平成16年中小企業団体情報連絡員総括報告



 当会では、県内中小企業の動向、問題点、要望を迅速かつ的確に把握すべく、中小企業団体情報連絡員制度を昭和49年に発足させ、地域別、業種別に勘案して30名の委員を委嘱し、毎月、情報の提供をお願いいたしているところです。
 ここで集められた業界の動向、要望などについては、適宜関係機関に報告し、また当会としてもそれらを基に組織化支援をはじめとする関連事業に活用させていただいています。
 情報連絡員制度は、当会が中小企業及び業界との接点になり、多方面との円滑な交流を図る役割を担っており、今後益々その必要性が高くなっていくものと存じます。
 皆様方におかれましても、この趣旨について十分にご理解を賜り、一層のご協力をお願い申し上げる次第です。

T 業種別平成16年の状況
U 業種別平成17年の景況予測
V 中央会・行政庁への要望事項
各種 統計・景況グラフ

     

T 業種別平成16年の状況
1.食料品製造業
(1)  豆富業界は、「競争激化により価格が20年前位の水準に落ち込んでいる」、「高齢化や核家族化の進展により多品種少量生産対応を強く求められている」、「食の安全性を消費者は重視するが、価格にはそのコストを十分に転嫁できない」、「代替商品普及による豆富需要の落ち込み」などの要因により、売上高は、今までにない厳しい状況となった。
 価格面では、大型量販店の競争激化により、日配品である豆富の安売りが定番化し、また県外からの仕入ルートが主流となっており、県内業者が販路の縮小と共に卸価格の更なるダウンを求められる二重苦となっている。
 収益面では、納入先からの値下げ要請が相次いでおり、採算ベース限界の状況である。新製品投入により、目先を変えて適正利潤を確保する戦略を試みているが、原料大豆の仕入価格や燃料コストの上昇といった条件面の悪化などもあり、際立った成果は出ていない。
 操業面では、定番商品などの生産数量が伸び悩んでいることから、実質的に低下しており、雇用面では、人員削減分をパート雇用で補っている。
 このような状況下、業界では、消費者の食の安全、健康志向に応えるために、地産地消事業を実施したが、原料大豆の高騰により事業の中止に追い込まれるところも出ている。

(2)  醤油業界は、市場環境に好転の兆しが依然みえず、出荷量の減少と価格の低迷が続いており、売上高は、前年を下回る結果となった。内容をみると、県内個人向けで比較的単価が低いものの出荷量の多い定番品の売上が目立って減少となっている。一方県外向けは、特徴のある高級品が安定して出荷販売されている。総じて、業務用を含めた県内消費量の減少が業界景況を厳しくしている要因と考えられる。
 価格面では、全国的に価格低迷が続いており、県内でも量販店の県外製品の廉売攻勢が日常化し、県内製品価格も引っ張られるかのように低下傾向にある。
 収益面では、販売数量の減少と小売価格の低迷の中、原料大豆の仕入価格高騰、燃料及び包装資材の値上がりに加え、近年の環境対策費用も多大となっており、製品コストが大幅にアップした分、減収益となっている。
 操業面では、生産量の減少により総じて低下しているが、製品の小型化と製造工程の合理化がまだできていない面もあり、操業時間については、企業間格差が生じている。
 雇用面では、従業員の高齢化が進んでいるが、若年労働者の雇用が難しい業界体質もあり、減少・横這い傾向である。 
 このような状況下、業界では、醤油の存在価値を消費者に再認識してもらうためのPR事業に積極的に取り組んだ。特に、日本醤油協会が中心となり、料理店から醤油使いの名人を各県で推薦し、中でも優れた方を「しょうゆの名匠」とし、毎年10月1日を「しょうゆの日」と定めるなどした活動は、多くのマスコミ各社に取り上げられた。また、県内業界においては、中央から講師を招き、醤油技術と衛生学的観点からの製造管理ポイントなどをテーマに研修会を開催するなどした。

(3)  水産練製品業界は、夏の猛暑、冬の温暖化等天候面での影響を受けてか、需要にメリハリがなく、売上高は、横這い状態となった。
 価格面では、他競合食品間の競争が激しくなっており、製造コストが価格に上乗せできず横這い状態である。
 収益面は、原料高騰などにより製造コストが上昇する一方、製品価格が据え置きのため、圧迫され減収益となっている。
 操業面及び雇用面では、前年並みとなっている。
 このような状況下、業界では、消費者への新たなPR事業として、県の魚「飛魚」を全面に打ち出した企画を立案し、具体策の検討を行った。


