平成13年中小企業団体情報連絡員総括報告



 県内中小企業の動向、問題点、要望を迅速かつ的確に把握すべく、中小企業団体情報連絡員制度を昭和49年に発足させ、地域別、業種別を勘案して36名の委員を委嘱し、毎月情報の提供をお願いしております。
 ここに掲載する「平成13年(1月〜12月)中小企業団体情報連絡員総括報告」は、1年間の情報と年間を通じた景況等を36名の委員の方々からの情報を元にとりまとめたものです。

T 概 況
U 業種別平成13年の状況
V 業種別平成14年の景況予測
W 中央会・行政庁への要望事項
各種 統計・景況グラフ

     

T 概  況
  日本経済は深刻な景気後退局面に入っており、昨年末からの米国経済の予想以上の失速を受けた、輸出減少がその要因にあげられ、その悪影響は生産・収益減少を通じて企業活動の停滞をもたらし、併せて昨年の夏場以降は雇用・所得減を通じて消費低迷にも波及しており、更には企業活動の収縮につながるという悪循環が生じている。
 こうした状況下県内の産業活動では、山陰でも今までないほど大規模な倒産を経験し、地域活力に激震を与え、金融機関においても不良債権処理問題が顕著となり、企業活動の在り方に大きな波紋を巻き起こした。業種別に見ると製造業では、IT不況の余波を被っており、一昨年のITバブルと比べると好対照で、併せて中国への生産拠点のシフトにより国内の空洞化が顕在化した。小売業では、マイカル破綻に象徴されるように、最も厳しさを痛感した1年であり、デフレ時での消費動向に振り回される格好になった。建設業では、いわゆるトリプル減(受注・完工高・利益)の現状があり、限られたパイ(工事量)の奪い合いで、経営を行っていく上での好材料は見あたらない。木材業では、住宅新規着工数の激減により需要増の活路が見出しにくく、窯業においても在来工法での木造住宅受注減で瓦市場が狭くなりつつあり、値崩れと共に経営を圧迫している。一方厳しい環境の中、サービス業特に県東部の観光関係については、米国テロによる海外旅行回避の動向に左右された感はあるが、山陰道開通、ルイス・C・ティファニー庭園美術館及び松江フォーゲルパークのオープンが重なったことから最近にない良い数字が得られた。
 以上ことから県内経済は、総じて厳しさを増しており、未曾有の経営環境に直面していると言える。
 1.生  産
  本県の平成13年鉱工業生産指数(平成7年=100)は、84.5で対前年比15.4ポイント減となった。季節的に見ると前半から後半にかけて徐々に下降傾向を示しながら推移した。業種別に見ると、年間を通じて堅調であった化学工業をはじめ一部の業種で持ち直しの動きがみえたものの全体的には低調に推移した。
 2.建設動向
 保証実績からみた本県の公共工事請負件数は6,198件で対前年比−4.4ポイント、請負金額は325億円で対前年比−0.9ポイントと共に減少となった。
 発注者別に対前年比でみると、「国」では請負件数6.7ポイント増、金額−0.3ポイント減で、「公団・事業団等」では請負件数−26.3ポイント、金額−37.8ポイントと共に減少しており、「島根県」では請負件数−6.6ポイント減、金額5.9ポイント増で、「市町村」では請負件数−3.0ポイント、金額−6.5ポイントと共に減少となった。
 新設住宅着工件数については、平成13年は、5,310戸で、対前年比−6.8ポイント(390戸)の減少となった。
 3.個人消費
 個人消費を見ると、この景気低迷の中、百貨店とスーパーの売上高動向において、価格戦略では高級感がある百貨店の上昇を表す数値もあり、消費者の購買行動把握の難しさが伺える。
 消費者物価指数(平成12年=100)は、松江市では年平均で対前年−0.6ポイント減で(全国−0.7ポイント減)、デフレ傾向を示した動きになった。
 4.雇  用
 本県の雇用動向を毎月の勤労統計調査(常雇規模30人以上の事業所対象)の中の常用労働者雇用者指数でみると、90.7で対前年比2.2ポイント減少した。
 また、労働力の量的な需給関係を示す月間有効求人倍率をみると、年平均0.72倍(全国0.59倍)と昨年平均0.83倍に比べ更に悪化した。
 5.企業倒産
 平成13年の本県の倒産件数(負債1,000万円以上、内整理を含む)は、56件と前年に比べ12件減り(対前年比17.6ポイント減)、負債総額については、大型倒産が発生したため、250億5,000万円と72億5,000万円の増加(40.7ポイント増)となった。
 規模別にみると、個人経営11件、資本金1,000万円未満23件で小資本の倒産が全体の60.7%を占めている。
 業種別でみると、建設業15件、製造業14件と最も多く、負債額は製造業が117億2,800万円と最も多かった。



