9%減の788,410戸となり、新設住宅着工数80万戸割れは昭和39年当時の低水準となった。新設住宅着工数の大幅減に加え、若年層の所得・雇用不安等を背景に、ローコスト住宅指向による化粧スレートや金属屋根材との競合が更に激化したことも大きなマイナス要因であった。
 出荷枚数は、対前年比81.9%の中で、県内への出荷については平成21年4月~12月実績が対前年比108%となったことは、業界で実施した対応策による需要掘り起こしの成果が出たと言える。
 価格の面では、平成20年の2度の価格改訂後は横這いで推移したが、平成21年後半は下降(市場要求)傾向となった。
 収益の面では、燃料や原材料・副資材費等が平成20年に比較し、ほぼ安定していたにも関わらず、出荷の落ち込みに比例し生産量(枚数)が対前年比82.3%に落ち込んだ為、収益回復に至らなかった。
 操業度の面では、生産枚数は対前年比82.3%の65,612千枚となり、出荷枚数と同様に昭和47年水準であった。設備生産能力100,000千枚に対し、操業度65%水準であったと推定される。年間を通しての生産調整(休炉)期は、中小企業緊急雇用安定助成金制度を活用した。
 雇用の面では、平成20年12月に452名だったのが平成21年12月には398名となり54
 名の減となった。一部組合員間で製品のOEM、生産部門統合という業務提携が実施された。
 このような状況の下、業界ではブランド戦略、新商品・新素材開発、規格外瓦用用途開発、県内市場創出支援補助金事業の取り組み、鳥取・広島県金融機関への「石州瓦使用住宅ローン-金利優遇制度」創設の要請、石見4市の「石州瓦利用促進補助金制度」の広報、行政自治体発注公共施設への屋根・壁・床材採用陳情と広報、その他業種・業界、団体、企業への広報を行った。
 また、県内窯業企業が、経済産業省・国土交通省・厚生労働省・文部科学省により2年に1度開催される「第3回ものづくり日本大賞」において、(伝統技術の応用部門)優秀賞を受賞、地域ブランド石州瓦の伸展に貢献した。
 その他にウラジオストック「島根ビジネスサポートセンター」新設に伴い、同地「日本建設デザインセンター」へ参画し、過去のウラジオストックでの実績に加え、更なる海外市場販路開拓を行った。また、石州瓦を中心とする地場産品の関東圏における広報・販路開拓を目的とし、地域資源販路開拓コーディネーターが配置された。それに併せて「関東地域の石州瓦施行事例集(公共建築物、住宅)」を作成し、過去の関東地域実績事例を媒体にした東日本の販路拡大を図った。

(2)生コンクリート製造業
 生コンクリ-ト業界を見ると、平成21年の大型工事物件としては、松江道路、松江第五大橋道路、松江赤十字病院、山陰自動車道斐川~出雲、尾道松江道路、隠岐・災害復旧、仁摩温泉津道路、浜田三隅道路、浜田医療センターのほか小学校・中学校・高校、ごみ処理施設の建設工事等、があった。
 地域別に出荷量をみると、松江・雲南・浜田地区では微増となったものの、出雲・隠岐・石東他地区では前年と比べ大きく落ち込んだ。結局、県下全域の合計出荷実績は、前年比92%となった。
 価格の面では、販売価格については石炭価格等の急騰に伴うセメントの大幅値上がり、骨材・混和剤の上昇、原油価格の高騰による輸送費増加のため、平成20年に打ち出した新価格は旧契約分の出荷が多く浸透までに時間がかかった。しかし、平成21年には旧契約分の出荷が終了し、値上げ後の新契約に移行した。
 収益の面では、公共事業の削減により需要の減少した隠岐・石東・益田地区では、合理化に努めたものの、売上高の減少により収益は悪化した。
 操業度の面では、需要の増加した松江・雲南・浜田地区では上昇し、出雲地区においても
 需要は減少したものの、工場の集約化を実施したため上昇した。隠岐・石東・益田地区では公共事業の減少で操業率が低下した。
 雇用の面では、雇用人員は出荷量の減少地区では減少、特需のあった地区では輸送の外注人員が増加した。
 このような状況の下、 需要回復の見込めない隠岐地区では、工場の自主廃業があった。また前年に引き続き生産規模の適正化、生産性向上のため、工場の集約化を実施または推進中である。産官学体制による全国統一品質管理監査を実施して、品質の確保向上に努めた。また、経営者・社員研修、技術関係有資格者の養成、新技術の研修に努めた。

(3)コンクリート製品製造業
 コンクリート二次製品業界は、売上高の面では、昨年に引き続き非常に厳しい年となった。公共工事を増やしてほしいが、受注が見込めず厳しい状況となっている。県内公共工事は、組合員のコンクリート二次製品を使用してもらっているが、一方で県外事業者の廉価な製品も出回っており、品質面での声が気になるところである(組合では、自主的に製品品質検査委員会を組織し、組合員の製品について品質チェックする体制をとっている)。
 価格の面では、昨年と同価格程度で推移し、原材料の高騰、売上の減少と収益上昇の要因がなく、ますます悪化の状況下である。
 操業度の面では、前年対比70%~90%程度で推移した。組合員企業は廃業・事業縮小に伴い、23社(10年前)から12社まで減少し、雇用面では過剰気味であった。