2.繊維・同製品製造業
 年前半の売上高は、4月から6月にかけて例年通り夏物主体で受注も年度として多く、7月に入っても暑い日が続き追加注文もある程度確保できた結果、評価できるものであった。しかし、後半は、8月9月と酷暑が続いたため、例年受注がある秋物の出足を悪くし、冬物についても気象長期予報が暖冬傾向ということで、売上が落ち込み、年間を通すと厳しい経営状況であったといえる。
 価格面では、近年の縫製単価が概ね下落傾向にあるが、発注者・受注者双方の事情でむやみに下がるものでなく、安価ながら安定した傾向にある。しかし、高付加価値化は、工程数も多く、技術的にも高度なものを求められるため、数的な生産効率は悪くなる傾向にある。このため一見標準的な価格であっても、結果的に安いということになる恐れがある。販売価格が極端に廉価な中国産商品の高い市場シェアの隙間をねらった、価格アップに頼らない、生き残るための事業者の創意工夫などの対応努力が求められている。
 収益面は、生産コストの上昇から厳しい経営状況を迫られる事業者が多くなっている。事業者においては、自らの家族の生計の維持と従業員の雇用の確保ばかりに気を取られ、将来構想を描く余裕がない程に追い込まれている。また、本音は廃業したいが、やむを得ず事業継続をしているのが実態という事業者が多くなっていると推察される。加えて、最近は中国においても生産コストが高くなる傾向にあり、長期的にみて再びビジネスチャンスに恵まれるのではないかという県内事業者の期待感が、事業継続努力の唯一の支えとなっているとうかがえる。
 操業面では、安定受注が見込まれなかったことから、数日間の生産調整や、昼を休業して夜間のみ操業する事業者もみられた。特に、先行きの受注不透明さが、生地(反物)を始めとする各種部材の調達遅れに直接関係しており、日々の操業度に影響を及ぼす状況も認められた。
 雇用面では、業界従事者の高齢化が進んでおり、若年労働者の確保に苦慮しているのが現状である。併せて、外国人技能実習生を受け入れている縫製企業数は、近年増加傾向にある。また、近年の受注状況は多品種、小ロッド、短納期、付加価値化が進んでおり、このタイミングで若年労働者が確保できれば、不況業界とはいえ、ある程度の成果が期待できる感があるものの、雇用目標が達成できていないのが現状である。
 更には、県西部で事業者の廃業が見込まれており、当分の間企業の生き残りをかけた厳しい競争が続くものと推測される。
 このような状況下、業界では、営業能力の高い事業者を核に、2〜3社程度の事業者をまとめた垂直連携を強化するための検討協議を行う一方、外国人研修生事業の円滑化に努めた。


3.木材・木製品製造業
(1)  合板業界は、出荷量が対前年比3%増、売上高対前年比9%増となっている。全国統計は、出荷量対前年比5%増となっており、内容をみると、針葉樹合板18%増、広葉樹合板22%減となっている。
 価格面では平均単価が5%増となっており、収益面をみると、広葉樹合板が大変厳しい状況の中、針葉樹合板は堅調に推移した。
 操業面では、広葉樹合板の1工場が閉鎖したが(従業員は他工場へ移籍、閉鎖工場は針葉樹合板工場として再稼働)、全体的に100%稼働となっている。
 雇用面では、昨年雇用者数565人程度であったものが、今年度微増し580人規模となっている。
 業界トピックスとして、県産材の杉を利用した合板生産量が増加した。(平成15年/6,000立方メートル、平成16年/16,000立方メートル)
 このような状況下、業界では、木材産業高度化事業の継続実施に努め、展示会(大阪)開催による商品紹介、県産材利用促進に努力した。

(2)  木材業界は、全体では、新設住宅着工数が総戸数で前年を上回ったものの、ハウスメーカーなどの分譲が大きなウェイトを占めており、好材料とならず、売上高は依然低位で推移している。
 価格面では、内外材製品の供給が需要を上回る中、度重なる台風の影響で一時期値上がりに転じた時期もあったが、総じて安値べた凪相場が継続した。
 収益面では、受注量の伸び悩みと価格競争激化により、著しく減少した。
 操業面では、低位で安定しており、好転の兆しが見出せない状況にあり、雇用面でも、依然として雇用維持が困難な状況が継続している。
 このような状況下、業界では、「しまね木の香の家推進事業(地場産材50%以上使用した住宅への支援)」、「しまね木材まつり(安来会場に5,000人)」、「中学校ものづくり教材として”スギ板君”2,000枚配付」、「ポスター、パンフ、冊子等配付」などに積極的に取り組んだ。