U 業種別平成13年の状況
1.食料品製造業
(1)   )豆富業界は、小売業の廃業並びに個人消費の低迷により、売上高についてはここ5年連続減少している。(▲4%)価格面においては、大手同業者による価格競争が厳しく年々単価が下落しており、昭和60年頃の価格となっている。
 収益面においては、付加価値の高い商品を多品種少量生産し特売等で販売しているが、売上高が伸びない現状では改善に至っていない。雇用面においては、退職者のパート切替等により新規採用は見送っている。
 このような状況下、業界では県内産大豆(サチユタカ)を100%使用しての豆富づくりの試験と流通販売テストを実施した。
(2)  醤油業界は、慢性的に続く出荷量減少に加え、昨年は狂牛病問題で消費者の食品への不安感が拡がり需要が低迷し、県内醤油業の売上高は前年を下回り業界の経営環境は更に厳しさが増した。その中で県内企業数社においては、だし醤油、ドレッシング等醤油加工品を開発しており、売上維持に努める経営努力が垣間見えた。
 価格面では、一般家庭の宅配醤油については価格維持がされているが、スーパー等の量販店向けの醤油については特売価格等値引き要求があり、リッター当たり4%程度(5〜6円)前年価格を下回った。業販用については、食材価格の低下が進み醤油もその影響を受け前年価格を下回った。
 生産、出荷量の減少で操業時間数も減少しており、雇用面では従業員の高齢化に伴う退職等で減少傾向である。
 業界では、日本醤油協会を中心とした全国醤油業の団体において、醤油が本来持っている調味料としての機能や効能を広く知ってもらうためのPR事業を実施し、当県においても消費拡大の意見交換を重ね打開策を検討した。
(3)  水産練製品業界は、食品全般にデフレ傾向が見られ、製品の定価販売が困難になっており、特売回数を増やしても売上は極端に上がらない状況がある。年度前半は土産品の売れ行きは芳しくなかったが、後半には若干改善した。
 価格面・収益面では、原料の仕入価格が上昇気味であり、コストの価格への転嫁がむずかしい。操業度は前年並み。
 この厳しい環境の中、業界ではEマーク(しまねふるさと認証食品)をあご野焼に対して取得、キャンペーン活動を行った。その効果であご野焼の売上の増加が見られた。
2.繊維・同製品製造業
 受注量は、全般的な減少傾向から対前年と比べると幾分低下している。特に多品種少ロットの発注が増加し、生産高が伸びない要因となっており、受注量の減少と相まって売上高に影響している。
 価格面では、単価(工賃は若干低下気味)の引き下げ要求は依然としてあり、採算度外視で受注する事業者もあることから、特に島根県においては安くなる傾向がある。 収益面では、前期に比べ一定の利益を確保した企業もある中、一方では多品種少ロッド及び極端な短納期を余儀無くされ結果的に時間外労働を伴い、収益率が悪くなっている企業も見られる。
 操業面では、フル稼働、また概ね1年分の生産量を確保している企業もあるが、週休3日等生産調整を行わざるを得ない事業者も認められる。
 雇用面では、微増であるが採用がある企業も見られるが、一方で受注量の減少と従業員の高齢化に伴い、雇用人数が少しずつ減少傾向にある企業もある。ただし若年の技術者が確保できれば受注が容易になる側面もある。
 このような状況下業界では、県内事業者と県外事業者による垂直連携による受注量の拡大に務める等、共同受注、共同販売に取り組んだ。 
3.木材・木製品製造業
(1)  合板業界では、地域内7工場の内2工場が休業し売上高は減少となった。
 価格面では、不況の中、製品単価はジリジリと低下傾向にある。収益面では、新市場進出を狙う針葉樹構造合板は微増であるが、広葉樹合板は益々厳しい状況におかれている。雇用面では、営業権の譲渡、グループ内移籍等で極力雇用の継続に努めた。
 また、新設住宅着工数は年初123万戸と予想されたが、現実には117万戸となり、これに大きく影響を受ける合板業界にとっては非常に厳しい1年であった。
 業界の対応としては、第1に国際対策としてインドネシア、マレーシアと輸入量についての協議を行い、第2に国内対策としてJAS規格の普及をはかり、第3に価格対策として減産に取り組み、更にはシックハウス対策としてFco(低ホルムアルデヒド合板)への促進、木材産業高度化事業を継続した。
(2)  木材業界では、住宅着工数の減少、中でも木造住宅の減少と木材価格の低迷により、売上高は対前年比88%で平成7年以来毎年前年割れで推移しており、5年前(平成8年)と比べ62%と大幅減少になっている。
 価格面では、スギ構造材の落ち込みが著しく年2〜3割の下落となり厳しい状況で推移した。また、最初に価格の切り下げ対象となる梱包材については、県外業者との賃金格差で凌いできたが厳しい単価となっている。
 収益面では毎年前年対比10%以上減で推移しており収益確保は厳しく、操業面では企業によっては例年の50%程のところもあり極めて厳しい。
 雇用面では、コストダウンが限界で高齢者のリストラ等が進んでおり、雇用調整助成金を受けながら人員確保をしている企業もある。
 このような状況下、業界では県の支援により県産材を利用した場合に施主に助成する施策や、在来軸組工法による木造住宅の「住宅祭」等を開催し、木材需要の拡大に取り組んだ。
(3)  家具業界では、耐久消費財の依然とした低迷の為売上は不振である。広島府中市においても倒産整理統合が進んでおり、下請業者は仕事の打ち切りを通達されている。
 価格面では、販売不振による受注量の低下で経費も出ない価格受注をしいられている。収益面では売上減少により厳しい状況となっており、操業面では100%操業しているが単価下落のため生産高は減少し、雇用も減少している。
4.出版・印刷業
 99年以降売上は、対前年比では金額、増減率共に下降を示しており、今年度もこの傾向は解消されていない。(全国対前年比/出荷額(▲6.7%)、1人当たり出荷額(▲1.8%)、付加価値額(▲3.3))県内印刷業界も同様な状況で、その要因としては受注先のコスト削減対象が印刷費に向けられこと、またIT技術の普及進歩が挙げられる。価格面では、受注単価の引き下げ要請に歯止めがかからず経営上のネックとなっている。
