は じ め に

 近年、中小企業を取り巻く経済環境は、デフレ経済の中で、個人消費の不振、海外製品との競合、単価の引き下げ、資金繰り悪化による設備投資の減少、雇用情勢の悪化等、厳しい状況が続いており、中小企業は疲弊を極めている状況にあります。
 特に島根県にあっては、影響の大きい公共投資の削減もあり、将来の展望が拓けない厳しい状況下におかれていると思っております。
 今年の島根県の中小企業の状況について、情報連絡員の報告をみましても、製造業、非製造業とも対前年比でみますと、全体的には売上は不変あるいは減少傾向にあり、厳しい状況が続いているとの報告がほとんどでした。
 我国全体の景気は、一部には回復しつつあると言われているものの、本県の中小企業にあっては、景気回復の兆しを実感できない業界が大部分であることをこの報告は物語っていると思います。たしかに、一部の業界においては、秋頃から受注状況が好転している様ですが、価格面は依然として厳しい状況で、なかなか利益増に結びついていない様に見受けられます。
 又、県内の雇用について見ましても、大きな役割を果たしています県内中小企業の状況が厳しいため、有効求人倍率等もなかなか改善しない状況にありますが、殊に今年は、新規高卒予定者の県内求人が激減しており、県内就職を希望している若者が、やむを得ず県外に就職せざるを得ない状況にあり、本県の将来を考えた時、憂慮すべき事態と言わざるを得ません。
 さて、この調査は、製造業、建設業、運輸業、卸・小売業(飲食店を除く)、サービス業(娯楽・医療を除く)を対象に県下600事業所を対象に調査を行い、418事業所から回答をいただきました。内容としては、規模別、産業別、更に経営状況、労働時間、雇用調整、賞与、人材、育児・介護休業制度、新規学卒者の採用状況、賃金改定実施状況等と広範、詳細にわたり調査を行っており、今後の労務管理に役立てていただけるものと思っております。
 本県における景気は早期に好転するとは思われませんので、日夜コスト削減、経営革新や新事業展開への取組みの強化等、血のにじむ様な経営努力で頑張っていかざるを得ないという厳しい状況が当分続くものと思われますが、そういう中においても、適正な労務管理について万全を期していただきたく、本書をそのための参考に供していただければ幸甚に存じます。


  平成15年12月
島根県中小企業団体中央会  
会長 今岡 嘉久三