(3)  家具業界は、2割の企業が売上高対前年比増となったが、全体をみると売上高額が対前年比3%の減少となっている。少子化、住宅着工数の減少に加え、景気の先行き不透明感による買い控えがその大きな要因と推察される。大型家具の販売不振、インテリア小物などに人気が高まっており、ホームファッションへの業態変更をする店舗もみられる。
 価格面では、大型家具から小型家具、小物に取って代わり、必然的に客単価、一品単価が下がり、また、国内商品から中国、東南アジアを中心とした海外商品のウェイトが高まっており、全体的に価格が下落気味である。
 収益面をみると、大型店舗においては品揃えの充実が集客力の有利性に結びついており、厳しい経営環境の中、一定の利潤を確保しているが、中小小売店舗は、絶対額の確保が難しい状況にある。対応としては、利益率の高い商品開発の強化を図りたい。
 雇用面では、全体的に現状維持、若しくは人員削減を行っている。広告などの販促方法による集客依存度が高まる一方で、外販活動の縮小に伴う外販員の削減傾向がみられる。
 このような状況下、業界では、商品開発の強化(商品群別のグループ単位構成開発、海外現地開拓)、共同仕入事業の強化、海外現地視察(アメリカ同業種大型店)などに取り組んだ。


4.出版・印刷業
 全印工連「印刷業経営動向実態調査」の集計によると、1人当たり純売上高対前年比△0.5%、加工高対前年比△2.0%、純加工高対前年比△2.1%と、昨年に引き続きダウンとなっている。県内企業の売上高は、単価の引き下げ、同業他社の競争激化もあり、全国に比べ更に厳しいものとなっている。対応としては、人的資源の強化、高付加価値化を推進することにより、労働生産性の向上に努める必要がある。
 価格面では、発注者側の単価引き下げ要求が強く、依然下落傾向にある。
 収益面では、8月以降大手製紙会社による印刷用紙価格値上げ表明があり、その影響で近畿・中国地区で一部仕入価格の上昇がみられ、売上高の減少と伴って、減益となっている。この結果、生産性の向上、人員削減などの経営の合理化が一層迫られる状況になっている。
 操業面では、印刷機械の稼働率アップ、人員削減などから、実質的に高まる傾向にある。
 雇用面では、就業人員の部門別構成比、年間労働日数共に昨年並みの数値であるが、労働時間が全体的に増加傾向にあり、有給休暇取得率が低いことと併せ、限られた人員での厳しい就労環境がうかがえる。また、最近の特色としては、業界における企業の営業部門人数が増加する一方、生産部門従事者が減少している。
 このような状況下、業界では、経営力強化・人材育成の視点から各種研修会の開催、またセミナーへの企業の従業員派遣や、官公需について行政への陳情など行った。


5.窯業・土石製品製造業
(1)  瓦業界は、住宅着工数の伸びがなく、また洋瓦、平板瓦が伸びている中、和瓦が大半の石州において芳しくない状況であったが、9月以降台風の影響により出荷増となり、売上高は、対前年比3〜8%増となっている。
 価格面では、ほぼ横這い、前年並みに推移したが、収益面では、生産調整による製造原価のアップ、また6月以降の瓦焼成の燃料代高騰及び原材料のコスト増により、悪化の一途をたどっている。
 操業面では、需要減から前半について生産調整がなされかなりのダウンとなったが、9月以降台風の影響から出荷の伸びがみられ、前年並みの動きとなった。しかし、ピーク時に比べると約20%の落ち込みとなっている。
 雇用面では、生産調整、規模縮小などで、昨年度より約20名の従業員減となった。
 業界動向として、産業再生機構の支援決定がなされ対象企業の合併が進み、業界全体では企業数が減少した。
 このような状況下、業界では、耐震実験の実施(阪神淡路地震より10年が経過するにあたり、再現試験を実施し、東海大地震などにも瓦屋根が十分に耐えられることが証明された)、産業廃棄物への対応(他産地廃瓦リサイクルの調査)、販路拡大事業などに取り組んだ。

(2)  生コンクリート業界は、国・県・市町村の財政悪化により公共事業が削減され、需要先の7割を占める官公需について売上高対前年比7%の減少となった。反面、民需は松江市と出雲市を中心にマンション、病院などの建設ラッシュで、売上高対前年比8%増と好転した。官公需と民需を合わせた総売上高は対前年比4%減となり、平成13年以来4年連続して前年割れとなった。
 価格面では、ほぼ横這いで推移しているが、収益面では、出荷量が減少したため減益となった。特に、公共事業の大幅削減に歯止めがかからない中山間地や離島では、極めて厳しい状況である。
 操業面では、需要の減少傾向が続く見通しのため、浜田・松江・隠岐及び雲南地区の一部で工場の集約化と自主廃業が行われ、収益増と共に好転につながった。しかし、これ以外の集約化を実施していない多くの企業では、設備操業度が低下した。
 雇用面では、需要の減少に伴い、人件費抑制のための合理化を行った企業がみられた。
 このような状況下、業界では、生産と輸送の共同化・合理化を行い、過剰設備を削減し人員の抑制を検討すると共に、先進地視察などにより工場集約化等の意識の醸成に努めた。また、品質の確保向上を図るために、技術研修会や有資格者養成講習会を開催し、併せて全国統一品質管理監査を実施し、指導を行った。