 収益面では、受注高の減少、価格の下落に併せて関連資材である紙、印刷インキにも価格改訂の動きがあり、全体的に収益を圧迫する要因となっている。この動きの中、企業間格差が顕著になってきている。操業度面では、業界全体で操業度、機械稼働率共に低下している。
 雇用面では、全国で事業所数(▲7.2%)、従業者数(▲5.0%)共に減少しており、失業率の上昇、有効求人倍率の低下等の諸条件から人材確保には有利な局面であるが、企業の経営環境の悪化から採用には結びついていない。
 この難しい状況の中、業界ではDTPエキスパート養成等の人材高度化支援事業による教育訓練や、全国印刷連合会2005年計画推進において中期ビジョン経営計画策定に取り組んだ。
5.窯業・土石製品製造業
(1)  瓦業界は、住宅着工数の落ち込み、他の屋根材への移行で、対前年比88%と売上は非常に厳しい年であった。
 価格面では全国的に値戻しの動きもあったが、昨年並で推移。
 収益面では、売上高減、更には廃棄物処理費によるコスト高により大幅に落ち込んだ。
 操業面では、住宅着工数の減等で需要は落ち込み、在庫調整の為の生産抑制がなされ対前年比90%の生産量であり、雇用においても規模縮小により前年と比べ従業員数は3%減となっている。
 厳しい経営環境の中、業界では中国、九州地域でのテレビCM、住宅関連市場への広告、ホームページ等での石州瓦のPRを実施し、年々全国からの資料請求は増加している。
(2)  生コンクリート業界では、上期においては民需により安来・松江・三刀屋各道路、漁港整備、官公需は出雲市駅周辺開発等、需要は前年を上回り順調であったが、下期は出雲と浜田を除く県下全域で需要が低下し、前年を10%下回り、通年売上は前年と比べて約5%減少した。価格面ではほぼ横ばいで推移した。
 操業度は需要の減少に伴いやや低下しており、雇用面では今後の需要が中長期的に低下傾向にあるため、人員の抑制に努めると共に従業員の世代構成の適正化に配慮している。
 このような状況の中、業界では共同販売事業と輸送の共同化を実施した。また設備の集約化に向けての検討も重ねており、併せて技術研修会、品質管理監査、新製品の製造技術について開発を促進した。
(3)  コンクリート二次製品業界は、売上高は前年と比べ減少しており、価格・収益面では発注量減、価格下落により益々悪化している。操業度は80〜90%で、雇用は過剰気味である。
 この動きの中、業界では県外企業の製品流入、販売価格の安値に対応するために、県内企業及び関係者との対応を協議した。
6.鉄鋼・機械製造業
(1)  鉄鋼業界では、売上高においてIT関連需要の減速の影響などから、機械加工並びに鉄鋼関連業種では年間を通じて需要の低迷による受注量の減少で、対前年比でかなりのダウンであった。鋳物関連業種では、前年より回復基調にあった売上高は4月から前年比マイナスへ転じ、更に6月以降大幅減で昨年と比べ10%減となった。また建設並びに鋼構造関連業種では、前年に引き続き厳しい受注環境にあり、県外及び大手企業の参入は益々活発化し、受注価格も更に低迷し対前年比でダウンをしいられた。
 価格面では、前年に引き続きメーカーの生産調整は行われているが、発注元よりのコストダウンの要求は依然強く、過当競争により受注価格は低落し県内の下請企業は更なるコスト削減を求められ、工作機械関連は大手ユーザーが急激に発注先を中国へシフトする等価格は下落の方向で推移した。
 収益面では、民間設備投資の低迷に加え公共投資も抑えられ、受注量が減る中での競争激化により悪化しており、多くの企業の赤字が予想される。
 操業面では、年度前半は高く推移していたが8月以降生産量が大幅に落ち込み、一時帰休を行っている企業もあり、定時内操業度に対して生産量が不足している状況が続いている。
 雇用面においては現状維持よりも悪化の懸念があり、また経営力のある企業はある程度の仕事量は確保しているが、他方の企業では厳しい経営環境におかれる等、二極分化が加速する感がある。
 このような状況において、業界では環境装置関連等の公共工事を積極的に共同受注し仕事量の確保に努めると共に、受注活動の支援として関係機関との情報交換、研修機会の増に努めた。また、鋳物関連業種では構造改善事業を実施し、経営環境の緩和のための税制改正要望について上部団体より陳情を行った。
(2)  一般機械器具製造業では、売上高は新設備導入により前年比で117%となったものの、価格については依然厳しく、収益面では利益無き繁忙状態になっている。
 また、操業度においては上がっているが、そのための先行投資や材料費、外注費が大きく嵩み、資金繰りは苦しくなり在庫だけが増える結果となった。雇用面では人員削減を実施した。
 この経営環境の中、業界では不況に対する支援制度の活用を行った。
7.電気機械器具製造業
 民間設備投資、公共事業共に減で売上高はダウンし、価格も過当競争により低下し、収益面でも大幅な下落となっている。操業度は量の確保も難しく低下しており、雇用については控える状況にある。
 このような中、業界ではコストダウン及び経費削減を行い、併せてITを活用したビジネスモデル展開の研究によりその対応を図った。
8.卸売業
 売上高については、平成12年度後半から後退の一途を辿り、業種(取扱商品)によりバラツキはあるものの、消費の落ち込みと併せ今年度に入って益々深刻の度合いを増している。また、法人用贈答品の激減の影響もマイナス要因の一つである。
 価格下げは収まったと言うより低価格商品が充実し、アイテムが増えたことにより消費を拡大したと表現する方が妥当。販売価格、収益状況に関して、底這いが続き、特に昨秋以降の価格低下、収益悪化の進行を訴える企業が増加している。
 雇用面では、人件費削減の為正社員からパート雇用への雇用関係をシフトさせる動きがある一方で、質的な人材不足感は慢性化しており、相変わらず「営業職」、「管理職」での良質な人材を求めている。
 このような状況の中、業界では国の助成事業を利用してのIT講習会を実施し、また資金面においても対応を行った。

