平成22年県内企業の景況を振り返って

-情報連絡員年間報告-
平成22年1月~平成22年12月

まえがき

 当会では、県内中小企業の動向、問題点、要望を迅速かつ的確に把握すべく、中小企業団体情報連絡員制度を昭和49年に発足させ、地域別、業種別に勘案して30名の委員を委嘱し、毎月、情報の提供をお願いいたしているところです。
 この制度を活用して、四半期景況調査や円高・資金繰り円滑化などの緊急調査にも対応するなど、ここで集められた業界の動向、要望などについては、適宜関係機関に報告し、また当会としてもそれらを基に組織化支援をはじめとする関連事業に活用させていただいています。
 情報連絡員制度は、当会が中小企業及び業界との接点になり、多方面との円滑な交流を図る役割を担っており、今後益々その必要性が高くなっていくものと存じます。
 皆様方におかれましても、この趣旨について十分にご理解を賜り、一層のご協力をお願い申し上げる次第です。

 平成23年3月

島根県中小企業団体中央会 
 会長 杉 谷 雅 祥 

目次

平成22年情報連絡員報告総括

1 業種別平成22年の状況

2 業種別平成23年の景況予測

3 中央会・行政庁への要望事項

4 その他資料

平成22年情報連絡員報告総括

 国内経済をみると、大手シンクタンクによれば、年前半は欧州経済の先行き不透明感など懸念されたが、新興国を中心とした活発な経済活動を背景に輸出が堅調に推移したのに加え、在庫調整が概ね完了したこともあり、緩やかな回復傾向にあった。しかし、年後半に至っては、政府の耐久消費財購入支援策の相次ぐ終了・縮小が個人消費を弱らせ、また、海外経済の回復テンポの鈍化する中、輸出が勢いを欠き、これらが生産拡大や雇用環境改善などに作用し、経済活動に影響を及ぼす格好となった。
 島根県の経済をみると、「過去5年間の倒産件数・負債総額」は、平成22年負債総額193.6億円・倒産件数46件となっており、負債総額が平成21年(平成21年:負債総額150億円・倒産件数54件)と比べ増加となった。「平成22年業種別倒産件数」では、全件数の内、建設業が昨年に引き続き30%余りを占め、次いで製造業・小売業、サービス業の順となっている。「発注者別公共工事請負金額推移」をみると、総額で平成22年(請負金額:174,367百万円)は平成21年(請負金額:201,701百万円)に比べ約14%減となった。発注者別の平成22年請負金額の昨年対比内訳割合では、国(約48%減)が大幅削減となっており、島根県は微減、市町村(約13%増)は積み増しとなっている。「新設住宅着工数」は、平成元年以降、平成8年(島根県:7,070戸、全国1,643,266戸)をピークに大幅減少傾向にあり、平成22年の島根県の着工数は過去最低の水準となった。(島根県:2,463戸、全国:813,126戸)「労働需給状況(求人倍率)」では、平成22年島根県新規1.23、有効0.71(全国新規:0.90・有効:0.52)で、平成21年(島根県新規:1.13・有効:0.61、全国新規:0.79・有効0.47)と比べ僅かながら改善傾向にある。また、「島根県常用労働者雇用指数」をみると、平成17年を100とした場合、平成21年に引き続き平成22年は建設業が大幅減少傾向にある。(5人以上:81.9、30人以上:68.6)「大型小売店販売額(百貨店+スーパー)」は、平成17年島根県659億円に対し平成22年は島根県584億円と約11%減となっている。(全国:平成17年213,283億円・平成22年193,790億円・約9%減)「勤労者世帯家計消費支出」をみると、平成22年は対前年に比べ若干持ち直したものの、過去5年間減少傾向にある。(平成17年:松江352,862円、平成22年:松江309,278円)
 情報連絡員報告の年間関係業界全体の「売上高・収益状況・景況」の推移をみると、製造業は2年前の大幅な悪化状況と比べると回復基調にあるが(売上高/平成21年1月DI値:△94.1ポイント、平成22年12月DI値17.6ポイント)、「収益状況」については「売上高」に比べ復帰への動きが鈍い。(収益状況/平成22年1月DI値:1月△41.2ポイント、12月△17.6ポイント)非製造業においても、製造業と同様に「売上高」は改善状況にあるが(売上高/平成21年1月DI値:△61.5ポイント、平成22年12月DI値15.4ポイント)、「収益状況」は「売上高」に比べ回復が遅れている。(収益状況/平成22年1月DI値:1月△61.5ポイント、12月△23.1ポイント)
 情報連絡員報告の年間業種別報告をみると、食料品製造業において、菓子業界は依然売上高が減少傾向で、県外への販路拡大も伸び悩んでおり、小豆・重油の仕入コスト増が価格に転嫁できず、収益状況の悪化を招いている。醤油業界では、食生活の多様化などから醤油全体の消費量が低迷、低価格志向もあいまって、売上・収益共に厳しさを増しており、加工原料の仕入で製造工数を調整するが、容器の小型化で手間がかかり製造負担は変わらない。水産練製品業界は、この夏の猛暑により出荷数量が減少し売上に影響を及ぼしており、収益面でも厳しい状況にある。
繊維・同製品製造業では、売上・価格共に例年並みの範囲であるが、受注単価が低水準のため収益状況は厳しく、一部企業においては雇用調整助成金を活用した。
 木材・木製品製造業において、合板業界は売上面で厳しい状況にあるものの、価格の持ち直し、原材料の転換、固定費の削減努力等により、年後半から収益性の改善がみられる。木材業界では、県内の新設住宅着工において、年後半に木造住宅の戸数が大きく伸びたが、前々年と比べると戸数は大きく割り込んでおり、木材需要は従前通り停滞感を拭えない。また、売上単価は前年より低下し、採算性は厳しい現況にある。家具業界は、販売価格が昨年より更に下がり減収減益で、低価格大型量販店の台頭と共に、中小小売店の店舗数は著減し、販売額の減少が猶予できない状況である。
 出版・印刷業では、製品単価の低下・上昇難に加え、同業他社との競争激化が販売価格の下落傾向を助長させる格好となり、収益及び資金繰りの悪化が顕在化し、厳しい経営を余儀なくさせられている。
 窯業・土石製品製造業において、瓦業界は、住宅市場の持ち直し、島根県の石州瓦使用助成制度を背景に、平成22年の出荷枚数がほぼ前年並みで(前年比0.5%減・6,495万枚)、6年連続の前年実績割れであるものの下げ幅は大幅に縮小した。(出荷枚数:平成16年・1億4,459万枚)生コンクリート業界では、地域別の出荷量にバラツキがあり、結果、県下全域の合計出荷実績が対前年比88%と割り込み、減少傾向が続いている。生産規模の適正化、集約化の取り組みに反して、収益は悪化した。コンクリート製品業界は、売上高が対前年比80%で、販売価格に大きな変動がみられず、雇用の過剰感が否めない。
 鉄鋼・金属製造業において、鉄鋼業界では、年前半の景気回復に伴い生産量も挽回傾向にあったが、対前々年比70%~80%程度の売上水準で、雇用の拡大につながっていない。価格は、コスト削減要求が厳しく、下落傾向であった。素材、一般機械関連の中小企業が集積する安来地区では、年前半の自動車、エレクトロニクス関連などの受注に支えられ好調であったが、年後半の景気減速により下振れとなった。急激な円高の進行は、国内外の顧客からの値下げ圧力になっている。鋳物業界は、売上高が対前年比15%増となり、前々年比75%程度まで取り戻した。雇用調整金の利用頻度が減っており、操業度が上昇しているが、雇用の維持が難しい状況にある。
 金属加工機械製造業では、円高の影響で国内の販売不振が顕著である一方、輸出比率が高まり、売上高が対前年比44%増となったが、収益面で厳しい状況が続いている。雇用調整金を活用しているが、短納期発注に対応するため残業対応を行っている。
 自動車部品・付属品製造業は、売上高がリーマンショック以前に戻ったが、円高株安、エコカー減税等の動向に左右される現状があり、材料費等の上昇が収益状況の回復を妨げている。
 畳製造業では、畳表・副資材の若干の価格改訂(値上)があったが、売上・収益共に減少した。業界では、廃業により事業者数が減となったが、共同購入・研修事業を積極的に展開し活性化に努めた。
 卸売業において、県東部は、売上高が好転したとする企業が対前年比増となり、収益状況も「悪化」から「不変」に転じた企業が多い。価格面では、「不変」「低下」とする企業が大半で、前々年と比べ企業数が増加しており、デフレ傾向が感じられる。県西部では、猛暑により缶飲料・冷菓の売上げが順調であったが、全体的な景況が低調で、収益も悪化した。雇用面では、人員の自然減をパート採用で補っている。
 小売業において、共同店舗では、売上が伸び悩む店舗がある一方で、堅調な推移を示す店舗もあり、二極分化の動きがある。販売価格は、異常気象により農水産物の市場価格が高騰した。また、消費者の低価格志向が一段と高まる気配がある。石油業界は、販売数量の落ち込みにより売上が10%程度減と予測され、廉売競争の激化により厳しい収益状況で、合わせて地下タンクの規制強化による多額の設備投資負担が懸念材料となっている。市街地の商店街では、長期的な売上減少が続いており、低価格品が売れるため客単価、利益率共に落ちている。郊外型のロードサイド型商店街では、売上が減少傾向にあり(3年前に比べ10%減)、同業者間の価格競争も熾烈で、収益性が悪化している。毎年12月に販売する恒例のプレミアム商品券は、割増率を今年度5%に下げたこともあり、販売数量が対前年比30%減となった。
 サービス業において、旅館業界は、宿泊客数が前年の大幅な落ち込みから回復基調にあるが、数年前の水準にはまだ追いついていない。ゲゲゲブームの中で、全体への波及効果はもう一息であった。宿泊単価は二極化しており、低価格志向は依然根強い。自動車整備業界では、他社との競合激化から安価で推移しており、売上高・収益状況の悪化がみられる。一部で2年先食いしたともいわれる新車販売台数も、エコカー補助金終了後は対前年比実績を下回っている。情報サービス業界は、Rubyや自治体のIT投資が追い風となり地元が伸びており、収益性も向上しているが、販売価格は下落傾向にある。ビルメンテナンス業界では、売上高が長期低落傾向で対前年比約10%減となっており、低価格競争のあおりを受け、際限ない市価下落の動きが懸念される。品質担保の限界点に達している。
 建設業において、総合工事では、国の公共工事予算が大幅削減となっている一方で、県は相次ぐ補正予算処置により前年並みとなった。収益状況は、競争激化により厳しさを抜け切れておらず、全体で営業損失を計上する企業が48%、債務超過企業が22%となっている。電気工事は、酷暑が省エネ工事に好影響を及ぼし、空調機器が不足する状況で、公共団体のエコ改修も受注量が増加した。また、利益よりも仕事量の確保を優先する状況がある。電気・機械・通信・信号機分野は、公共からの受注があり利潤を保つことができた。
 運輸業では、景気回復に伴い売上も僅かながら上昇を示してきたが、秋口からの全国的な荷動きの鈍化や輸送コスト増が相まって、収益の改善について限定的である。運賃デフレにより単価が低く抑えられ、過当競争が加わり、値下げ圧力の高まりが危惧される。また、長引く需要の低迷が休車・減車を招き、突発的な受注に対して対応が難しい現状がある。更に長距離運行については、復路荷物不足の常態化で、帰り荷確保のために現地での追加宿泊が已むを得ない場合もあるなど、利益率の悪化から撤退する事業者が増えている。
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平成22年中小企業団体情報連絡員年間報告

