は じ め に

 昨年は、デフレ経済に追いまくられた1年であった。
 年が明けても、厚い雲に覆われた重苦しい景況が続いており、関係機関の調査でも売上高は減収見込みであるが、経常利益は辛うじて増益見込みを保っているようである。しかし、全国に比べてかなり低い。
 当中央会の景況調査員の報告で見ても、従来の景況感は全国に比べてかなり良い方であったが、最近は全国と同様に悪化しており、特に業種によっては悪いものも出るようになっている。
 雇用について、有効求人倍率等は従前はかなり全国平均より良かったものが、最近は全国平均に近づき深刻になりつつあり、殊に学卒の県内求人が激減し、求職が目立って難しくなっているのは、将来の地域振興の懸念材料となっている。
 この調査は、県内の事業所の内401社、内製造業218社、非製造業183社のサンプルであり、この結果を全国と比較するとともに、1〜9人、10〜29人、30〜99人、100〜300人の規模別、そして製造業、非製造業の産業別、更には業種別に分類して調査分析した労働実態調査としては、あまり例がない緻密なものと思うので、十分活用して頂きたい。
 内容としても、経営状況から労務管理の面で労働時間、雇用調整、ワークシェアリング、派遣労働者・パートタイム労働者の活用、退職金制度、従業員の職務、能力、業績等の賃金への反映、新規学卒者の採用充足状況、更には賃金改定状況等を調査したものであるので、本書を参考として労務管理に万全を期して頂きたい。
 現在、経済では市場主義で競争原理が貫かれているが、特に中小企業では、これを実現するためには、経営者、従業員が一体となり進む全員経営が必要であり、それは機関車先導型の従来の経営者主導の労務管理ではなく、機関車や客車が自らのエンジンで走る新幹線方式の経営者、従業員一体の労務管理方式でなければならないというのが私の持論である。
 本書をこれを行うための参考に供していただければ幸甚である。


  平成15年3月
島根県中小企業団体中央会  
会長 古瀬  禦