9.小売業
(1)  専門店は、個人消費の落ち込みが前年を更に上回り未だに底が見えず、売上高は前年を下回った。価格、収益面についても、低価格競争により利益率が落ちている。雇用においては、収益の悪化から雇用調整を行わざるを得ない状況がある。
(2)  共同店舗は、長引く消費不況を背景に売上高は前年よりダウンしている。価格、収益面では、自助努力にも限界を感じており、雇用面ではパート、アルバイトの占める割合が増えたものの、絶対数では正規従業員同様に減少している。
 このような環境下業界では、経費削減やコストを抑えながら効果が上がるような販促企画の展開に努めたが、これも限界である。
(3)  旧商店街では、長引く不況と組合員の高齢化、後継者問題により、商店街の活気がだんだんとなくなってきており、全体的に苦戦をしている。ロードサイド型商店街では、街区への新規出店は相変わらず見受けられるものの、物販店はほとんどなく、飲食業、サービス業、携帯電話ショップ、コンビニに限られるが、狂牛病問題や競争激化によりそれぞれ売上的に苦戦をしいられている。
 価格面では、量販店の影響と需要の低迷により価格競争の厳しさは変わらず、更に価格は下がる傾向が見られる。しかし、一部商品(ブランド品、高級品)ではその限りではない。
 収益面では現状維持が難しく更に悪くなっており、雇用面では経費削減のためにパート勤務時間の変更、高齢社員への対応を余儀なくさせられており、多用していた学生バイトも減らす傾向が見られる。
 このような厳しい状況の中、消費拡大の為のプレミアム商品券を販売し完売したり、販促イベント(朝市等)、空き店舗活用に取り組んだ。 