(3)  コンクリート二次製品業界は、市町村合併などの影響で、年度前半に工事の発注が集中し、その反動で後半極端に受注の減少がみられ、売上について伸び悩み厳しい状況であった。
 価格面では、上昇がみられるが、収益面では、売上減少も伴って一段と悪化傾向にある。
 操業度面では、対前年比80%〜90%程度で推移しており、雇用面では、人員削減を行った複数の企業が見受けられた。


6.鉄鋼・機械製造業
(1)  鉄鋼業界は、輸出や設備投資の増加に伴い受注量がアップし、売上高対前年比増となった。一方、鋼構造関連業種は、公共工事の減少など受注環境は厳しく、売上高対前年比横這いか微増で、企業間格差が見受けられる。
 価格面では、価格・品質・納期などにおいて県外企業との競合が益々熾烈化する中、発注元からのコストダウン要求が依然として強く、加えて原材料価格の大幅な上昇が生産コストの押し上げ要因となったが、小幅ながら値戻しが出来た。
 収益面では、原材料価格の大幅な高騰が生産コストに大きくのしかかり、収益の圧迫を生産量増でカバーしている現状がある。また、企業間格差が大きいのが特徴である。
 操業面では、企業間、業種間に格差があるものの、年間を通して上昇傾向にあった。
 雇用面では、生産量や売上高の増加がみられる反面、生産コストアップの悪条件もあり、経営状況が依然厳しく変化がみられなかった。
 また、機械加工関連の業種を中心に、更新も含め設備投資が回復傾向にある一方、事業の縮小や廃業もみられる。
 このような状況下、業界では、原材料価格の高騰や品不足への対応として、安定供給に向けた原材料の確保に努めた。また、メーカー・商社への営業活動を行い、受注の掘り起こしを図ると共に、製造・技術面でのレベルアップにつなげるための研修会などを実施した。

(2)  一般機械器具製造業界は、売上高については、プレス金型等が前年度に引き続き好調に推移した他、特殊印刷機設計製作、金属製品加工及び金属熱処理が昨年並み乃至微増した反面、機械設計製作の一部が公共事業減少の影響を受けている。
 価格面では、活発な中国景気により、相次ぐ鋼材・資材等の高騰分を価格に転嫁することが難しく、厳しい状況が続いている。ユーザーの理解を得ながら値上げ確保をしている他、一部好調企業は選択受注により対処している。
 収益面では、素材費高騰で受注先に転嫁出来ない状況にある上、原材料の供給不足による在庫の積み増しで資金繰りにも影響しており、受注開拓、経費の節減及び体制の合理化などで対処を迫られる厳しい現状である。
 操業面では、プレス金型製作等はフル稼働で推移したが、金属熱処理、機械部品加工及び特殊機械設計製作等では企業によってバラツキがみられる。人員削減・設備の老朽化で能力が低下している中での中国景気であり、対応に追われている。
 雇用面では、景気の先行きが不透明なため繁忙であっても正社員の採用を控え、外注、派遣社員で生産増に対応している。一部で設計・プログラマーなど技術職不補充分を社内教育による人材のレベルアップで補っている企業がみられる。
 このような状況下、業界では、プレス金型製作について型図の海外流出阻止を図ったり、特殊印刷機設計製作について短納期物件の重複受注などに際し、協力・共存会社との相互協力により業界内受注の確保に努めるなど対応を行った。

(3)  鋳物関連業界は、自動車、工作機械、産業機械とも順調な生産が続き、毎月前年を上回る生産量で7年ぶりに10万トン台を回復し、最終的に生産量が11万トンを超え対前年比18%増、売上高対前年比20%増と大幅に増加した。
 価格面では、原材料の値上げもあり、値戻し運動を展開し、廉価な外国製品との比較、競合及び発注先からのコストダウン要求があり、大幅な価格の上昇にはつながらなかったものの、販売価格の上昇が実現した。
 収益面では、原材料の銑鉄やスクラップの大幅な値上げ、またコークスなどの副資材の値上げが生産コストに大きく跳ね返っている中、厳しい状況が続いている。しかし、6月以降小幅であるが価格の上昇があり、企業間格差があるものの徐々に改善されてきている。
 操業面では、各企業とも順調な生産続き、年間を通して上昇傾向にあった。
 雇用面では、生産量、売上高の増加が続く反面、収益の改善が依然として低水準で推移したため、全体に横這い傾向であった。
 業界動向として、日本鋳物工業界、日本鋳造技術協会、日本強靭鋳鉄協会の3団体が平成17年7月を目処に統合することが発表された。
 このような状況下、業界では、業界上部団体と連携し、「値戻し運動」について全国紙を利用したPRや施策・税制の要望を行うと共に、県の産廃税について導入反対の意見書を提出した。また、大手高炉メーカー、コークスメーカーへ原料値上げの凍結と安定供給の実現を要望し、ユーザーに対し価格の転嫁を受け入れるよう申し入れを行った。