1 業種別平成22年の状況

平成21・22年関係業界全体の売上高・収益状況・景況の推移(前年同月比DI値)

1.食料品製造業

(1)菓子製造業
 菓子業界を見ると、売上高の面では、減少が続いている。出雲大社や八重垣神社へは縁結び、パワースポットブームから若い女性客は多いが土産品の売上には結びつかない。
 県外での販路拡大を目指しているが、県外も競争が激しく、消費も節約志向の高まりから売れない状態が続いているため、参入が難しい。
 価格の面では、従来品は小豆・重油の値上げがあるが、価格に転嫁できない。新製品を開発しても他社の類似商品と比較すると、採算の取れる価格にできない。
 収益の面では、原材料等の値上がりがあるが、製品に転嫁できない。取引先からは、納入価格の値下げ要請もあり悪化した。
 操業度の面では、商品の売れ行きが悪くなっている分製造高も減り、悪化した。
 雇用の面では、操業度が低下するのでなかなか新規に採用できない。雇用・定年延長で新規採用ができない。
 このような状況の下、業界では食品表示の問題について対応を行っている。

(2)醤油製造業
 醤油業界では、売上高を見ると、食生活の多様化、調味料の多種類化、食塩の健康上の問題で主力醤油の消費量が減少している。それにより付加価値の高い調味液を開発、商品化を進めている。しかしコスト高でもあり、大手メーカー品との競合で苦戦している。以上の点から売上高は減少傾向であった。
 価格の面では、全体的には安定している。しかし大型量販店では過度の廉売が行われているとの情報もあり、品質面でイメージダウンに繋がりかねないので困惑している。
 収益の面では、消費量の減少と低価格志向もあり収益は横這いか悪化傾向である。
 操業度の面では、機械設備の更新が困難なため購入生揚による製造方式にする傾向で製造負担が少なくなる。しかし容器が小型化しているため人手がかかり、操業度に大きな変化は無い。
 雇用の面では、2~3の工場で増員が行われているが、他は退職者の補充程度で県内業界の就労人員に変わりはない。
 このような状況の下、業界では小学生を中心に醤油工場の見学会を各地区で行い、醤油に対する関心を深めるPR活動を行った。また、上部団体企画の「ふるさとのしょうゆプレゼントキャンペーン」に参加し、島根県産醤油を希望された方に抽選で、県内企業が製造した醤油をプレゼントするPR活動を行った。

(3)水産練製品製造業
 水産練製品業界は、売上高の面では、7月中旬から9月末までの猛暑で出荷数量が減少した。
 価格の面では、原料価格、製品価格とも横這い。ただし、県外の大手には大量生産による安売りが見られる。
 収益の面では、夏場のマイナスを取り返せるかどうか非常に厳しいところである。
 操業度の面では、秋から冬場にかけて稼働もアップ。しかし、年間で見ると厳しい。
 雇用の面では、現状維持である。

2.繊維・同製品製造業

 繊維・同製品業界では、売上高の面では、1月、2月は低迷していたが春夏にかけ挽回が見られた。10月に受注が減少し昨年より20%減少するも、11月・12月は受注が増えた。
 価格の面では、年間を通じて横這いかやや低迷した。15年くらい前までは工賃は10分の1ぐらいといわれていたが、製品の値段が決まってから逆算で計算されるので、工賃が安くなり、業界として価格決定権がない状態である。
 収益の面では、前年同期と比べやや低下した。受注単価が低水準である為、収益状況は厳しい。
 操業度の面では、6~8月は上昇するも、9月末から10月中頃にかけて、受注が少なく生産調整を行った。
 雇用の面では、現状維持の状態であり、人員削減とまではいかないが補充程度である。求人募集をしても応募は少ない。
 このような状況の下、一部企業では雇用調整助成金を活用した。

3.木材・木製品製造業

(1)合板製造業
 合板業界では、売上高を見ると、厳しい状況の中にも、住宅着工数が多少増加した事もあり、対前年比10%増加となった。住宅着工数を見ると、平成20年では109万戸だったのが平成21年には79万戸、平成22年には82万戸となった。
 価格の面では、多少持ち直し、平均単価は平成21年比2%増となった。
 収益の面では、価格の持ち直しと共に原材料の転換、固定費の削減努力により下半期より利益が確保できる様になった。ただ一部水面下で苦戦している工場もある。
 操業度の面では、ほぼ通常の稼働率に戻った。
 雇用の面では、今年に入ってからも新規採用を行っているが、従業員数は減少しており、就業者数は前年比横這いとなった。
 このような状況の下、業界では木材産業高度化、林業再生事業を継続して行った。その他に国産材(地域材)利用拡大に努める需要拡大策の推進、高付加価値商品の研究・開発を行った。また、平成21年1月よりロシア原木の関税が引き上げられるということで国内合板メーカーは原材料を大きく転換してきたが、結局平成23年1月になっても実施延期となった。結果として国産材の利用促進が加速された。