6.鉄鋼・金属製造業

(1)鉄鋼業界を見ると、売上の面では、2008年秋以降景気の低迷は長期化し、受注環境は極めて厳しく、生産量は年間を通して大幅な落ち込みとなり、売上高も前年比で大幅な減少になっているものと思われる。特に機械加工関連業種にあっては、対前年比40%~50%程度減少しているものと思われる。
 価格の面では、材料価格の値下がりはあったが、それ以上に製品価格が値下がりした。
 収益の面では、受注環境が極めて厳しかった為生産量が大幅に落ち込み、ほとんどの企業で減収・減益であった。
 操業度の面では、生産量の大幅な落ち込みにより大幅な低下が続いている。特に機械加工関連業種、鋳物関連業種にあっては、ほとんどの企業が中小企業緊急雇用安定助成金を申請し、休業、教育訓練を実施し、現在も継続中である。
 雇用の面では、操業度の大幅な低下により、雇用の面にあっても減少は免れなかったが、雇用安定助成金も受けながら、必死になって雇用の維持に努めているのが現状である。
 このような状況の下、業界では組合関連団体と連携し、中小企業緊急雇用安定助成金に関わる教育訓練を17コース(24回)実施した。組合関連団体との共催による各種講習会、研修会、見学会を実施し、製造面、技術面でのレベルアップや資格取得に繋がる教育、共同受注活動による組合員企業への受注の確保を行った。
 また、厳しい経済状況下において、高付加価値加工に向けた技術力の高度化が一層求められている中、県内機械金属加工業の技術力強化を図るため「機械金属加工業技術力強化支援事業」に取り組むこととした。

(2)安来地区で見ると、一昨年秋に発生した世界同時不況により、想像を絶するほど厳しい年となった。特に年が明けた1月から9月までは創業以来の危機的な状況となり、組合の大半の事業所が生産量の激減により長期間にわたり帰休、多能化の推進等の緊急施策を実施し、加えて大幅な人員削減を余儀なくされた。
 売上高の面では、急激な円高、景気後退により1~8月までは、受注量が激減し、売上高は、ピーク時の3割以下に落ち込んだが、10月以降は受注量も増加に転じ、ピーク時の7~8割まで回復した。
 価格の面では、現状維持又は若干の値下げを余儀なくされた。円高の影響が特に大きい。
 収益の面では、9月までは、受注・生産ともピーク時の2~3割の状態であり、赤字決算が続いた。10月以降、受注が昨年の7~8割までに徐々に回復し、収益も若干の黒字となった。
 操業度の面では、1~9月は、昨年の30~40%まで仕事量が激減したため大幅な稼働調整を実施し、操業度は激減した。10月以降、事業所によってはフル操業を始めたところもあり、徐々に回復しつつある。
 雇用の面では、8月まで帰休、転進支援を含む大幅なリストラ等の緊急施策を続けた。その結果、この1年で組合の従業員数は200人以上減少し、昭和59年当地で創業を開始して以来、最も少ない従業員数(約700人)となり、昨年と比較すると230人の減少となった。
 このような状況の下、業界では各種の緊急施策、雇用助成金等の活用、帰休及び転身支援を含むリストラ(60歳以上の継続雇用者の退職、早期勧奨退職、希望退職の募集)を実施するとともに、持続可能な企業体質の構築のための構造改革を推進した。

(3)鋳物製造業界において売上高の面では、20年10月より対前年比マイナスが始まり、21年5月をボトムに生産量、売上高とも20~48%減の状況が続いた。結果、年間トータルとして前年比40%の減となった。
 価格の面では、材料費を含め、生産コストはほぼ横這い傾向が続いたため、価格面はやや下落したものの概ね前年比横這いであった。
 収益の面では、生産量、販売高の大幅な減少により、すべての企業で減収・減益となった。
 操業度の面では、生産量の落ち込みが続く中、20年11月以降依然大幅な低下が続いている。ほとんどの企業が中小企業緊急雇用安定助成金を申請し、休業、教育訓練を実施し、現在も継続中である。
 雇用の面では、操業度に比例し雇用の面も減少傾向であるが、雇用安定助成金の制度を活用して必死に雇用の維持に努めているのが現状である。
 このような状況の下、業界では関係団体と連携し雇用安定助成金に係わる教育訓練を17コース実施した。また、行政に要望し21年8月より松江、出雲の県立高等技術校にて同訓練を実施した。また、島根県産業技術センターと共催し「鋳造技術セミナー」を3回開催し、会員の技術の向上を図った。

7.一般機器

 金属加工機械製造業において売上高を見ると、日本工作機械工業会の発表では対前年72%減の4000億円との発表であった。弊社は同比較で47%減の8.3億となった。1月から3月は受注残があり(数台キャンセルもあった)売上があったが、4月から9月が(弊社決算の上期)2.8億と苦戦。ここ数年にない厳しい1年であった。
 価格の面では、受注減に平行し競合との関係で下げざるを得なかった。また円高の影響を受けて結果的には値下げ状態になった。
 収益の面では、役員報酬30%カット、雇用調整等を活用したが、上期で対前年同期比マイナスとなった。下期で上期のマイナスを少しでも減額すべく取り組み中である。
 操業度の面では、週5日のうち1日雇用調整休業(外部研修を取り入れている)社内教育1日、各種外部研修を受講し、平均で週2.5日の操業であった。雇用面では、定年退職者による減があった。
 このような状況の下、自社では日本機械工業会に入会し、OEMで台湾のほうで一般ユーザー対象の安価なホブ盤の生産に着手した。

8.自動車部品・付属品製造業

 自動車部品・付属品製造業において売上の面を見ると、対前年比23%減となった。19年のリーマンショック以来売上が減少したが、20年1月2月が底で徐々に回復し、21年12月には20年度に対し10%減程度まで回復した。
 価格の面では、大きな変動はなかった。
 収益の面では、売上が下がった分21年度決算は赤字となった。
 操業度の面では、売上が下がった分雇用調整助成金等を活用し、操業減を補った。
 雇用の面では、基本的には人員整理は行わず、国の助成等を活用した。
 このような状況の下、上記、従業員の教育の実施、国の助成金を活用するとともに、次期新商品の開発に力を注いだ。休暇日を活用し、地域ボランティアを全員で実施した。
 また、自動車業界はガソリン車から電気自動車に変わり、構成部品もかなり少なくなることに危機感を感じており、将来の対策が必要だと思われる。

9.畳製造業

 畳製造業を見ると、売上は前年対比約15%減となった。1年を通して受注、販売とも減少した。
 収益面では、年々減少している。雇用の面では、組合員も減少しており、組織の強化が急務である。
 このような状況の下、業界では共同購入事業として春と秋の2回の展示即売会、共同広告宣伝事業として地方紙に広告掲載を行った。また、共同受注事業として、生協しまねと共同受注畳工事契約を行った。研修事業として、畳製作技能講習会及び畳表生産地(熊本)事業者との若手懇談会を行った。組合員の理事が「現代の名工」として表彰を受けたことは業界にとって励みである。