7.電気機械器具製造業
 民需は設備投資の伸張の影響で受注量が増加したものの、官公需は事業費圧縮の影響を受けて受注量が減少した。
 価格面では、民需、官公需共に価格引き下げ要求が強いが、収益面では、前年並みの収益が確保できた。
 操業面では、季節的要因によりアンバランスが発生し、天候が良かった11月、12月に集中する反面、他の月が低下した。
 雇用面では、退職などの自然減少分を補充する程度であった。
 このような状況下、業界では、新規事業の研究開発に対する取り組みなどを行った。


8.畳製造業
 売上高は、受注減少に伴う販売不振により、全体で対前年比15%減となった。
 価格面では、近年他からの廉価販売攻勢があり受注価格に影響を及ぼしているものの、前年と余り変わっていない。
 収益面では、売上の減少と共に減益となっている。
 雇用面では、従事者数は昨年並で推移したが、業界としては、後継者の育成が急務となっている。
 このような状況下、業界では、材料価格を下げるために畳表をコンテナ仕入とする一方、共同受注に積極的に取り組んだ。


9.卸売業
 売上高は、平成14年〜15年を底として本年前半に下げ止まったかにみえたが、秋口より低迷が目立ち、後半に対前年比マイナスを余儀なくされた企業が半数近くに及んでいる。年間を通しては、依然として景気回復感が実感できない。納入先である中小小売店の転廃業などもその要因の一つである。
 価格面、収益面では、若干の明かりがあるが、低迷を極めた一昨年との比較であり、未だ改善の兆しがみえない。コスト削減などの経営努力も、売上の伸び悩みに埋没している。
 雇用面では、退職者の補充を見合わせることなどにより、実質的に人員減となっている企業が大半を占める。しかし一方で、質的な人材不足感は拭えず、恒常的に良質な人材を求めている現状がある。また、定年者の継続雇用を行う企業が増えている反面、新規雇用が減となっている。
 このような状況下、業界では、盆・年末の資金対応と共に、IT研修会を行った。流通団地では、団地内従業員の志気昂揚を目的にイベントを開催し好評を得た。


10.小売業
(1)  専門店は、売上高について軒並み減となっており、特に衣料品関係の大幅ダウンが目立つ。
 価格面、収益面では、横這い、若干の低下傾向にあり、雇用面では、正社員が減少しパート・アルバイトの活用が顕著となっている。
 また、新規事業分野への進出も目立っている。(バラ酒の製造販売、製材チップの特許取得など)
 このような状況下、業界では、専門家派遣事業の助成制度を活用したり、研修会の開催、集客のためのイベント開催などに取り組んだ。

(2)  共同店舗は、核店舗スーパーの倒産で共同店舗全体が閉店に追い込まれるケースがあり、全体的に厳しい経営状況であったといえる。
 また、売上高は、軒並みダウンとなっており、価格面では低価格競争に巻き込まれその対応に苦慮している。
 収益面でも、赤字経営の個店が増加しており、経費削減による対応も限界である。
 雇用面では、パート雇用にシフトしており、最低人数での対応が目立っている。また、新規採用においては、雇用側と求人側のニーズがかみ合わず、雇用のミスマッチが生じている。
 このような状況下、業界では、多様化する消費者ニーズに対応するために、店舗全体の新たな業態開発への取り組みなどを積極的に推進した。

(3)  市街地の商店街は、売上高について回復の兆しがなく、底辺での横這い状態といえる。価格面では、近年の価格破壊の影響で更に安さを求める消費動向から、最低限度の価格維持になっている。(特殊な物についてはこの限りでない)収益面では、低価格と売上減少で減収益となっている。
 郊外のロードサイド型商店街では、売上高について対前年比増となっている店舗もあるが、全体的に若干減となっている。また、業種によっては、かなりの落ち込みもみられる。価格面では低下傾向にあり、収益面では悪化している。雇用面では、パート・アルバイトの確保について問題がなく、人員数的に前年並みと安定している
 このような状況下、業界では、消費拡大のためのプレミアム商品券を販売(完売)したり、販促活動などに取り組んだ。