(2)製材業
 木材業界は、県内の新設住宅着工戸数は、上期は総数が対前年比86%と大きく減少したが、木造住宅は対前年比98%と落ち込みが僅かであった。下期の7~10月は総数、木造とも対前年比123%と前年より大きく伸びており、1~10月の合計でも総数で101%、木造で108%と前年を上回った。しかし、平成20年と比べると1~10月計で木造は85%と大きく減っており、木造需要は依然として停滞している。こうしたことから、売上高が下期に前年より増えたとするところが多いが、業況の水準としては十分ではない状況である。また、住宅着工戸数の増減は、地域別に偏りがあり、木材需要の増減にも偏りがある。(松江市、出雲市、大田市、東出雲町、斐川町は増えた。)
 価格の面では、木材価格(原木)は、平成20年よりは下がっているが、前年より上昇している。木材製品価格は、平成20年と比べると下がっており、前年と比べても僅かに下がっている。こうした状況を受けて、木材需要の停滞を反映して売上単価が前年より低下したとするところが多い。
 収益の面では、木材需要及び単価等を反映して採算性は悪く、採算が1~3月期及び7~9月期では前年より悪化したとするところが多く、4~6月期、10~12月期で前年並みとするところが多い。
 操業度の面では、概して前年並みとするところが多かった。
 雇用の面では、4~6月期、7~9月期に従業員を減らしたとするところ、概して前年どおりとするところが多かった。
 このような状況の下、業界では木材需要拡大対策について、県や林野庁、国会議員、県会議員等と意見交換を行うとともに、施策の充実について陳情を行った。その他に「県産木材を生かした木造住宅づくり支援事業」の継続実施、「公共建築物等における木材利用促進法」に基づく取組の実施等を行った。

(3)家具製造業
 家具業界を見ると、大型チェーン店は出店により増加。既存大型店舗、その他店舗は軒並み減少した。住宅事情の変化や婚礼家具などの儀式的習慣が無くなったこと、そして全国の新築住宅着工件数が3年前に比べ60%~70%に落ち込んだことに加え、リーマンショックなど世界規模の不況の波により、耐久消費財である家具業界は大変厳しい状況にある。大手チェーン店の取扱商品は、プライベートブランドとして、ほぼ100%海外へ生産委託しているため、国内メーカーの生産額も中小小売店の販売額減少とともに、下がってきている。
 価格の面では、昨年よりさらに単価が下がっており、客単価は35,000円~40,000円となっている。特に季節商品(学習机)の単価は毎年下がってきている。
 収益の面では、減収減益となっている。
 雇用の面では、既存店舗においては人員削減又は補充程度の採用を行っている。木製家具製造業の事業所数は、10年前に比べ約半分にまで落ち込んでおり、小売店に関しては一部の低価格大手チェーン店が勢いよく店舗数を増やす半面、中小の小売店は益々店舗数が淘汰され販売額の減少が進んでいる。
 このような状況の下、業界では円高還元セールを実施した。

4.出版・印刷業

 出版・印刷業界では、売上高は減少となった。主な要因として、販売不振・受注の減少、同業他社との競争激化、製品(加工)単価の低下・上昇難が挙げられる。
 価格の面では、半数以上の事業所において販売価格が低下しており、下落の主な要因として、製品(加工)単価の低下・上昇難に加え、同業他社との競争激化が低価格路線に拍車を掛けている。
 収益の面では、状況は悪化している。憂慮すべき事態であり、約3分の1の事業所で資金繰りが悪化している。
 操業度の面では、事業所において低下が不変を若干上回っている。設備操業度の低下は、売上高減少(販売不振・受注の減少等)に連動するものであり、設備投資への回収が遅れ、コスト負担増に繋がる。
 雇用の面では、就業人員(常勤役員+従業員+パート等)は既に大半の事業所で合理化を図るため、人員の削減が行われており、当面、現状で推移するものと思われるが、景気の回復が遅れれば、更に減少することが予想される。平成23年の採用計画は「計画なし」とした事業所が多かった。
 このような状況の下、2年に1度の全国大会が岐阜市で開催され、講演は業態変革に取り組んでいる中小印刷業界にとって、極めてタイムリーな内容であった。その他島根県デザインセミナーを開催した。また、「官公需問題懇談会」を開催し、当組合からの要望事項と県からの回答のまとめについて、今後の話し合いを続けることとなり、大変意義のある懇談会となった。

5.窯業・土石製品製造業

(1)瓦製造業
 瓦業界を見ると、売上高(出荷枚数)の面では対前年比99.5%なった。減少が続く中、ほぼ前年並みを維持できた要因としては、新設住宅着工戸数、持家が低水準ながらも増加傾向に転じたこと、各種住宅施策によるリフォーム需要増などに起因する。県内出荷についても、新設住宅着工戸数全体は減少したものの、持家に関してはやや増加した。
 価格の面では、平成21年後半並みか若干の下降傾向にある。
 収益の面では、燃料価格が前年に比べ高騰傾向にあり、特に平成22年後半以降不透明な状況にある。
 操業度の面では、対前年比97%となった。設備生産能力に対し操業度70%台と推定される。年間を通しての生産調整(休炉)期は、中小企業緊急雇用安定助成金制度を積極的に活用しており、平成22年1~2月には教育訓練事業(各月10日間コース)を実施した。
 雇用の面では、平成20年12月末452名、平成21年12月末398名、平成22年12月末では419名となった。平成22年8月1日に組合員企業と非組合員企業が合併し、社名変更をしたため非組合員29名分が増となった。
 このような状況の下、業界ではブランド戦略(開発営業力強化事業、集中広報事業、展示会事業)、新商品・新素材開発、規格外瓦用途開発、県内市場創出支援助成金事業を実施した。
 ロシア・ウラジオストック「島根ビジネスサポートセンター」、「日本建設・デザインセンター」への参画が功を奏し、スエズ運河経由の海路によるサンクトペテルブルクへ石州瓦出荷(平成22年6月)、国際見本市「バルチック建設週間」(平成22年9月)出展に進展した。 
 また、国土交通省中国地方整備局や堺・浜田両港で組織する「環日本海における物流高度化検討委員会」において、浜田港からシベリア鉄道経由でサンクトペテルブルクへの輸送形態の実現可能性を検証する「トライアル輸出(平成23年2月予定)」が決定した。
 その他に組合員企業がしまね地域資源産業活性化基金助成金交付事業の支援を受け研究開発に取り組んでいた「直火用瓦食器(耐熱瓦)」が実用化となり、県内外の飲食店で採用された。別の組合員企業では、世界遺産石見銀山大森の町との連携による「(石州瓦づくりの)産業観光」への取組を開始した。

(2)生コンクリート製造業
 生コンクリ-ト業界を見ると、売上高の面では、平成22年の大型工事物件としては、松江第五大橋道路、松江赤十字病院、尾道松江道路、仁摩温泉津道路、浜田三隅道路、ごみ処理施設の建設工事等があった。地域別に出荷量をみると石東は5%、益田は22%増となったものの、松江・出雲・雲南は10%以上、隠岐は30%以上の大幅な減となった。結局、県下全域の合計出荷実績は、対前年比88%となった。図のように需要は、災害特需により平成12年以降7年振りに一時的に下げ止まった平成19年を除き、減少傾向が続いている。
 価格の面では、販売価格については、セメント・骨材・混和剤の価格上昇がなかったことから、横這いであった。
 収益の面では、公共事業の削減により需要が削減した松江、出雲、雲南、隠岐及び浜田地区では、合理化に努めたものの売上高は減少し、収益は悪化した。
 操業度の面では、需要の増加した石東・益田地区と、需要が減少したものの工場の集約化を実施した浜田地区では上昇した。松江・出雲・雲南及び隠岐地区では、公共事業の減少等で低下した。
 雇用の面では、雇用人員は出荷量の減少地区で減少した。
 このような状況の下、業界では前年に引き続き生産規模の適正化、生産性のため工場の集約化を実施又は推進中である。また、産官学体制による全国統一品質管理監査を実施して、生コンの品質確保向上に努めた。その他に、経営者・社員研修、技術関係有資格者の養成に努めた他、建設関係技術者を対象としたコンクリート舗装技術セミナー、県市町の職員を対象とした土木技術講習会を開催した。

(3)コンクリート製品製造業
 コンクリート二次製品業界は、売上高の面では対前年比80%であった。
 価格の面では、昨年と同等価格に推移している。県内製品の高品質PRに努力しており、県外製品のシェアは伸びておらず底堅い。そのため3年前と比べても価格は同じである。
 収益の面では、公共事業減少、民間工事減少で悪化の状況下にある。
 操業度の面では、対前年比70%~90%である。雇用の面では、過剰気味である。
 このような状況の下、業界では新製品開発に向けて、10月下旬に視察先にて勉強会を行った。