10.卸売業

(1)県東部では、対前年比減少としている企業数が増加。月別で比較しても「減少」とした月が大半を占める。(前年度は、「増加」が上回った月が数回あり)
 通期でも対前年比「減少」となる公算が大きい。(近年では平成15年度の54.4%を上回る見込み)
 価格の面は、「不変」「低下」とする企業が大半。昨年度は「上昇」とした企業が多かったが、その反動とみられる。販売条件は「不変」とする企業が大半である。
 収益の面では、「悪化」となった企業数が増加。「不変」から「悪化」に転じた格好となっている。
 雇用の面では、雇用人数は著変なし。退職者補充の採用が主体で、増員するまでには至っていない。
 このような状況の下、業界では教育情報事業として、組合員の経営者・中堅社員・女子社員のそれぞれを対象としたセミナーや、青年部会メンバーでの視察旅行を実施し、組合員従業員のレベルアップを図った。
 また福利厚生事業として、親睦行事や各種レクリエーションを行い、組合員間のみならず組合員の従業員が交流を深める事業を行った。

(2)県西部では、売上の面では、缶飲料・冷菓が夏場の長雨と低気温の影響で大幅に減少した。コンビニエンスストアの増店により、小売店への客足が減少した。
 価格の面では、販売価格はこのところ落ち着いてきている。
 収益の面では、売上高増が、収益増には繋がらなくなった。また、メーカーからの条件(数量値引き・販促品・販促費等)が、著しく悪化した。
 雇用の面では、新卒採用は殆どない。新規雇用があっても、パートタイマー雇用が多くなっている。
 このような状況の下、業界では季節資金や緊急資金の転貸事業、親睦のためのイベント、団地内経営者・従業員を対象にした集団健康診断の実施、毎月委員会・全員協議会を開催しての意見交換会などを行った。また、年明けの強風で、組合所有物の建物の屋上の一部が落下した。建物の老朽化が予想以上に進んでおり、特に鉄骨の腐食により現状復旧が難しく、修理には日数と予算外費用が必要となった。昭和46年に全組合員が出資して、損害保険代理店を設立運営していたが、手数料率の改訂により、経費の吸収が難しくなったため、やむなく会社を解散した。

11.小売業

(1)共同店舗
 共同店舗では、全体で売上が落ち込む中、当店舗では、2月~5月、8月~10月の各月が前年より上回り、年間では、対前年比100.5%で推移した。特典付商品券の影響で3月は伸びを示し、発行枚数の30%の利用があった。一方メリットを享受できない店舗もあり、その効果は限定的であった。価格の面、収益の面は、共に横這いで推移した。
 このような状況の下、業界では島根県共同店舗協同組合連合会の主催により、島根県産食品の取扱業者と、地域の共同店舗との結び付きを強化し、県産食品の販売拡大に寄与することを目的とし、島根県産食品を一同に集め、地域の消費者に展示・即売を行う、「地産地消推進フェア」を行った。10月3日~11月28日まで実施し計9店舗・延べ19日間の開催にて、売上が約5,800,000円となった。また、当催事をきっかけに、開催店舗と出展者で、正式な取引が始まったところもある。
 しかし、共店連の共同販促として、複数の店舗での開催について、統一感を欠いたところがあった。店舗での出展場所について顧客の導線を考慮し、より検討した場所に設定すれば、さらに効果が上がる可能性があったなど、反省点がいくつかあり、これらの点を次年度より改善できればと考えている、

(2)石油製品
 石油製品の売上高の面を見ると、ガソリンは、数量についてはほぼ前年並みを確保したものの、軽油・灯油は7~9%の減少であった。金額では平成20年のような暫定税率問題、原油の高騰等もなく平成21年後半は単価が比較的安定していたが、販売数量減に伴い売上高は減少した。
 価格の面では、原油価格は平成20年夏の原油高騰の反動は年末には収まり、平成21年の年明けから徐々に値上がりした。小売価格も年前半は上昇、後半は仕入れ価格の値上がりにもかかわらず小売価格は横這い状況であった。全元売りが市場連動仕切り方式へ移行し、公平・透明性が期待されたが、過当競争による価格競争は依然激しいものがあった。
 収益の面では、規制緩和以降、セルフSSや県外大手フリート・元売り直営店の増加により都市部の低価格戦略、多重看板方式が県内でも一般的となり価格競争は激しくなっている。
 地場SSでは仕切り値上げ分を小売価格に十分転嫁できないところも多々見受けられる。全国的にもSSの6割が赤字運営といわれるように、組合員SSでも平成21年には12のSSが廃止となった。
 雇用の面では、従来からのフルサービス型のSSからセルフ型へ移行したところでは概ね雇用は継続されているが、廃止SSの従業員は職を失っており、業界の雇用者数も減少しつつある。
 このような状況の下、業界では価格競争の激化情勢に対し、全石連を中心に独禁法改正を継続して要望した結果、平成22年1月に改正独禁法が施行となった。不当廉売への罰則強化、基準の明確化により不当廉売への抑止が期待される。
 消費者から苦情の多かった多重看板についても、全石連で看板表示の適正化ガイドラインを作成し、県内では非組合員を含む全SSに配布し、ガイドラインの順守を呼びかけるなど対策を講じた。
 隠岐の島町の油槽所混油事故を契機として行政の協力を得て、第三セクターによる油槽所運営、共同配送が12月下旬から仮出荷がスタートし、安定仕入れ、安定供給体制に目途が立った。
 また、地域との共存や社会貢献の一環として「防災・防犯困ったときのSS110番」活動を展開し、地域住民に対してSS認知度の向上を図った。