11.サービス業
(1)  旅館業界は、上期について5月(行楽)、8月('04総体)を除き宿泊客が毎月対前年同月を5%〜10%下回っており、年間を通して参議院選挙、猛暑、台風の接近・上陸による県外観光宿泊客の予約取消などの要因から、大幅な売上減となった。
 価格面では、消費者の低価格志向、競争激化により、僅かであるが低下している。
 収益面では、宿泊客の減少、宿泊料金の低下、酒飲料の飲み放題・土産品などの買い控え、また施設管理費などの支出増により、収益力が悪化している。施設の廃業、休業が後を絶たない。
 雇用面では、新規採用がなく、退職などの欠員をパート採用で充当している。
 このような状況下、業界では、観光客誘致促進策として、山陰路キャンペーンの実施、外国人旅行者受入研修会開催などに取り組んだ。

(2)  自動車整備業界は、点検項目の削減などにより1台あたりの単価が減少したのに加え、価格競争による低価格での受注を余儀なくされ、売上高は、全体的に低下傾向で推移している。
 価格面では、1台あたりの整備単価の下落に加え、異業種を含めた業者間の価格競争が激しくなっており、車検・点検など総じて低価格基調で推移している。
 収益面では、悪化傾向にあり、収益力の企業間格差も顕著になってきている。
 雇用面では、様々な悪化要因が重なり合うことにより、厳しい状況となった。
 このような状況下、業界では、ユーザー対策としてマイカー点検教室の開催、また業界資質向上の一環として、自動車リサイクル法説明会の開催、更に各種調査による業界動向の把握などに積極的に取り組んだ。

(3)  情報機器ソフトウェア業界は、売上高について前年並み横這いで、やや低調であった。
 価格面では安値傾向に歯止めがかからない状況で、収益面は企業努力で原価低減を図ったが、横這い乃至やや悪化傾向となった。
 雇用面では、人員について採用意欲がみられ、現状維持またはやや増となった。
 業界動向として、新技術の習得に多大な経費がかかり、加えてその陳腐化も速いことから収益を圧迫する要因となっている。
 このような状況下、業界では、スキルアップのための研究会、戦略会計セミナーなどを開催して企業体質の強化を図った。

(4)  建築設計監理業界は、公共投資縮減のあおりを受けると共に、民間設備投資も低調に推移していることから、売上高は、減少傾向にある。
 価格面では、受注競争の激化から低価格基調にあり、収益面でも、悪化している。
 雇用面では、新規雇用がほとんどなく、雇用調整が見受けられる。
 業界動向として、市町村合併を控え若干の特需が期待できる。
 このような状況下、業界では、地元設計事務所への優先発注のための陳情、新事業への取り組みについての調査研究などを行った。


12.建設業
(1)  建設業界は、年明けに国道375号別府トンネル工事が発注されたが対前年比86.3%の低調な滑り出しとなり、2月に歴史民族博物館、3月に志津見ダム建設、その後5月以降益田川ダム本体建設、山陰道仏経山トンネル、益田道路万葉トンネルなどの大型工事を始め各種の工事が発注されたものの、公共事業縮減が進められる中、対前年比全体で件数△8.6%(△460件)、契約高△11.8%(△271億)と大幅な落ち込みとなった。
 価格面では、労務単価は4月に50職種平均で3.9%減の16,908円に改定され、建築資材については中国特需の影響で鋼材の価格が急騰し、6月に鉄筋やH型鋼の改訂が行われたが、コンクリート2次製品関係は市場の取引価格が生産単価を十分に反映しておらず、厳しい状況が続いている。
 収益面では、労務単価の切り下げに加え、受注量の減少、それに伴う競争の激化により、大きく落ち込んでいる。
 雇用面では、公共投資の削減により経営環境が悪化しているため、明るい見通しが持てない状況となっている。
 このような状況下、業界では、国の公共事業予算について業界中央団体や各県協会代表と共に、国土交通省などに対し、社会資本整備の現状、地方建設業の現状に配慮し、予算の削減を行わない旨の要望活動を展開した。また、地方6団体が提案した三位一体改革の補助事業見直し、廃止案に対しても強力な反対活動を行った。更に関係機関との意見交換会の実施、研修会、建設工事現場の見学会、道路清掃活動などの取り組みを積極的に行った。

(2)  舗装業界は、売上高は、対前年比3%減となっている。
 価格面では、変動がなかったものの、収益面では減少しており、雇用面でも新規雇用を控える動きが見受けられる。
 このような状況下、業界では、舗装技術向上のための研鑽に努めると共に、新工法の勉強会などを開催した。


13.運輸業
 売上高は、年間を通じて物流需要が低迷したが、秋口以降それまでの傾向を脱し改善の兆しがみられた。
 価格面では、以前のような取引先からの強引な値引要請がなくなってきており、値引をしているものの一応安定している。
 収益面では、収受料金が下落した状態において、燃料コストが春先以降連続して値上げされており、悪化傾向にある。
 雇用面では、秋口以降高齢者の一時的な再雇用がみられたが、新規採用までに至らなかった。
 このような状況下、業界では、高速道路通行料金別納制度の廃止に伴う新制度の創設について取り組み、成果を得た。また、燃料値上げの対抗手段として、共同購入事業の強化に努め、適正価格での安定供給に努めた。