6.鉄鋼・金属製造業

(1)鉄鋼製造業
 鉄鋼業界をみると、売上高の面では年前半を中心に景気が緩やかに回復してきたこともあり、生産量も前年に比し回復傾向であったため、売上高も機械加工関連業種を主として持ち直しを見せたものの、平成20年の70%~80%前後の売上水準であった。
 価格の面を見ると、コストダウン要求等、受注環境は依然として厳しく、製品価格は下落傾向であった。
 収益の面では、生産量、売上高共に回復傾向であったが、コストダウン等、受注環境が厳しく、やや好転に止まった。
 操業度の面では、機械加工関連業種を主として、緩やかではあるが回復傾向であったが、鋼構造関連業種にあっては、新規物件等が少なく、横這い状況での推移であった。
 雇用の面では、生産量が回復傾向にあるものの十分とは言えず、各企業、雇用の維持に努めてはいるものの、先行き不透明であり減少傾向である。
 このような状況の下、業界では組合関連団体との共催による、各種講習会、研修会、見学会を実施し、製造面、技術面でのレベルアップや資格取得に繋がる教育を行った。また、共同受注活動による組合員企業への受注の確保を行った。

(2)安来地区で見ると、上期は、各国の景気刺激策等により自動車、エレクトロニクス関連、工具鋼などの受注が好調であったため、後半に入り多少減速感があったものの、予算を大幅に上回る結果となった。
 しかしながら、急激な円高の進行、原材料価格の高騰及び供給問題等のリスク要因が大きく、今後の先行きについては不透明感が高まっている。こうした経営環境の下、下期は受注が減少してきており、年度末における予算達成が難しくなりつつある。
 売上高の面では、上期は大幅増になるも、下期は減少に歯止めがかからない状況である。
 価格の面では、極度の円高により海外からの受注量が減少し、値下げを余儀なくされた。また、国内の顧客からは、経済新興国の現地購買水準に見合った価格への値下げのため、価格協力を要求されている。
 収益の面では、上期の収益を下期で食いつぶすことになりそうである。
 操業度の面では、平成21年のような一斉休業、帰休等もなく、安定した操業状態であった。
 雇用の面では、リーマンショック以降、減少傾向にあったが、再雇用者、派遣社員を採用し、雇用人員は増えつつある。
 このような状況の下、業界では、受注の増加に対し、雇用人員を増加した事業所もあるが、基本的には、社内での仕事量に偏りがあるため、配置転換で対応した事業所が多かった。

(3)鋳物製造業
 鋳物業界において、売上高の面では、3月より生産量、売上高とも前年同月を10~25%上回る状況が続き、年間トータルとして前年比15%増加となり平成20年の75%まで回復した。
 価格の面では、発注元よりのコストダウンの要求が依然厳しく価格は概ね下落傾向であった。
 収益の面では、生産量、売上高の回復傾向のなか企業間格差は見られるものの、収益面はやや好転した。
 操業度の面では、年前半は操業度の低下が続き多くの企業が中小企業緊急雇用安定助成金を申請したが、後半になり休業も少なくなってきている。緩やかではあるが操業度は上昇傾向となった。
 雇用の面においては、各企業では雇用の維持を努めているものの、経済の先行きに好転が見られない中、減少傾向が続いている。
 このような状況の下、業界では上部団体よりの各種情報の伝達、また関係団体と連携し技術の向上を目指した各種セミナーや、雇用安定助成金に係わる教育訓練の情報提供を行った。

7.金属加工機械製造業

 金属加工機械業界において売上高を見ると、昨年末の業界の予測が対前年比40%増加と出ていた。自社の実績は全く予想通りの対前年比44%の増加となった。売上の輸出比率は55%(中国・韓国がほとんどである)となった。
 価格の面では、円高で国内は海外の物を購入する傾向に(特にヨーロッパの機械)にあり国内はほとんど売れず、現状の円高ではどうにもならない。
 収益の面では、役員報酬・役員手当を30%カットした。雇用調整による金曜日の社外教育受講により休業手当と教育手当をもらい賃金カットなしで操業した。職場により数は多くはないが、短納期の為残業を行っている。賞与なしで今期かろうじて経常利益が出せるかどうかである。原価は上がっていないが売価は下がっている。
 操業度の面では、80%くらいであるが、短納期の為残業も許可している。ワークシェアリングができることなら良いが、職人の集まりではどうにもできない。
 雇用の面では、リストラなど現状では雇用に手をつけてはいない。
 このような状況の下、第25回日本国際見本市が10月28日~11月2日まで東京ビッグサイトで行われ、自社も出展したが、例年より出展企業、見学者が少なかったように思われる。

8.自動車部品・付属品製造業

 自動車部品・付属品業界において売上の面を見ると、景況は徐々に回復傾向にあり、リーマンショック以前に戻った。しかしながら、9月頃から円高株安、中国問題等の不安要素、エコカー減税等の影響が先行きを読めない状態となっている。
 収益の面では、材料等の値上があり、吸収できない状況もある。売上的には戻りつつあるが収益面は今ひとつであった。
 操業度の面では、徐々に忙しくなっている。
 雇用の面では、変動は無く、現状では過剰気味である。今後は新商品開発に着手する予定で、その具合によって人員が足りなくなる可能性がある。
 このような状況の下、業界では経費削減、労務賃引き下げ等を実施した。また、開発面の量産化に向けアイテムを増やし、設備投資を行った。

9.畳製造業

 畳業界において売上高の面では、対前年比8%減となった。一年を通して共同購入、共同受注事業とも減少した。
 価格の面では、畳表及び副資材について昨年より若干の値上げがあった。
 収益面では、年々減少している。
 雇用面では、組織している会員の減少が今期2名(廃業により退会)あり、新組合員加入が急務である。
 このような状況の下、業界では共同購入事業として春と秋の2回の展示即売会の開催、共同受注事業として年2回の一括購入事業の開催、研修事業として畳製作技能講習会の開催などを行った。

10.卸売業

(1)県東部では、売上高の面を見ると、平成22年度(4~12月)は、前年に比べ企業数が増加した。家電関係のエコポイントによる売上増加などが起因とみられる。同種の恩典も一段落したことから、第4四半期はその反動も予想される。通期では前年並みとなる公算が大きい。
 価格の面では、「不変」「低下」とする企業が大半であった。この2年は前年比上昇と回答した企業数は減少し不変・低下とした企業数が増加しており、デフレ傾向がみられる。条件面は、さほどの変化は見受けられない。
 収益の面では、昨年の「悪化」から「不変」に転じた先が多かった。
 雇用の面では、雇用人数は不変と回答した企業数が3分の2を占めている。ただし採用に当たっては退職者の補充程度で、増員するまでには至らなかった。
 このような状況の下、業界では教育情報事業として、組合員の経営者・中堅社員・女子社員のそれぞれを対象としたセミナーの開催(延べ5回)や、今年度新たに「応急手当講習」を行った。また組合員、青年部会で視察旅行を実施し組合員従業員のレベルアップを図った。
 また福利厚生事業として、親睦行事や各種レクリエーションを行った。

(2)県西部において売上高の面では、夏場の猛暑日により、缶飲料・冷菓の売上は好調であった。政府の景気浮揚対策(エコカー買い替え補助金、家電・住宅エコポイントなど)が充実した分、業界の消費は買い控えとなり、著しく減少した。
 価格の面では、若年層は低価格品の大量消費、シニア層は高品質を少量消費の傾向が顕著であった。仕入価格の上昇は落ち着いた。
 収益の面では、大型店との価格競争に勝てず小売店が激減したため、収益も悪化した。仕入れ先も統廃合が進み巨大化、これまでの取引条件がより厳しくなった。
 雇用の面では、自然減をパートタイマーで補い、雇用人員の変動は少なかった。配送など重労働部門を外注し、労働量を軽くして女性の雇用を増やしているところもあった。
 このような状況の下、業界では季節資金や緊急資金の転貸金融事業、委員会・全員協議会を開催しての意見交換会、各種親睦会の開催、県外商店街の視察研修旅行を行った。

11.小売業


(1)共同店舗
 共同店舗では、3月リニューアルオープン後、週末を中心に商圏が若干拡大した。全体で売上102.3%、客数99.6%で推移した。食品関連104.0%、衣料身の回り品99.8%で推移した。夏場の猛暑により、飲料・ビール、アイスクリーム、素麺等は需要が伸び、売上は年間を通して好調に推移した。エコポイント制度が消費者へ浸透し商品券の交換が多くなり、一時的な経済効果はあった。
 価格の面では、異常気象による農水産物の市場価格が高騰した。デフレ・円高が進み低価格志向がより高まっているように思料される。
 収益の面では、省エネ対策として空調設備・冷蔵ショーケース・照明設備の更新及び運用改善により光熱費が約30%(年間ベースで約800万円)削減できた。
 雇用の面では、ほぼ適正な人員体制で営業を行っているが、雇用対策として来年度の計画として新規採用を予定している。
 このような状況の下、業界では店舗リニューアル・特産市開設の実施を行った。環境省の省エネ対策支援事業(空調設備・冷蔵ショーケース・照明設備等更新)、経産省商店街活性化事業(特産市の開設)、島根県商業環境整備事業(多目的トイレ他設備の更新)等、補助事業を活用し、リニューアルを実現した。