(3)市街地の商店街を見ると、売上高の面は大変厳しい1年であった。本当に必要なものしか売れない。ただし、商店街から離れ、郊外店を単独出店した店が、大きく売上げを伸ばした例もあり、今までとは違う売り方・立地で工夫さえすれば売上は確実に上がるのではないかと思われる。
 価格の面では、客単価が下がり続けた。特に高額品の動きが悪かった。
 収益の面では、売上げ減少に伴い、利益も減少傾向であった。
 雇用の面では、最低人数での運営が行われており、新規に雇用する余裕はない。
 このような状況の下、プレミアム商品券の発行、共同販売(チラシ、ポイント5倍セール)を行った。

(4)郊外のロードサイド型商店街を見ると、売上高の面では、年末のインフルエンザの影響で大学の学園祭が中止となり、各種打ち上げコンパ等も同様に中止、飲食店等の予約のキャンセルが相次いだ。そのような影響もあり売上高は、昨年より減少した。
 価格の面では、益々低下傾向となった。収益の面は低価格により収益は悪化した。
 雇用の面は、変化はそれほど見られないが、パート、アルバイトの1人当たりの就業時間は短くなった。
 このような状況の下、2月に商店街各店のオーナー、社員による交流パーティーを行い150人の参加があり、連帯を確認した。夏には例年通り、日本海テレビと合同で24時間テレビのイベントを開催し、約1,000人の集客があった。12月にはプレミアム商品券を発行し、完売した。

12.サービス業

(1)旅館業界をみると、売上高の面では、21年の観光は、気候も比較的穏やかで特に台風被害もなかったが、大きなイベントが極めて少なかったため、既存の観光地・施設等では集客にはあまり繋がらず、むしろ減少化傾向が一段と強くなった年であった。
 境港の水木しげるロードによる集客効果や、松江のホーランエンヤによる単発的な集客も見られたが、出雲大社の工事の開始や、世界遺産石見銀山の観光効果も薄れはじめ、西部も津和野をはじめ全体として集客が減少した。売上高は以上のことから大幅な減少となった。
 価格の面では、宿泊客の低価格志向は依然として根強く、やや下げか横這い状態となった。
 収益の面では、売上高の落ち込みが大きく、継続して経費節減に取り組んでいるものの、全体的に収益は大変厳しい状況となった。
 雇用の面では、退職者の補充程度の採用を行ったが、一部はパートで対応した。
 このような状況の下、県外観光客の誘致策として昨年に引き続きキャラバンを実施した。また、観光客集客に天候予報の影響は大きく、テレビを含むマスメディアに対して適正・厳正な報道のあり方が極めて重要と考え、全国旅館組合連合会でも官公庁等行政に要請している。一人でも多くの集客がほしい旅館業界としては、小さいながら影響あるものの是正は極めて重要であると考える。

(2)自動車整備業界では、売上高の面では全体的には減少であった。業務量の減少、価格面の競合等に起因する。新車販売は代替補助金の影響等により9月より4ヶ月間は登録車を中心に前年を上回る傾向で推移した。
 価格の面では、他社との競合等により安価傾向で終始した。
 収益の面では、売上面・価格面により当然収益面も圧迫されることとなり、全体的には悪化傾向であった。
 雇用の面では、全体的には厳しい状況で推移した。業務量(売上)が減少し、収益を圧迫している状況では退職者を補充することも難しいのが現状である。
 このような状況の下、業界ではマイカー点検教室、点検整備促進キャンペーン、街頭検査への協力を行った。また、フロントセミナーの開催(苦情処理等の窓口対応及び登録の基礎知識の2テーマで開催)、「こども110番のくるまやさん事業」及び環境対策等を行った。
(3)情報サービス業
 情報サービス業界を見ると、売上高の面では、前年比で5%程度減少。前半は順調に推移していたが、政権交代と共に先行きの不安から、IT投資が冷え込んできた。リーマンショック後、計画中のIT投資が一段落し、新規分が先送りされたとの見方と一致する。
 価格の面では、パソコンなどハードの低価格化と相まって、システム開発費もオープンソースの普及と共に下がってきている。
 収益の面では、売上の低下と価格の低下により、当然のこととして利益を圧迫してきている。
 操業度の面では、ソフト系IT企業の場合、操業度はエンジニアの稼働率に相当する。稼働率は、仕事の量と比例しており、低下傾向にある。特に後半は余ったエンジニアの話を聞くようになった。
 雇用の面では、特に雇用調整を必要とする状況ではない。
 このような状況の下、業界ではソフト系IT企業の従事者数のアンケート調査を実施した。
 平成21年4月1日時点で、1,050名の従事者数であった。対前年概ね10%の増加をしていた。
 これらをベースに、県・市に地元発注のお願いを実施しているところであり、島根県・松江市・出雲市では実施済みである。また、Rubyを地域資源として、産業の発展を目指している。

(4)ビルメンテナンス業界を見ると、売上高の面では、対前年比10%以上の減額となった。主な要因としては、組合自体が入札に参加できなくなったことによるもの(特に市町村関係)、組合員以外の同業者に物件が落札されたことによるものなどが考えられる。一方、各企業別にみた場合、限られた市場に対し県内外からの新規参入などによる厳しい低価格競争の現状を考えた場合、総じて売上は減少しているものと推定される。
 価格の面では、一般競争入札等の促進などに起因する昨今の低価格競争のあおりで、落札価格が下落傾向の中で、サービスを低下させず単価をギリギリまで下げざるを得ず、このことが各企業の利益率を下げ経営を圧迫している大きな要因の一つとなっている。
 収益の面では、低価格競争による売上等が減少している中で大幅に減少したと考えられる。このまま低価格競争が続くと、一定の歯止めがない限り利益率の限界点を超え、中小企業では受注すること自体が困難になる危険性が憂慮される。
 雇用の面では、当初契約の売上の減少、収益の減少に伴い前年に対し緩やかではあるが悪化した。
 このような状況の下、比較的財務体質が脆弱な当業界としては、こうした厳しい環境を切り抜けるためには人材の育成・確保が重要であると考え、研修会(社団法人島根ビルメンテナンス協会と共同で研修会、島根県中小企業団体中央会及び社団法人全国ビルメンテナンス協会主催の研修会、大会)に積極的に参加し専門的知識や技術の向上を図るとともに、組合員の連帯意識の高揚と醸成を図った。