10.サービス業
(1)   旅館業界では、昨年10月の鳥取県西部地震の風評被害を懸念したが、その影響もなく、山陰道の開通、ティファニー美術館、松江フォーゲルパークの開園が大きな効果をもたらした。9月の米国多発同時テロ事件の影響は幸いなく、むしろ前年の反動から売上高は若干増加した。しかし、県西部においてはアクアス効果も消え厳しかった。
 価格面では、昨年に引き続き利用客の低価格志向が依然として根強く、旅行代理店間での価格競争に拍車をかけ、それによる同業者間での競争激化により、宿泊単価は低下している。また収益面では、宿泊単価の低下と併せて酒飲料等付帯商品の売上点数及び単価低下により営業利益は微少であった。
 雇用面では、人手不足は解消されずパート採用で充当している。
 このような中で、観光客誘致促進策として山陰路キャンペーン等の実施、九州地区の旅行代理店の招致を行った。

(2)  自動車整備業界では、自動車保有台数の伸び及び車の耐用年数の長期化により整備に対する依存度は高いが、昨年の法改正以降、点検項目の削減等により売上高は減少傾向で推移し、1台当たりの整備売上高も減少した。
 価格、収益面では、「車検」という商品観念が変化しており、一部に短時間車検が登場する等地域内競争が激化しており、全体的な価格は低下傾向で推移し、利益率も悪化した。
 雇用面では、労働者の高齢化傾向がディーラー工場に比べ専業工場では非常に強く、全体の労働力は不足している感があるが、特に大きな変化には至っていない。
 このような経営環境の中、若手経営者等による情報交換会、自動車使用者対策としてマイカー点検教室・マスメディア広告、各種調査による業界動向の把握を行った。
(3)  建築設計業界では、公共投資が前年度を下回り、民間設備投資も低調で、加えて大型物件は県外大手設計事務所の参入増により地元事務所の受注機会が減り、売上は減少している。
 価格、収益面では、公共事業単価の見直し、受注競争の激化により悪化しており、雇用面では新規雇用はほとんどなく雇用調整が進んでいる。
 このような状況下、業界では地方公共団体が発注する大型物件について地元建築事務所がJV参加が出来るように要望した。また、合理化・コスト削減等についての勉強会、新分野進出の検討を行った。
11.建設業
(1)  公共工事については、ほぼ前年と同じ契約高となった。ただ、契約件数では、4.4%の減となっており、発注ロットの大型化の傾向があり(平成13年度契約高/対前年比▲0.8%)、大型プロジェクトによるゼネコンクラスに請負額が傾斜し、地方の地元企業への請負額が伸びていない現状がある。
 価格面では、労務費については平成12年に設計労務事務単価の切り下げが実施され今年度は大きな変更はなかったが、公共工事における労務費や資材の設計価格が下落した影響で、大きく低迷する景況の対応に苦慮した。
 収益面では、建設工事量が減少していることから、官民併せて全体的には減収となった。
 雇用面では、景気の先行き不透明感、平成14年度公共事業予算の削減等により、企業の存続に大きく影響する人件費の削減が焦点となり、雇用の手控えが顕著であった。併せて雇用形態の変化も高齢者を対象に見受けられた。
 加えて、国の建設産業大綱や建設産業構造改善に続いて、建設業法の改正や新しく施行された「公共工事の入札及び契約の適正化に関する法律」により、建設業界は厳しい経営環境に直面することになった。
 このような中、業界では公共事業量の確保と工事発注の平準化、下請セーフティネット債務保証、雇用情報ネットワーク開催等について、行政、関係機関に要望、取り組みを行った。  
(2)  舗装業界では、売上高は対前年比約5%減少し、価格面では約5%値下がりをした。収益面では売上高と共に下降線をたどっており、雇用面では新規雇用の手控えが見られた。
 このような状況の中で、業界では舗装技術の向上に見出すための研鑽に努めた。
12.運輸業
 売上高は、1月〜5月は前年の流れを引き継ぎ順調に推移したが、6月より前年割れを生じ7月から悪化し12月に至り最悪の状態となった。(対前年比13.9%)その要因は、工業製品の輸送需要減である。一方公共事業によるダンプ需要は前年並に推移した。
 価格面では、工業製品等売れ行き不振に伴い、コスト削減に伴う値引き要請が強くダウンした。公共工事関連は前年を維持している。
 雇用面では、運転者の不補充程度で雇用調整等には至っていない。求職者があっても、先行きの目処が立たないため採用は手控えている現状がある。
 このような経営状況の中、業界では情報化の促進及び活用等による取引量の増大を図った。