(2)石油製品
 石油製品業界では、売上高の面を見ると、販売数量は近年減少傾向が続いており、本年も10%程度の減少が予想される。油種別ではA重油は10%強の増加が見込まれるものの、ガソリン・軽油をはじめ他の油種はすべて10%近くの減少が見込まれる。このため、マージン幅に大きな変動はないため売上高においても10%前後の減少が見込まれる。
 価格の面では、年明けから上昇傾向が続き、5~7月が最高値となった。その後は下降傾向が続いているが、月平均小売単価の変動は近年では少ない1年であった。9月末以降の原油上昇は円高差益分を上回り仕入れコストアップとなっているが、小売価格に転嫁されず販売業者のカブリとなっている。また、年末にかけて仕入れ価格が値上がりし、販売数量減にマージン減が重なり厳しい状況が続いている。小売価格への転嫁が必要な情勢にある。
 収益の面では、採算販売を謳ってはいるが廉売業者に引きずられ、低マージン状態から脱しきれない状況であった。地下タンクの規制強化を控え、40年以上の地下タンク保有者は多額な費用負担が避けられないが、現状では投資額の回収は困難な状況にあり、この先、適正なマージン確保が進まなければ多くの廃業・廃止もあり得る状況である。
 雇用の面では、SS数が減少しており従業員も減少傾向にある。本年も昨年に比べ少ないものの、6SSが廃業・廃止のため雇用数は若干の減少となった。若年のスタッフが必要なSSもあるが、条件面が厳しいため獲得は難しい状況である。
 このような状況の下、業界ではSSスタッフに対してのハイブリッド車の技術研修(松江・出雲・益田会場)を実施した。また、経営革新に向けた経営者等セミナー(4回シリーズ)、政権与党への業界支援策・税制改正要望を行った。今年の6月には大手石油販売会社同士の統合が行われた。

(3)市街地の商店街を見ると、売上高の面では減少の傾向が長期的に継続しており、回復の目途がたたない状況であった。中には売上を大幅に伸ばした店舗もあった。
 価格の面では、低価格品が売れて、客単価は下げ止まり感がない。価格帯の二極化は続いている。
 収益の面では、低価格品がよく売れるため、利益額・利益率とも落ちこんだ。
 雇用の面では、すでに最低の雇用者で経営しているため、これ以上の人員削減はできない。
 このような状況の下、業界では各種イベントを開催し、集客アップを目指した。

(4)郊外のロードサイド型商店街を見ると、売上高の面では、減少傾向にあり、3年前に比べ10%減となった。客単価が下がっており、カラオケ店も室料から人数で料金を取るようになり売上が落ち込んだ。中元商品も出なくなっている模様である。
 価格の面では、同業者間の競争は激化し、益々厳しくなった。
 収益の面では、売上高、価格の影響で悪化した。雇用の面では、変化はなかった。
 このような状況の下、業界では日本テレビ(チャリティー番組:24時間テレビ)と協賛してナイトフェスティバルを行った。12月にはプレミアム商品券を発売したが、前年度より30%減少した。原因としてはプレミアムを5%にしたため魅力が薄れたことと、不況が深刻化している事が挙げられる。また、年末年始にかけての大雪の為、全商店に影響があった。

12.サービス業

(1)宿泊業
 旅館業界をみると、平成22年の宿泊客について、昨年の大幅な集客減少から盛り返し回復基調にあるが、数年前の勢いはまだない。県東部ではゲゲゲブームの中で境港の水木しげるロードによる集客増加が見られたが、県内における大きなイベントも特になかったため、全体としては今一つであった。売上は昨年に比べやや上昇といったところであった。11月に入り、安来において鳥インフルが発生した。当初集客への影響が心配されたが小さなものとなった。
 価格の面では、宿泊単価は二極化で、主体は低価格志向が依然として根強く、やや下げか横這い状態にある。
 収益面では、集客は伸びたものの思ったような売上とならず、継続して経費節減に取り組んでいるが全体的に収益は厳しい状況が続いている。
 雇用の面では退職者の補充程度で新規採用を行っているが、一部パートで対応した。
 このような状況の下、業界では県外観光客の誘致策として昨年に引き続き県外各地でキャラバンを実施した。重点事項として、インターネットの有効活用に取り組んだ。冬場対策として、各種企画を実施したが、誘客への有効手段とならず苦戦している。鳥インフルの風評被害については今の所影響が小さいが、関係者(公務員・団体)の自粛によるキャンセルが多かった。

(2)自動車整備業
 自動車整備業界において売上高の面では、業務量の減少、価格面の競合等により全体的に減少傾向と判断する。新車販売台数も代替補助金終了後は対前年実績を下回った。
 価格の面では、業務量の減少、他社との競合等により安価傾向で推移した。
 収益の面では、売上高、価格等により全体的に悪化傾向と判断する。不況に強いと言われる業種だが、長引くことによる結果と考える。
 雇用の面では、売上高が減少し収益を圧迫している状況から全体的に厳しい状況で推移した。
 このような状況の下、業界ではマイカー点検教室、マイカー点検キャンペーンの実施、セミナーの開催、街頭検査の協力、「こども110番のくるまやさん」事業、整備士等養成講習、各種研修会の実施及び環境対策等を行った。

(3)情報サービス業
 情報サービス業界を見ると、売上高の面では、5~6%増加した。Rubyや自治体のIT投資も重なり、地元が好調であった。また、県外のパッケージビジネスも島根の企業はコスト競争力があり、頑張っているところが多い。
 価格の面では、コストダウンへの要求が強く、販売価格は下がる傾向である。
 収益の面では、対前年比10%程度向上した。
 雇用の面では、忙しい状態が続いており、採用を従来通り行っている。

(4)ビルメンテナンス業界を見ると、売上高の面は対前年約10%減となっており、依然として長期減少傾向にある。その主な要因としては、組合自体が入札に参加できなくなったことによるもの(特に市町村関係)や、組合員以外の同業者による物件落札等が考えられる。一方、企業別にみた場合、限られた市場に対し県内外からの業者新規参入は依然継続しており、こうした中での厳しい低価格競争の現状を考えた場合、総じて売上額は減少しているものと推定される。
 価格の面では、一般競争入札等の促進・拡大等に起因する昨今の低価格競争のあおりを受けている。こうした中で、良好な品質を確保しサービスを低下させないためには単価をギリギリまで下げざるを得ず、このことが各企業の利益率を下げ、経営を圧迫している大きな要因の一つとなっている。
 収益の面では、低価格競争により売上等が減少し、これに比例して収益はもちろん利益も大幅に減少していると考えられる。これに伴い、労働集約型産業であるビルメンテナンス業は、地域に密着した重要な雇用確保のコアであり、経費の多くを人件費が占めているが、このまま低価格競争が続くと、利益率の限界点を超え、企業経営自体が困難になり、人員解雇等の危険性はもちろん、地域社会・経済全体に対する影響も憂慮されることとなる。
 雇用の面では、前年に対し緩やかではあるが悪化した。
 このような状況の下、(社)島根ビルメンテナンス協会との共同研修会開催や、県中小企業団体中央会及び(社)全国ビルメンテナンス協会主催の研修会、大会等への積極的参加を行い、専門的知識の習得や技術の向上を図るとともに、組合員の連帯意識の高揚と醸成を図った。協同組合と構成メンバーをほぼ同一とする(社)島根ビルメンテナンス協会において、独立行政法人雇用・能力開発機構島根センターからの依頼により、離職者の職業訓練のために講師派遣を行った。