13.建設業

(1)総合工事業の業界では、売上高の面では、公共事業は、国・県・市町村の経済対策により、前年度比約20%増と10年ぶりに前年度を上回った。
 一方、民間投資は、新規住宅着工件数が対前年度比約30%減少となるなど依然として厳しい状況が続いている。
 価格の面では、ダンピング入札が依然として増加しており、落札率を下げ、労務単価も下がっている。設計額に計上される労務単価は、実務価格を採用しているため、下がった労務単価がベースとなり、デフレスパイラルが続いている。
 収益の面では、平成20年度の県内公共事業受注企業940社の経営状況は、完成工事高営業利益率の平均値が平成16年度以降マイナスを続け、営業損失を計上する企業が全体の45%、債務超過企業が約20%と大変厳しい状況が続いている。
 雇用の面では、国・県・市町村による経済対策、中小企業に対する資金繰り支援等により倒産件数、人員整理が前年度から半減した。
(2)電気工事業の業界では、この1年地を這うような1年であった。公共投資の削減は覚悟していたが、同時不況により工場の設備投資・増改修工事が激減した。ただし、国の省エネ補助金助成が1月よりあり、企業・市町村等に提案すれば申し込みがあった。原発工事の需要もあったが、業界全般には減少傾向であった(自社では昨年対比増であった)。
 価格の面では、多くの企業は公共投資の発注が頼りであったが、入札価格が厳しい上に希望価格表示の制度が今年も改善されず(国はすでに実施。県へも要望している。)資金繰りに困った業者等が数字のみで落札するため価格が下落し、業者の技術力・雇用力などを削いでいる。
 収益の面では、需要減と官庁工事のダンピング受注などでとして悪化した。対応策として県内・県外問わず、自社独自の技術力・商品力・提案力で省エネ・オール電化・特殊照明工事、防犯工事を受注した。
 操業度の面では、上半期は土地開発の激減、建築確認申請の長期化、設備投資の激減の影響で全般に下がった。
 雇用の面では、業界全般では減少した。国策により建設業界で働く労働者削減が言われているので当然の結果である。
 業界では、長年の受け身体質で、しかも公共投資依存型が多く陳情以外あまり対応策が見られなかった。建設業界も省エネ、太陽光、LED等々、企業対応如何によっては需要があるので企業体質の変換が必要と考える。民間企業は省電力・エネルギー削減の目標を持っているので、提案力さえあれば、需要は伸びる。待ちの営業、受けの営業をいつまでもやっていれば、先が細ることが懸念される。