U 業種別平成16年の景況予測
1.食料品製造業
(1)  豆富業界は、中小スーパーや小売店の経営難のあおりを受け、廃業が多くなるなど一段と厳しい状況になると予想される。

(2)  醤油業界は、原材料など原価コスト上昇の中、製品価格の値上げが望めず、景況が更に悪化するものと推測される。一方で、醤油関連調味料の開発など新製品の取り組みが進み、現状打破のきっかけになればと期待している。

(3)  水産練製品業界は、原料コストの上昇が日本の需給でなく世界の白身魚の需給に左右されているため、今後の景況について期待感が乏しい。コストを製品にいかに吸収するかが重要なポイントになる。


2.繊維・同製品製造業
 縫製業界の景気動向は、基本的に国内全般の景気動向に左右されることに間違いないが、昨年、一昨年と天候気象に影響を受ける要素が極めて強かったことから、先行きが不透明で予測が難しい状況にある。加えて、最近の円高について輸入を押し進める要因となっている反面、主たる対象国である中国の生産コストが高くなっていることがどの様に影響するのか、注意深く観察することが必要である。

3.木材・木製品製造業
(1)  合板業界は、景況が厳しいながらも堅調に推移すると期待される。(住宅着工数予想115万6000戸)しかし、全国的に針葉樹合板が増産気運にあり、需要と供給のバランスをいかにとっていくかが難しい課題となりそうである。

(2)  木材業界は、住宅ローン減税の縮小や増税・負担増など景気回復の隘路となる政策があり、木造住宅の需要回復が期待できず景況の好転につながらないと推察される。

(3)  家具業界は、景気の先行き不透明感、雇用不安など明るい材料がみあたらず、前年並みの状況が見込まれる。


4.出版・印刷業
 印刷業界においては、ペーパレス化による印刷物の減少、過度の価格競争激化などにより、一段と厳しい経営をしいられることが危惧される。


5.窯業・土石製品製造業
(1)  瓦業界は、景気悪化、可処分所得の減少が予想され、ローン減税の縮小なども併せ、大変厳しい経営状況になると懸念される。また、原材料、燃料代の高騰が収益面にも影響を及ぼすことが危惧される。

(2)  生コンクリート業界は、公共事業の減少と民需の低下で、需要が対前年比10%減と予測される。

(3)  コンクリート二次製品業界は、景況が益々悪化し好転の兆しが見出せない。


6.鉄鋼・機械製造業
(1)  鉄鋼業界は、依然として下請体質であり、発注企業からのコストダウン要請や県外企業との競争激化により、厳しい経営環境におかれるものと推測される。

(2)  一般機械器具製造業界は、依然先行き不透明であるが、プレス金型製作等が好調を維持しており、全体的に昨年より悪くなく、年度後半を期待する向きがある。大手高炉のコストについて輸入原料炭・鉄鉱石と共に今後の値上がりが予想されており、日本鉄鋼業への大幅なコストアップにつながり、今後に悪い影響を与えかねないか憂慮される。

(3)  鋳物関連業界は、元来の下請体質が収益面での課題となっており、加えて公共投資削減、円高傾向などから、依然厳しい経営状況が続くものと予想される。


7.電気機械器具製造業
 民間設備投資の減少、またペイオフも控えており、要因によっては減速幅が大きくなることが予測される。


8.畳製造業
 新築住宅やリフォーム時の畳離れなどから、一層厳しい経営環境におかれると予測される。


9.卸売業
 景気回復を実感できる状況になく、経営環境は益々厳しさを増しており、特に建築関連資材を取り扱う企業に至っては、公共工事の大幅削減から予断を許さない情勢にある。また、納入先である中小企業の経営状況が厳しい現状において、景況の好転は期待できない。


10.小売業
(1)  専門店は、県内全体が好況にほど遠いマイナス要因がひしめき合う現状の中で、依然厳しい経営が続くと予想される。

(2)  共同店舗は、大型量販店の出店に加え、消費の回復が万全でない現況下において、厳しい経営をしいられるのではないかと憂慮される。

(3)  商店街は、好転に転ずる材料がみあたらず、現状維持が当面の目標となるであろう。また、業種間で大幅な格差が生じる可能性を否定できない。


11.サービス業
(1)  旅館業界は、3月開幕された愛知での「愛・地球博」、増税などにより、県内外の団体客、個人客が大きく減少すると予測される。

(2)  自動車整備業界は、自動車保有台数の微増、買換年数の長期化などにより、整備業に対する依存度は変わらないが、むしろ厳しい経営環境が続くものと予測される。

(3)  情報機器ソフトウェア業界は、地元市場を受注先としている企業について経営難が予想される。しかし、都会地の下請をしている企業は、逆に受注の増加が見込まれる。