13.建設業


(1)総合工事業の業界では、売上高の面では、平成22年度の国の公共事業予算は、前年度比18.3%の大幅削減であり、県の公共事業予算は、2月、9月、11月の補正予算により実質的に対前年度比5%の増加となったが、依然として厳しい状況が続いている。民間投資においても、新設住宅着工件数(4~11月)が、対前年度比10%減少しており、依然として低調である。
 価格の面では、ダンピング入札が依然として増加しており、落札金額を下げ、労務単価も下がっている。設計額に計上される労務単価は実勢価格を採用しているため、下がった労務単価がベースとなり、デフレスパイラルが続いている。
 収益の面では、平成21年度の県内公共事業受注社951社の経営状況は、完成工事高営業利益率の平均値が-2.35であり平成16年度以降マイナスを続けており、営業損失を計上する企業が全体の48%、債務超過の企業が22%と一段と厳しい状況となっている。
 雇用の面については、建設業の倒産件数(4~12月)は15社、前年度より3社減少しており、全産業の45%を占めている。また、人員整理状況(4~11月)は298人、前年度より20人増加しており、全産業の33%を占めている。
(2)電気工事
 電気工事業界では、売上高の面では、1月頃から工場の増・改修工事が出だし、春先より設備投資の計画も出てきた。夏場より長い猛暑で省エネ工事も提案すれば受注に繋がった。空調工事に至っては、空調機器が不足する状況であった。特に足下の冷暖房対策としてエコシルフィ工事の売れ行きが良かった。また、国・県・市町村の補助金助成でスプリンクラー・省エネ工事の受注が多い年であった。
 価格の面では、ゼネコン・地元建設会社の仕事が減り、下請による価格ダウンの比率は低くなった。建設業界全体の仕事量が減り、入札希望価格の提示があると、ダンピング受注の傾向にあり、仕事量確保が先になっている。
 収益の面では、官庁工事があり、電気・機械・通信・信号機等工事が潤っていた。また、益田・安来・東出雲で地域情報関係の通信工事が発注となり、人手不足となった為、価格・収益は安定したのではないかと思われる。空調工事・エコシルフィ工事・省エネ工事は猛暑で品薄になったほどで価格面は安定していた。
 操業度の面では、昨年に比べ工事の延期・中止・見合わせが無く、工程面は順調であった。一年を通じて全般に安定していたのではないだろうか。
 雇用の面では、増加しないと思うが、雇用の責任があると思うのでコンスタントに採用している。時代の変化のスピードが速く、技術力・IT関係が欠ける高齢者は雇用に難があるように思われる。
 このような状況の下、個別企業のレベルに応じ、新技術・新製品への研修を行っている。

14.運輸業

 道路貨物運送業界では、売上高の面では、国内の貨物総輸送量が内需の持ち直しを受けて小幅ながらも増加に転じ、当地においても、製造業などで生産や設備投資に一部持ち直しの動きが伺え、これらに関連した輸送需要も僅かながら増加した。加えてエコカー減税・補助金、家電・住宅のエコポイント制度による消費関連需要や夏の猛暑効果に伴う飲料水関係等の輸送など、運送需要も一時的に増加したものの、総じて山陰地方の貨物需要は依然薄く、地場における自立的回復というよりその多くは好況地域の輸送需要に牽引されたところが大きかったといえる。
 当組合事業における実績でいえば、対前年同期比で、東・中・西日本高速道路の利用料金、利用件数ともに10%増、本四連絡・首都高速・阪神高速ともに10%~35%増、燃料の共同購入数量で前年並み(公共事業減や燃料販売事業者の参入の影響等による)、全国の求荷求車情報ネットワーク事業では、荷物の成約件数は前年並み、車両の成約件数は対前年70%増と伸びを示したが(それでもリーマン前の70%程度)、秋口からは全国的に荷動きは鈍化傾向を示し、高速道路の利用実績等もこれに連動するように低調な推移となってきた。
 また、公共事業の減少により、県西部の高速道路建設に伴う工事では、工期を終えた他地域のダンプや県外のダンプ事業者の入り込みによる運賃の引下げ競争が目に付き、顕著にダンプ運賃が下がってきている。これらは適正な相場を崩す原因となっており、地元事業者は苦労を強いられている実態がある。地元関係者は所属する協会の適正化委員会指導員に対し、運行形態や労務形態の調査を依頼しても、県が異なるため、直接調査ができないとのことで、公共工事が出る場合は地元の業者を使うように行政に働きかけている。
 いずれにしても、トラック事業の健全な運営を確保するためには、適正な運賃の収受が不可欠であり、荷主との運賃交渉にあたり、自社の原価を把握した上で十分な協議によって運賃設定を行うことが重要であり、また、荷主が望む物流サービスは高度化していることから、生き残るためにも荷主に対する提案力が問われている。
 価格の面では、運賃・料金は横這いがほとんど(全国92%が横這いで推移)となった。運賃デフレにより運賃単価が低く抑えられている上に、貨物需要の落ち込みに伴った過当競争が加わることで更なる運賃の引き下げ要請が徐々に強まっていくことが懸念される。また、燃料価格(軽油)も前年比で9.2円(10.5%増)も値上がりしており、燃料費を含めた種々の輸送コストの上昇分を運賃転嫁することは非常に困難であり、中小の運送事業者の経営環境は厳しさを増している。
 収益の面では、前述にあるように、景気回復に伴う好況地域の運送需要の影響もあり、売上も僅かながら回復傾向を示してきたが、当地における中小事業者にあっては、既往の景気対策効果も一巡し、輸送量の減少、運賃の長期に亘る低迷、デフレ環境下での燃料価格の値上がり・高止まりによる輸送コスト負担増、加えて環境保全・安全確保への対応、重い税負担など、荷主へのコスト負担の運賃転嫁も難しい中、売上に占める利ざやは益々減少するばかりで、経営収支や労働条件も更に悪化しており、益々経営を維持していくことが困難な状況を迎えている。また、復路荷物不足の常態化により、一運行にかかる利益効率が非常に悪くなっており、こうしたことも高速道路を利用した長距離運行から撤退するところが多くなってきている一因となっている。
 また、運送原価に直結する燃料価格の度重なる値上げは、売上げに対する利益率が非常に低い業界にあって、事業者の経営環境を更に圧迫することになった。一方では不安定な原油価格市場と大手元売会社の合併など、大規模化した精製メーカーによる価格決定権が従来に増して強まり、価格決定システムの見直しを一方的に繰り返しており、そのメカニズムは益々ベールに包まれ見えにくくなってきた。更に石油元売各社が石油の精製能力を2013年までに25%削減する計画もあるなど、軽油価格は今後値上げに向かうことが予想される。こうした中、従来の協同組合等による一括購入メリット(数量メリット)が得られにくい市場構造の変化に対し、価格交渉を含め協同組合による共同購入の在り方についての再考が必要となってきた。
 操業度の面では、年初から年央にかけて、中央では荷物需要が持ち直し傾向にあると報じられたが、こと山陰地方においては、景気回復を一向に実感できない中で、多くの荷主企業は減産または生産調整を続け、設備投資関連、住宅建設、食料品等、全品目に亘って荷物需要の低迷が続いた。こうした中、山陽地方のように安定した定期便が少ない当地では、荷物があれば空車覚悟で片道運行するような車両も多く見受けられた。また、年度末の繁忙期には一時的に車両不足となることもあったが、その後は極端な落ち込みとなり、特に長距離輸送の落ち込みが激しく、元々当地発の荷物が少ない上に公共工事の落ち込みが影響して資材関連荷物など、当地へ持ち帰る荷物が大幅に減少した。県東部地区においてはダンプ関連の仕事が止まり、セメント関係も取扱量が大幅に減少した。また、通年と異なる現象として、例年、公共工事に関連する荷物需要の年度繰越分によって4~6月を何とか凌いできたが、今期は年度を区切りにしてさっぱり途絶え、政府による有効な経済対策も一向に打ち出されない中で、休車・減車を続けることで耐え凌いだ。それでも7月頃からは、製造業での生産や設備投資に回復の兆しが伺え、家電・住宅エコポイント需要も加わり、これらに関連する輸送需要も若干増え、加えて猛暑効果により飲料水関係の輸送は極端な車両不足となるなど、季節商品の動きが活発になった(以前のような盆前の活発な荷動きは無くなった)。県東部を中心に下期は、荷動き・稼働率ともに比較的良好に推移し、車両不足の状態となった。ただ、車両不足といっても決して荷物が多過ぎるというわけではなく、これまでの不況による減車の影響を受け、今ある荷物量に対応できていないというだけの話であり、厳しい経営環境にある運送事業者は、スポット的な荷物にも対応可能な車両を保有する余裕はなく、現状の保有車両でギリギリ一杯の対応を行っている。
 また、県西部の高速道路工事関係もようやく動き出し、ダンプ関係は忙しくなってきたことなども輸送需要改善に繋がった理由に挙げられる。一方、県西部では県東部に比べ一般貨物関係では元々生産企業が少ないこともあって、往復路荷物ともに低迷を続けた。反面、夏の猛暑の影響を受け、野菜や果物や米、これらに関わる全ての輸送量が減少し、浜田の鮮魚運送関係では、海水温が高くなり、サバなどの漁獲量が減少したため、これに伴う水産関連の輸送も減少した。
 雇用の面では、労働集約産業であるトラック運送事業では、将来の乗務員の大幅な減少は確実であり、若年労働者の確保が思うように進んでいない。また、団塊の世代が65歳を迎え、2012年度から多く引退していくが現段階では高齢者乗務員に頼らざるをえない状況であり、雇用管理体制を整備する必要がある。加えて、将来大型免許保有人口は減少することもあり、今後の若年労働者確保が困難となることを考慮して、現行の中型免許制度(高校新卒者はすぐに中型車を運転できない)の見直しの検討が始まっている。
 このような状況の下、業界では効率的な運行計画や省エネ運転の実施、運賃転嫁への取り組み、できる限りの経営コスト対応策に取り組み、併せて行政、関係団体と連携し、様々な諸問題に対し、要望活動や意見交換を積極的に展開し、その解決に向けた対策、諸施策の実現を目指した。業界として行った主な要望活動〔()内は要望活動の成果・結果〕として、「自動車関係諸税の簡素化、軽減の実現」(厳しい財政事情や地球温暖化の観点から軽油引取税の当分の間接税は現行水準を維持)、「運輸事業振興助成交付金の継続及び法制化」(軽油引取税の当分の間接税を当面継続するにあたり、これと一体の措置である営業用トラック、バスに対する運輸事業振興助成交付金はこれに関する地方交付税措置を含め継続する)、「環境税等新たな税負担となる新税創設反対」(石油石炭税を税率1.5倍に引上げ、その増税分を地球温暖化対策税として23年度から導入、軽油・ガソリンの増税による重課に対しては支援措置を講じる)、「高速道路料金の半額化等の引下げ及び営業車特別割引の創設もしくは大口多頻度割引の深堀」(上限料金制の高速道路実質値上げ案を撤回し、時間帯、大口多頻度割引等継続)等を含め、事故防止及び安全運転対策、環境対策、税制問題について協同組合の立場からも意見を出しながら(社)全日本トラック協会との連携のもとで対応した。なかでも、高速道路料金については、国土交通省が平成22年4月に打ち出した「上限料金制」の導入等による新たな料金割引制度は、事業用トラックの利用実態からみて、9割近くの利用が実質値上げとなるとして、業界を挙げて強力に導入絶対反対の運動を展開した。結果、6月からの実施を断念、法案も臨時国会で廃案となったあと、年末に新たな料金案が示され、トラックに限り上限制の導入は見送られ、「時間帯割引の一部」や従来の「大口多頻度割引」は継続されることとなった。
 また、「高速道路無料化政策」は平成22年6月から全国37路線50区間を対象に「高速道路無料化社会実験」が実施されたが、国民や地方自治体への意見聴取では無料化不支持の声が多数を占める。政策効果として、本来は長距離の区間も行わないと無料化の効果を実証できない。また、地域間交流の活性化や一般道の渋滞緩和が見られるなど、一定の評価も一部あるが、地域経済全体への波及効果や他の公共交通機関への影響など客観的なデータが得られていない現段階では評価は困難とする意見が大半を占めている。業界としても無料化による物流の影響として、渋滞による延着やコストの増加などの悪影響もみられた。
 当組合では今期、高速道路無料化政策や上限料金制度施行及び大口・多頻度割引制度が廃止となった場合も想定しながら、業界としての要望活動などを含め、難局を乗り切るための取り組みを行ってきた。まだ懸念材料は多くあるものの、大口・多頻度割引制度を継続する方針が示されたことは、高速別納事業存続の見通しが立ち、利用組合員においては同制度から受ける高い割引率によってコスト削減が維持できることとなった。
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2 業種別平成23年の景況予測