14.運輸業

 道路貨物運送業の業界では、売上高の面では、一昨年からの燃料価格高騰による深刻な経営危機状況から脱却出来ない中、更に拍車をかけた世界同時不況を背景とした国内景気の悪化を受け、荷物需要は大幅に減少し、事業存亡の危機に直面する経営環境に陥るなど、かつて経験したことのない厳しい1年であった。
 2008年補正予算の執行による公共事業工事のダンプ関連、生活に密着した食料品関係を除き、輸出産業の不振や需要の冷え込みから製造業を中心に企業収益が大きく悪化し、大幅な減産を含む生産調整や設備投資の先送り、個人投資や住宅投資の低迷等により、全品目に亘り請け負う荷物の量が激減した。また、長距離輸送も大幅に減少(高速道路利用も大幅減少)するなど、一段と車両余り現象が強まり、売上そのものが激減したことで、資金繰りなど事業経営に与えるダメージは大きく、先行きに不安感が募る厳しい現状が続いた。それでも年中途から生産部門では在庫調整が進み、持ち直しの動きも見られ、行き荷については多少改善されてきた感はあったものの、帰り荷を確保することは非常に困難を極め、片道でも荷物があれば運行せざるをえないという厳しい状況が続いた。
 紙面や報道等では景気の下げ止まり、景気の回復基調などと云われたが、当地の輸送部門ではそういう兆しを実感することなく、そればかりか沈静化していた燃料価格が4月より再び上昇に転じ、輸送コストは更に上昇することになり、厳しい経営状況に追い打ちをかけることとなった。
 価格面では、昨年、燃料費高騰に伴う輸送コストの上昇に対し、荷主からの理解を得て、僅かではあったが運賃の値上げが実現できたのも束の間、荷主企業の収益悪化や燃料価格高騰の沈静化、高速道路料金の割引拡充等により、荷主からの運賃引下げ要請も徐々に強まってきた。
 また、輸送需要が極端に減少する中で、安い運賃を提示しての県外からの入り込みが目立ったことや数少ない荷物の争奪が一層激しくなるなど、形振り構わない生き残りを賭けた過当競争が新たに生まれ、特に長距離輸送運賃の相場を大きく崩す原因となった。同様に宅配業者においても同業者間で価格競争やシェアの確保に躍起になっており、少ない荷物の奪い合いによる運賃デフレの更なる進展は、輸送秩序の混乱を招きかねない状況となっている。
 当地においては未だ運送需要の回復を一向に感じることは出来ず、景気の二番底を迎えた感さえある中、今夏の政権交代により新政府が公約に掲げた高速道路料金の段階的無料化に伴い、高速道路を利用しない運送事業者に対しても運賃引下げの圧力を受けたという声もあり、更には暫定税率廃止問題(環境税の創設)も併せて、これからの対荷主交渉は今まで以上に厳しくなることが予想される。
 収益の面では、前述の売上の面、価格の面にあるように、売上は激減し、これに伴って営業収益は大幅に落ち込むこととなり、またその期間が長期に亘っていることもあり、経営を維持していくことが一段と困難な状況を迎えた。更には環境保全・安全確保への対応、新税政策が及ぼす影響等、中小のトラック運送事業者を取り巻く経営環境を圧迫し続けた。
 操業度の面では、年初より輸送量の大幅減少を受け、生活関連貨物、建設関連貨物、消費関連貨物等、全品目に亘って輸送量の落ち込みが続き、荷動き・稼働率ともに非常に悪い状態が続いた。こうした中でも県西部の高速道路関連のダンプ関係や建設資材等の荷動きは比較的好調であったが、公共投資の見直しの影響を受けその発注が大幅に遅延したため、これらに関連する輸送にも大きく影響を及ぼすこととなった。
 また、9月にはシルバー特需との見方もあったが、一転して求車が求荷を大きく上回る逆転現象が見られ、同様に12月の繁忙期にも同様の現象が起きた。あたかも運送需要が回復してきたかのように思えたが、繁忙期における従来からの現象と異なることは、長期に亘った燃料費高騰による影響や長引く運送需要の低迷から、県内運送事業者でも休車・減車をして対応しているところが多くなっており、全体的に荷物量が増加しているわけではなく、その分、少ない荷物に対して振り分けが出来ているだけのことであり、逆にスポット的に少し荷物が過剰に出た場合は、途端に車両不足に陥ることとなった。これは県下に限らず今やトラック業界全体の車両の減少が関係していることが背景にあり、増車して余るだけの景気の回復が望めない限り車両不足は当面続くものと思われる。
 また、全国的にトラック運送事業者数が初めて減少に転じ、事業撤退が新規参入を上回ることとなり、不況の深刻さが業界に大きな影を落としているようだ。
 雇用の面では、荷物の激減に伴い車両の供給過剰が続く中、休車・減車を余儀なくされ、そのしわ寄せが乗務員の給与や労働条件にも影響を及ぼし、とても新規募集するどころでなく、更には乗務員の一時帰休を行うなど、企業存続のために解雇もやむなしという話も耳に入るなど、大半の運送事業所はその対応と先行きに頭を抱えているのが現状である。全国調査によるトラック運送事業の賃金は前年比で3.6%減少と3年連続で前年を下回っており、このままの状況が続くとすれば、将来の若年層の労働力確保において深刻な事態に直面しかねないことになり、物流の根幹を支えるトラック輸送において大変な支障となることが懸念される。
 このような状況の下、業界では効率的な運行計画や省エネ運転の実施、運賃転嫁や経営コスト対応策に取り組んだ。併せて行政、関係団体と連携し、様々な諸問題に対し要望活動や意見交換を積極的に展開し、その解決に向けた対策、諸施策の実現を目指した。
 業界として行った主な要望活動として、「高速道路の有効活用・機能強化に関する計画(案)に対する意見」、1,000円乗り放題による影響に対する「高速道路混雑防止に関する要望」、「平成22年度税制改正等に関する要望(軽油引取税の廃止、環境税等の新税創設反対、自動車関係諸税や高速道路料金の負担軽減を求めた見直しの要望)」等を含め、事故防止及び安全運転対策、環境対策、税制問題について協同組合の立場からも意見を出しながら(社)全日本トラック協会との連携のもとで対応した。
 こうした中、国土交通省は「中小トラック事業構造改善実証実験事業」の拡充、「低公害・低燃費トラックの導入支援」、「荷主とのパートナーシップによる構造改善実証実験事業」などの助成措置を打ち出し、これら様々な経済対策、支援策を効果的に活用し、僅かながらでも経営危機を回避し、苦境を乗り切る一助とした。
 また、協同組合においては高速道路料金割引制度の拡充、燃料の価格低廉対策、高騰と安定供給体制の確立に取り組んだ。全国求荷求車情報ネットワークでは、事業コストの適正化及びトラック輸送の環境負荷軽減を目指し積極的に取り組んだ。
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2 業種別平成22年の景況予測

1.食料品製造業

(1)菓子製造業界は、何も手を打たないと徐々に悪くなると予測する。

(2)醤油業界は、山間部の過疎化と高齢化により消費量の増加は望めそうになく、厳しい景況が続くと予想される。しかし、全員が知恵を出し合って工夫を凝らし、発送の転換をするなどし、不況を乗り越えなければならないと考えている。

(3)水産練り製品業界は、主原料のすり身の生産がラインに達していないため東南アジア産について入荷が減少。アメリカ産も漁獲枠の減とヨーロッパ、アメリカ等の白身魚の需要が堅調のため入荷減が見込まれ、原料価格の再上昇の可能性もあり厳しい局面を迎える可能性がある。

2.繊維・同製品製造業

 繊維・同製品製造業では、明るい材料は無いと思われる。また、機械設備が老朽化しており、ミシン1台が30万円~300万円もするため、更新予算もなく、労働生産性、品質面での影響を受けている。そのため組合で共同機械リース事業に対応するようなことも考えなければならない。

3.木材・木製品製造業

(1)合板製造業界は、住宅着工数においては80万戸を予想している。また、国内の生産能力から考えると供給過剰になることは確実であり、価格・出荷量両面で極めて厳しい年になると思われる。

(2)木材業界は、不況に伴い平成21年は全国的に新設住宅着工戸数が大きく減少したが、平成22年も回復は望めないものと思われる。こうした中で、県及び市町の木造住宅建築に対する助成制度や国の住宅版エコポイント制度等を活用して、少しでも需要開拓をするよう努めたい。

(3)家具製造業界は、平成21年より悪くなると思われる。

4.出版・印刷業

 出版・印刷業を見ると、組合員に対する業況実態調査によると、業界の景況について、85%超が悪化したと受け止めている。「H22年は平成21年と比較してどう予測するか。」という質問に対し、その回答結果は、H21年の対前年比ほどではないが、悪化するとの予測が70%近くに達している。