(4)  建築設計監理業界は、公共事業の更なる縮減が予測されることから、経営環境が一段と厳しくなるものと危惧される。また、一部には、任意整理の状況も予測される。

12.建設業
(1)  建設業界は、国の公共投資関係予算が3%強の削減に加え、県の公共事業費が対前年比15%の大幅削減となるため、一層厳しい景況が予測される。また、合併による新松江市においては、直後の数ヶ月間公共事業の発注件数が余り期待できず、地元事業者の厳しい経営状況が予想される。以上により、地域間格差が避けられないため、県内企業への優先策について一層の配慮が望まれる。

(2)  舗装業界では、前年対比10%程度の受注減を予測している。

13.運輸業
 県内での運送需要増は期待できない状況にある。情報交流システムの導入を図り、好況地域での需要に対応できる組織を活用した販路開拓を進める必要がある。


V 中央会、行政庁への要望事項
1.金融・税制支援関係
(1)  金融面において、制度資金及び保証協会の更なる支援を要望する。
 【鉄鋼・機械製造業界】

(2)  借入金利などの税負担の軽減を要望する。
 【鉄鋼・機械製造業界】

(3)  施策、税制等につき一層の支援を要望する。
 【鉄鋼・機械製造業界】

(4)  高度化資金の既往借入分の金利引き下げを強く要望する。尚、制度上引き下げが難しいのであれば、利子補給制度などの創設を検討されるよう要望する。(団地初年度及び次年度進出企業において、高度化制度の改正があったため異なる金利の適用となっている)
 【卸売業界】

(5)  高度化資金借入において、借入金全額繰上償還済み団地脱退組合員の連帯保証の早期解除を要望する。
 【卸売業界】

(6)  入湯税の廃止を要望する。
 【旅館業界】


2.公共事業関係、その他
(1)  県内産大豆の収穫などの発表が未だなく、今年度の生産目標を立てることができない。関係機関・部署の善処を求める。
 【食料品製造業界】

(2)  外国人技能実習生在留期間を延長する施策を要望する。
 【縫製業界】

(3)  工場の環境対策(煤煙など)に対する研究の取り組み及び助成支援を要望する。
 【木材・木製品製造業界】

(4)  IT化への支援を要望する。(高速通信網の整備など)
 【木材・木製品製造業界】

(5)  地場産材及び製品の需要拡大支援策を要望する。
 【木材・木製品製造業界】

(6)  地場企業を優先する発注、助成、支援を要望する。
 【出版・印刷業界】

(7)  個人情報保護法、知的財産権、電子入札制度に対する業界支援を要望する。
 【出版・印刷業界】

(8)  県内公共工事については、県内産のコンクリート製品を最優先で利用することを要望する。
 【窯業・土石製品製造業界】

(9)  災害に強いコンクリートによる社会資本の着実な整備を要望する。
 【窯業・土石製品製造業界】

(10)  県内産資材の優先利用の徹底を要望する。
 【窯業・土石製品製造業界】

(11)  中小企業の育成強化、情報提供、補助事業等、引き続き中小企業を力づける施策の強化を要望する。
 【鉄鋼・機械製造業界】

(12)  雇用をめぐる労働条件の緩和、官の効率化(人員削減)、国の総合的方向性の明確化を要望する。
 【鉄鋼・機械製造業界】

(13)  産廃税の使途につき主たる納税者である鋳物業界の産業廃棄物再生利用の研究などのために使っていただくことを要望する。
 【鉄鋼・機械製造業界】

(14)  廃砂を土木資材にリサイクルするなど再生利用可能なものについては、積極的に採用していただくことを要望する。
 【鉄鋼・機械製造業界】

(15)  観光客の集客力アップを図るために、高速道路の早期実現化を要望する。
 【小売業界】

(16)  無秩序な大型店出店計画を抑制する施策を要望する。
 【小売業界】

(17)  公営宿泊施設の早期廃止を要望する。
 【旅館業界】

(18)  個人消費の回復施策の検討を要望する。
 【自動車整備業界】

(19)  長崎県庁で実施された部分発注を検討していだくよう要望する。(合併に伴う受注について、現状では大手IT企業に発注され、地元企業は受注機会がない)
 【情報機器ソフトウェア業界】

(20)  事業量の確保、地元設計事務所への優先発注を要望する。
 【建築設計監理業界】

(21)  不良不適格業者の排除対策及び入札契約制度の改善を要望する。
 【建設業界】

(22)  公共事業の増額を要望する。
 【建設業界】

(23)  高速道路通行料金の中小企業向け新制度の創設について、まだ決まっていない首都及び阪神両公団の制度創設がなされるよう関係機関等の支援を要望する。
 【運輸業界】