V 業種別平成14年の景況予測
 県内の経済環境は依然先行き不透明感が強く、民間・公共工事需要の減少が予測される等、景況に与える好材料は乏しく、厳しさは未だ脱していない。
 その中でも特に、4月に迫った金融ペイオフは、金融機関自体の経営にも深く関わっており、地元産業界に与える影響は計り知れない。今後、企業経営を取り巻く再編の流れが急速に高まるものと伺える。
 また雇用においても、有効求人倍率が更に悪化しており(平成13年0.72)、将来を担う人材の確保を含め、地域活力の創出にも影響を与えることが危惧される。
1.食料品製造業
(1)  豆富業界は、大型店の倒産、小売店の廃業等流通の変化が激しく、売上高の伸びは期待できない。
(2)  醤油業界は、狂牛病問題等による食品への不安感が解消されておらず、また外食産業では食材の低価格化が進み、これらのことから業務、家庭用共に前年を上回る好材料はなく、厳しさが続くと予測される。

(3)  水産練製品業界は、原料価格が為替の円安と狂牛病によるヨーロッパの白身魚需要の増加により上昇に転じている。製品に転嫁できない限り収益面では厳しい年となるであろう。
2.繊維・同製品製造業
 好転要因は見あたらず、良くて横ばいであって、向上の見込みは少ない。
3.木材・木製品製造業
(1)  合板業界では、新設住宅着工数は110万戸と予想されており非常に厳しい。