5.窯業・土石製品製造業

(1)瓦業界では、12の民間調査機関による平成22年の新設住宅着工数予想(平均値)では、平成21年105.4%の831千戸という情報もあるが、(特に瓦需要にとっては)分譲マンションを含む集合住宅の増減、分譲戸建・持ち家の増減、若年取得層のローコスト住宅指向等々様々な動向を注視する必要がある。
 また、昨年同様に化粧スレートや金属屋根材との競合激化、公共投資のさらなる抑制等によるマイナス要因を想定しておかねばならない。その上でのシェア奪回、需要喚起策を講じていきたい。
 価格については横ばいと見ており、燃料油価格が昨年並みで推移すれば市場からの価格下げ要求は必至であるが、燃料価格が平成17年比20%高の水準であること、下記・設備能力に対する操業度からも価格の現状維持が必要である。生産枚数(操業度)については既存生産設備能力100,000千枚に対し70%の操業度と見ている。
 収益については、操業度如何が条件であり、燃料価格動向に左右されるが、更なる生産設備集約、生産品目の絞り込みによる生産効率と歩留まり向上、雇用自然減等により収益は若干の回復が期待できる。

(2)コンクリート二次製品製造業界は、昨年同等かそれ以上に悪化傾向と思われる。

(3)生コンクリート製品業界は、主な物件としては松江第五大橋道路、斐伊川放水路分流堰、平田船川汐止堰、尾道松江道路、仁摩温泉津道路、三隅道路、日本製紙増築などの需要が見込まれる。
 県下全体では公共事業の削減と景気悪化による民需の不振が続き、需要は平成21年比で20%程度減少するものと予想している。

6.鉄鋼・金属製造業

(1)鉄鋼製造業界は、生産活動は一時期に比べると回復の方向に動いているものの、需要不足の解消にはまだ道半ばであり、新たな需要には繋がってこない状態が続いており、今年も価格競争への対応は、多くの企業にとって厳しい課題となるものと思われる。
 こうした状況下にあって、中小企業は引き続き厳しい環境下に置かれ、特に地方にある我が島根県の鉄鋼業界にあっては、発注企業からのコストダウン要求や、県外企業との競合の激化等、経営環境は引き続き厳しいものがあると思われる。

(2)安来地区の鉄鋼製造業界は、日本を取り巻く環境は、平成22年も円高を始め、デフレ、オイル高及び株価の不安定等により、依然厳しい状況が続くものと思われる。製造業にとっては、引き続き仕事量、価格等で国際的な競争に巻き込まれるであろう。
 昨夏より、BRICS諸国の市場回復と成長により、一部の製品には明るさが戻りつつあるものの、大半の製品は国内需要回復遅れで低迷したままである。その原因は、最終製品の需要先である先進諸国の市場回復遅れと極端な円高による価格競争力の低下によるものであり、このような状況が当分続くものと思われる。

(3)鋳物製造業界は、秋口にわずかながら生産量の回復傾向が見られたものの、全体としては生産量、売上とも依然低水準で推移している中、政府による公共事業の削減をはじめ、今後さらなる消費の低迷が予想されるなど好材料は見られず、当分の間景気は低調に推移するものと考えられる。

7.一般機器

 金属加工機械製造業界では、日本機械工業会の予測では40%増の5500億と発表している。自社としてもどこまで計画に届くかが課題である。

8.自動車部品・付属品製造業

 自動車部品・付属品製造業界では、平成21年度との比較としては、1月の現時点で3%増であるが、平成20年度との比較では1月の現時点では5%減となっている。現時点の予測では20年度の10%減で推移すると想定。今後トヨタ自動車のリコール等の影響が懸念される。

9.畳製造業

 畳製造業界では、昨年以上に厳しい状況は続くものと思われる。組合員一丸となって知恵を出し合い生き残っていきたい。

10.卸売業

 県東部では、組合員に建設関連資材を取り扱う業種が多いところから、公共事業費の多寡に左右される傾向が大きい。政府の景気刺激策としての公共事業拡充への方針転換に期待したい。
 県西部では、公共事業の落ち込みで町に活気がない。デフレ気味の経営環境は好転の兆しがなく、益々厳しいと思われる。

11.小売業

(1)共同店舗では、業界の景況は依然として厳しい状況が続くと思われる。

(2)石油製品では、精油メーカーの設備縮小、元売りの合併計画があり不採算店の整理が進んでいくことが予想される。また、地場SSでは消防法の規制強化や需要減・採算への先行き不安、後継者の確保難から閉鎖が一段と進むものと予想される。現在、組合員SSが1カ所以下のところが旧市町村区域で10ヶ所あるが、今後さらに増加し住民生活への支障が懸念される。

(3)浜田市の商店街は、浜田市で起こった未解決事件があり、沈滞ムードは依然続きそうである。経営者の諦めムードが一番の敵である。景気浮上は難しそうだ。
 郊外のロードサイド型商店街では、22年は2つの自動車販売店の撤収が決まり非常に困っている。出店は飲食関係が多くなるであろう。今年の出店は飲食関係が5店舗あった。

12.サービス業

(1)旅館業界では、集客増加策が絶対的に必要なものとなるが、現段階で観光宣伝効果が大となるイベント等がほとんどない状況であり、県下各観光地・施設等での創意工夫が強く求められる。
 また、パイが年々小さくなる国内旅行にあって、インターネットの有効活用による集客は引き続き積極的な展開が必要であるが、東部に多い有名観光地の組合は比較的後継者がいるが、中西部の組合では高齢化が進んでいる。ネットなどの先進的開発は実施しにくい面もある。経営の厳しさが出て、組織の弱体化に直接繋がる組合脱退を心配している。

(2)自動車整備業界を見ると、景気回復がない限り厳しい状況は変わりないと考える。
 エコカー減税や代替補助金は、継続するが補助金終了後の新車販売は落ち込むと考える。また収益面でも悪化している状況では、経営不振等による脱退組合員の増加も考えられる。

(3)情報サービス業界では、IT投資は比較的堅調に推移していたが、21年の10月以降は新しいものが出なくなっている。22年は先行きが不透明である。業務システムとしてのRuby活用の受注については今後も期待したい。

(4)ビルメンテナンス業界では、一昨年の未曾有の金融危機以来、本県のビルメンテナンス業界の景況感を左右する公共事業関連の予算の落ち込みや民間の厳しい経済情勢は依然として不況感が漂っている。また、急激な円高やデフレが懸念される今日の経済動向は、平成21年と比較して大きく好転する材料は見あたらず、今後とも限られた市場に対し低価格競争は避けられず、厳しい状況が今後とも続くものと考えられる。