1.食料品製造業

(1)菓子業界は、さらに悪化するのではと心配している。

(2)醤油業界は、国内景気の低迷が続く中、特に明るい展望は望めそうにない。醤油の消費量は減少が続くと考えられる。

(3)水産練製品業界は、アメリカのスケソウダラの漁獲枠が増加するため全体として原料に落ち着きがでると思われる。

2.繊維・同製品製造業

 繊維・同製品業界では、大きな回復は望めないが、一部海外生産から国内生産へ移行する動きも見られる。

3.木材・木製品製造業

(1)合板業界は、住宅着工数予想は90万戸(前年比10%増)。これは過去の数字に比べるとまだまだ低いが、国の施策の木質化推進がフォローの風になるのではと希望的予測をしている。

(2)木材業界は、新設住宅着工の大幅な回復は見込めないが、「公共建築物等における木材利用促進法」に関連して木材需要は増えてくるのではないかと期待される。木材業界としても、こうした需要に対応すべく供給体制を整えていく必要がある。

(3)家具業界は、良くて前年同様。家具売上については悪くなると思われる。

4.出版・印刷業

 出版・印刷業界では、組合員に対する業務実態調査によると、平成22年の対前年比程ではないが、悪化するとの予想が半数以上である。

5.窯業・土石製品製造業

(1)瓦業界では、12の民間調査機関による平成23年の新設住宅着工戸件数予想(平均値)は、平成22年比107.1%の875千戸という情報がある。その内分譲戸建て・持ち家の需要がどの程度か、そして住宅エコポイント制度延長をはじめとする支援施策による省エネ構造を含む内装・水回りを中心とするリフォーム需要へ外装としての屋根材リフォームを訴求できるかが課題と考える。前年同様、太陽光パネル敷設に伴う化粧スレートや金属屋根材との競合激化は必至。海外や北関東、東北、北海道といった新規市場での微増が期待できるが、あくまでも販路開拓途上の域であり、西日本市場でのシェア奪回、需要喚起策を継続的に講ずることが第一である。出荷予想は増加を見込む。
 生産枚数(操業度)については、操業度70%と見ている。収益については、操業度アップが条件であり、燃料等外部要因を注視しながら、更なる生産設備集約、生産品目の絞り込みによる生産効率と歩留向上に努めることが必要である。

(2)コンクリート二次製品業界は、組合員数も最盛期の半分となり、業界の景況も益々悪化傾向にある。

(3)生コンクリート業界は、主な物件としては松江第五大橋道路、斐伊川放水路、多伎朝山道路、尾道松江道路、仁摩温泉津道路、浜田三隅道路、浜田ダム、松江赤十字病院、隠岐病院等に関連する工事で需要が見込まれる。県全体では公共事業の削減と景気低迷による民需の不振により、平成22年度比で15%程度減少するものと予測する。

6.鉄鋼・金属製造業

(1)鉄鋼業界は、生産活動は回復傾向に動いているものの、大企業中心に円高による海外生産や海外調達が加速する懸念があり、新たな国内需要には繋がっては来ないものと思われ、今年も価格競争への対応は、多くの中小企業にとって厳しい課題になるものと思われる。特に地方にある我が島根県の鉄工業界にあっては、発注企業からのコストダウン要求や、県外企業との競合の激化等、経営環境は厳しい状況が続くものと思われる。

(2)安来地区は、既に先行きの不透明感が出始めている分野もあり、製造部門間で繁閑の差が出てくると予想される。また、平成23年も円高を始め、原材料費高騰により、景気回復は望めそうにない。日本の景気は、中国の景気好調持続と米国の景気回復に期待せざるをえないと思われる。

(3)鋳物業界は、業界の景況感は少しずつ回復傾向となって来ているものの、円高による海外生産や海外調達が加速する懸念がある。
また政府による景気回復策等にあまり期待できず、先行き景気は低調に推移するものと考えられる。

7.金属加工機械製造業

 金属加工機械業界では、景況については前年並みの状況を維持できれば良いという状況である。海外取引先の政治情勢が景況に悪影響を与えなければと思っている。

8.自動車部品・付属品製造業

 自動車部品・付属品業界では、全般的には前年並みと予測する。開発品の受注により売上、収益の改善を図りたい。

9.畳製造業

 畳業界では、前年以上に厳しい状況は続くと思われる。

10.卸売業

 県東部では、組合員に建設関連資材を取り扱う業種が多いところから、公共事業費の多寡に左右される傾向が大きい。特に当県の場合、公共事業への依存度合が大きいことから、政府の景気刺激策としての公共事業拡充政策への方針転換に期待したい。  県西部では、若者の人口減に比例して、消費の落ち込みが予想され、益々厳しくなる。

11.小売業

(1)共同店舗では、景気回復の兆しが一部でささやかれているが、地方の中小企業は依然として消費低迷と将来不安による閉塞感が続き消費抑制が益々進むと思料される。

(2)石油製品業界では、ハイブリッド車・電気自動車等次世代自動車の普及、公共事業の低迷、暖房の灯油離れ等によりガソリン・軽油・灯油の減少傾向は続くと思われる。
 また、地下タンク規制が平成25年4月に実施されることや原油高、精製設備の適正化等コストアップ要因が多い半面、小売価格に転嫁する力が弱い状況にあるので、一層厳しい時代を迎えると予想される。