13.建設業

(1)総合工事業界では、国の公共事業予算は平成21年度比18.3%の大幅削減であり、既に厳しい経営状況が続いている。建設業においては、倒産・廃業により多数の失業者が出る恐れがある。

(2)電気工事業界では、21年ほど景気の底を這うようなことはないだろう。設備投資・増改修工事も出てくると思われる。個人住宅ではオール電化・薄型TV、防犯、回路増設、外灯等々需要が多い。自社の場合、昨年は民需が70%台になってきている。

14.運輸業

 道路貨物運送業では、日通総研によれば、22年度は内需の持ち直しのテンポが緩慢なことから、荷動きの回復は見込めない。総輸送量4.0%減と11年連続の減少が必至としており、当地においても、個人消費の低迷、設備投資、住宅建設の低迷が続く中、急速にデフレが進行し、景気の二番底さえ懸念される状況である。
 時代の求める環境型製品の製造企業等を除き、多くの荷主企業は稼働日数を減らすなど、減産または生産調整を余儀なくされ、また、大手企業に連なる県下にある効率の悪い事業所は事業再編に伴う撤退や人員削減等、真っ先に淘汰されることになり、関連する運送需要への影響は大きく、荷動きは前年以上の落ち込みとなる見通しである。
 しかしながら、このまま景気が回復するのをじっと待つほどの猶予は一切なく、事業者自身による経営基盤(輸送以外の部分での収益拡大策等)の改善・強化に関わる方策や自ら需要(貨物輸送の掘り起こしやサービスの高付加価値化等)を創出する取り組みが求められる。
 また、新政権での政策転換に直面し、「コンクリートから人」へとあるように、投資の対象を移行したため、緊急性を要す景気対策の動向が先行きの懸念材料となり、即効性のある新たな公共工事による大規模な景気浮揚策は期待出来なくなり、建設資材関連貨物の輸送は低調に推移するものと予測する。今後、更に企業の業績見通しも不透明感を伴う中で、高速料金の段階的無料化、暫定税率撤廃(2011年度以降導入される見込みの環境税の創設)等の影響、経済に影を落とすデフレ圧力も加わり、荷主からの運賃値下げ圧力は更に強まることが予測される。運送事業者の収益状況は一層厳しさを増し、既往の景気対策効果も一巡し、益々経営を維持していくことが困難な状況を迎えるのではと心配している。
 今、業界にとって明るい材料は皆無に等しく、これから先、送需要の回復の目途が立たない状況が続けば、後継者不足も相俟って、廃業・倒産する事業者が出てくることも懸念されるところである。
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3 中央会、行政庁への要望事項

1.金融・税制支援関係

(1)高度化資金の既往借入分の金利引き下げを強く望む。引き下げが無理であれば利子補給の方法等検討を望む。

〔卸売業〕

(2)制度資金はもとより、保証協会の更なる支援をお願いしたい。

〔鉄鋼業〕

2.施策関係・その他

(1)減少化傾向にある観光客の県内集客への取り組みの強力な支援に併せ、インターネットの有効活用支援を要望する。

〔サービス業〕

(2)行政からは、研修コースの開設やRuby開発の推進策など各種支援を頂いており、継続お願いしているところである。

〔サービス業〕

(3)県・市町村の石油製品官公需契約で、競争見積もり(入札)の下、市況より安い価格での納入が見られる。地場企業SS保護のために適正価格での契約をお願いしたい。

〔小売業〕

(4)国が実施し、県へも要請している入札希望価格の表示の取りやめを実行してもらいたい。

〔建設業〕

(5)建築・電気・水道工事は年に1回程度しか大型対象工事の受注がない。「総合評価の点数」に入っているので何らかの対処をして欲しい。

〔建設業〕

(6)市場実態にあたった適切な業務委託精算に基づく適正価格(予定価格)による発注を望む。その際、最低制限価格制度の導入を要望する。

〔サービス業〕

(7)地元企業で構成する官公需適格組合の活用、そのためにも法令で定める随意契約制度の積極的活用を要望する。

〔サービス業〕

(8)不適切業者の排除のため契約業務の履行チェック体制の確立等を要望する。

〔サービス業〕

(9)このままでは日本の製造業が海外進出し空洞化現象は進むばかりではないだろうか。大手の海外調達を止めるよう関税でもかけるなど何か対策はないだろうか。

〔一般機器〕

(10)県立高等技術校での雇用安定助成金に係わる教育訓練を4月以降も継続していただきたい。

〔鋼鉄・金属業〕

(11)住宅産業を基幹産業と位置づけ、その活性化を図っていただきたい。

〔木材・木製品製造業〕

(12)林業活性化、国産材利用促進の施策を一段と強力に実施していただきたい。

〔木材・木製品製造業〕

(13)農商工連携等の助成金等を受けやすくしていただきたい。

〔食料品〕

(14)他分野との新商品商談のサポートを要望する。

〔家具製造業〕

(15)県内公共事業は県内産コンクリート二次製品を最優先で採用されるよう要望する。

〔窯業・土石製品〕

(16)景気対策の継続と社会資本の着実な整備を要望する。

〔建設業〕

(17)ダンピング対策の強化を要望する。

〔建設業〕

(18)産、学、官の連携を強化していただきたい。

〔印刷業〕

(19)山陰・中国地域の資源(石州瓦・木材等)活用の更なる連携による住宅新築&リフォームと公共需要喚起をしていただきたい。

〔瓦製造業〕

(20)トラック運送事業協同組合によるコーポレートカード契約に対する大口・多頻度割引の継続を強く要望する。

〔運輸業〕

(21)下請取引の適正化推進をしていただきたい。

〔窯業・土石製品〕

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4 その他資料

[グラフ統計資料等データ出所]
「平成21年県内企業の景況動向を振り返って」で掲載したグラフ統計資料等についての出所は次の通り。
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