(3)市街地の商店街は、今年も売上、収益とも厳しい状況に変化は無いと考える。

(4)郊外のロードサイト型商店街では、新規出店が平成22年度は5店舗あったが4店舗が飲食及びサービス業である。ここ数年で初めて物販店(宝石店)が出店。平成23年度もサービス業、飲食の出店が予想される。

12.サービス業

(1)旅館業界では、平成24年は、「神々の国しまね~古事記1300年~」のメイン展開期にあたり、JTBの「日本の旬」やJRの「DCキャンペーン」という大きなイベント・キャンペーンがあり、更には松江-尾道線の開通など観光面で大いに盛り上がりが予想されているが、それに繋がる前年の平成23年の観光施策については今検討がなされており、具体的かつ本格化していくといったところである。その中の主な観光施策では、県東部において、松江歴史資料館がオープン、松江開府400年記念博覧会が展開され、また西部では、森鴎外150周年記念事業の実施、また島根県は、「神々の国しまね~古事記1300年~」に関して、プレイベントが計画・実施されることとなっている。業界としては、官民一体となった観光振興に力を入れていくこととし、縁結びやパワースポットが脚光を浴び少しずつ集客が増加していることもあり、歴史・文化の詰まった島根の観光について、インターネットの有効活用を含め推進していくこととしている。一方、航空機材の変更により首都圏からの集客の減少が懸念されており、その対応が必要となる。

(2)自動車整備業界を見ると、業界自体の回復感は望めないと思われる。全体的に悪化傾向で推移した前年を踏襲すると思われる。新車販売については、エコカー減税は継続するが、代替補助金の再構築等の目玉施策がない限り、現状を踏まえた上でも低調であると考える。

(3)情報サービス業界では、コストダウンを実現できれば、仕事は増える。特に、首都圏の需要を地方に呼び込みたい。

(4)ビルメンテナンス業界では、平成20年の未曾有の金融危機発生以来、公共事業関連の予算の減少は続き、また民間経済は依然として不況感が漂っている。さらに現在、円高やデフレ等による不況が懸念されており、前年と比較し大きく好転するとの要素は特に見当たらない。このため、今後も「限られた市場における低価格競争」が継続するものと考えられ、厳しい状況が続くものと思料される。

13.建設業

(1)総合工事業の業界では、平成23年度の国の公共事業予算は平成22年度当初比12%の大幅削減で、交付金を加えても4%の削減であり、引き続き厳しい状況が続くと予測する。

(2)電気工事業界では、不動産の造成が減り、不動産売買による新築・改修が多くなると予測される。在来工法の日本住宅は年々下向きになり、ハウスメーカーの住宅が増えると同時にマンションも減るだろう。来年は金融支援も止まり、資金繰りに困った業者は価格を下げてくるという悪いスパイラルに入ると予測される。一方、新しい太陽光発電工事・LED照明・省エネ・CO2削減対策・消防防災・防犯等の工事の需要は益々高くなる。これからは技術力・専門能力・企画力・提案力、何よりもサービス力のある企業が伸びて行くであろう。

14.運輸業

 道路貨物運送業界では、日通総合研究所によれば、平成23年は内需の回復が一服するなかで、国内貨物総輸送量は2.1%減と12年連続のマイナスにあり、ピークであった平成3年度の約3分の2の水準まで落ち込むとしている。消費関連貨物は猛暑効果で伸びた清涼飲料水等の反動減が見込まれるほか、消費マインドの停滞を受けて、日用品などを中心に1.2%の減少に転じ、生産関連貨物は家電エコポイント制度の見直しを受け、家電類の不振が予測され、鉄鋼や一般機械なども横這いないしは微増がせいぜいで1%台半ばのマイナス、建設貨物関連では住宅投資がプラスに反転し、公共投資の減少幅も幾分狭まるとし、水面下の推移ながら3%台の減少にとどまるとしている。
 当地における貨物動向も、前述の予測に近い動きとなるだろうが、デフレ基調の中、引き続き国内消費も伸び悩み、円高進行の影響により生産・販売活動が海外シフトする傾向が強まることによって、国内産業の空洞化により物流量が一層落ち込むことも予測される。また、政府による公共事業費を抑制する方針は変わらないものと思われ、デフレからの脱却が依然できない中、雇用情勢や設備投資などの目にみえた回復は難しく、燃料費の値上がりによる輸送コスト増や新たな環境税の導入実施による負担、運賃の動向も低下が続くことから、事業者の更なる負担増は避けられない状況となり、当地経済を浮揚させる好材料も見当たらず、既往の景気対策効果も一巡した中で、益々経営を維持していくことが困難な状況を迎えることが懸念される。こうした環境下で事業者自身による経営基盤(輸送以外の部分での収益拡大策等)の改善・強化に関わる方策や自ら需要(貨物輸送の掘り起こしや輸送費の削減など物流合理化・物流システムへの提案力、サービスの高付加価値化等)を創出する取り組みが求められる。
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3 中央会、行政庁への要望事項

1.金融・税制支援関係

(1)開発品に対する設備資金及び加工、金型等の設備資金同等の扱いで融資を考えて頂きたい。

〔自動車部品・付属品製造業〕

(2)円高、輸入関税の対策を早急に検討してほしい。

〔金属加工機械製造業〕

(3)組合が所有する共同施設の固定資産税の減免措置(組合所有の駐車場、店舗に対する固定資産税の減免等)

〔共同店舗〕

(4)制度資金はもとより、保証協会の更なる支援をお願いしたい。

〔鉄鋼製造業〕

2.施策関係・その他

(1)県内公共事業は県内産コンクリート二次製品を最優先で採用して頂きたい。

〔コンクリート二次製品製造業〕

(2)県・市町村の石油製品納入契約で、競争見積もり(入札)制度の下、市況より安い価格での契約が常態化しているところがあるため、適正価格での官公需契約を啓発・要請して頂きたい。

〔石油製品〕

(3)木材供給体制の整備に対する支援策の充実を要望する。

〔製材業〕

(4)空き店舗対策の充実(家賃補助、改修に係わる経費補助の充実)を要望する。

〔共同店舗〕

(5)高度化融資の統一した制度の確立(県によってばらつきがある)を要望する。

〔共同店舗〕

(6)経営支援のより一層の充実(アドバイザー等専門家派遣事業等)を要望する。

〔共同店舗〕

(7)買い物弱者支援事業の充実(地域生活インフラ整備支援)を要望する。

〔共同店舗〕

(8)市場実態にあった適切な業務委託積算に基づく適正価格(予定価格)による発注。また、その際における「最低制限価格制度」の導入をお願いしたい。

〔ビルメンテナンス業〕

(9)地元企業で構成する官公需適格組合の活用(法の趣旨の一層の促進)を要望する。

〔ビルメンテナンス業〕

(10)不適切業者の排除のため、契約業務履行チェック体制の確立や実施を要望する。

〔ビルメンテナンス業〕

(11)地域活性化のための社会資本の着実な整備と景気対策の継続を要望する。

〔総合工事業〕

(12)ダンピング対策の強化を要望する。

〔総合工事業〕

(13)国産材の安定的かつ拡大供給が実施する施策を進めて欲しい。

〔合板製造業〕

(14)一層の産業振興策、特に機械金属製造業に対する支援をお願いしたい。

〔鋳物製造業〕

(15)家具売上に係わる補助金制度など(家具エコポイントの様な)購買意欲を後押しする補助をお願いしたい。

〔家具製造業〕

(16)今後、より一層の連携強化(定期的な懇談会等の開催)を要請する。

〔印刷業〕

(17)遅れている高速道路の早期整備、全国統一品質管理監査合格工場の優先使用、ライフサイクルコストの優れたセメントコンクリート舗装の普及、下請取引の適正化推進をお願いしたい。

〔生コンクリート製造業〕

(18)販路開拓の支援(ビジネスマッチング)・紹介をお願いしたい。

〔菓子製造業〕

(19)交通網の整備を早期にお願いしたい。(広島・県西部への高速道路、出雲空港の夜間便)

〔情報サービス業〕

(20)大口多頻度割引制度の適用条件の緩和や割引率の拡大を要望する。

〔道路貨物運送業〕

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4 その他資料

[グラフ統計資料等データ出所]
「平成22年県内企業の景況動向を振り返って」で掲載したグラフ統計資料等についての出所は次の通り。 『報告書記載の業種について』
 県内中小企業を業種別、地域別、業態別に網掛けをし、精度の高い実態把握を狙いとしているため、弾力的な業種のとらえ方になっていることをご了承下さい。
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