(2)  木材業界では、新設住宅着工の増加が見込めないことから更に厳しくなると思われる。梱包材製材業においては、大手企業、鉄鋼企業の業界再編成が進んでいることから注文の絶対量が少なくなり、加えて距離のある山陰に対する発注は厳しくなる。建築材は建築基準法をクリアできるものをどれだけ揃えられるか、企業の差別化が進む。木材木工業は総じて小回りのできる業態ではないので、困難な年となる。

(3)  家具業界では、消費の先行き不透明感から今期も厳しい景況が予測される。
4.出版・印刷業
 産業界における総需要の減退と価格破壊の進行、過剰な供給力とコストの削減が迫られる中、業界においても一層厳しい経営環境が続くものと思われる。
5.窯業・土石製品製造業
(1)  瓦業界は、明確な景気対策が見えず、住宅着工数、葺き替え需要が減少するものと予測され、併せて環境問題等緊急を要する課題の対策に迫られ、一段と厳しい状況下にあると思われる。
(2)  生コンクリート業界では、今年度は大型物件が乏しく、また公共事業削減のため、対前年比で約10%減少する見通しである。
(3)   コンクリート二次製品業界は、好転の兆しは全く見えず益々下落するものと思われる。
6.鉄鋼・機械製造業
(1)  鉄鋼業界では、大手メーカーの調達先の絞り込みや大幅なコストダウンは益々進み、業種、規模を問わず二極化が進み経営環境はかつてなく厳しいものになると予測される。また、銑鉄鋳物の量産製品については、中国からの海外調達の動きが更に増え影響は大きく、同業者の中には生産拠点を中国に移すべき気運もあり、景気悪化は否めない。
(2)  一般機械器具製造業では、経済のデフレスパイラル状況等により、経営環境は今までに例のない厳しさをしいられている。
7.電気機械器具製造業
 平成14年3月末決算とペイオフの時期の前後に、日本経済がどうなるかにかかっており、相当厳しい1年になるものと思われる。
8.卸売業
 混迷を深める経済構造改革の中にあって、先行き好転材料に乏しく悲観論が先行し、少なくとも今年度中の回復を予測する企業はほとんどない。また、金融機関の動向が注目される。
9.小売業
(1)  専門店は、前年と比較しても更なる景況の低迷、悪化が予想される。
(2)  共同店舗は、集客力の低下や空き店舗の発生等、景気停滞に加え悪材料が重なっており更に厳しい状況となるものと予測される。
(3)  商店街では、地域的にはワールドカップキャンプ地に決定した好影響が期待されるものの、厳しい経営状況が予想される。

10.サービス業
(1)   旅館業界では、国内の景気は依然として厳しいが、夫婦での旅行、女性同士の旅行等は年々増加しており、それに加え米国テロ事件による海外志向から国内旅行に振り変わることを期待している。
(2)  自動車整備業界では、自動車販売と整備は元来リンクしているが、整備業に対する依存度は耐用年数の長期化により高い現状がある。しかし、個人消費の低基調で車両販売は横ばいを見込んでおり、それらを勘案した結果、売上高は若干悪化傾向になると推測される。
(3)  建築設計業界では、地方経済の不況感は深刻であり、公共事業の見直しによる公共投資の大幅減少、民間設備投資の抑制により経営環境は更に厳しくなると思われる。
11.建設業
(1)  建設業界では、公共事業について政府予算で10.7%削減、下水道を除いて10%減となっており、民間工事は新たな需要も見あたらず期待はできないことから、業界の景況は厳しいものと予測される。また、不良債権の処理に伴う中堅ゼネコンの経営不安は一層増大し、県内に及ぼす影響は大きくなると予測される。
(2)  舗装業界では、公共工事縮小に依り景況は一段と悪化し、先行き不安な年になると予測される。
 
12.運輸業
 最近の円安傾向に工業製品輸送量の回復を期待するが、現状維持程度と予測される。


W 中央会、行政庁への要望事項
1.金融・税制関係・支援関係
(1) )自己負担のない助成金を期待する。
【商店街】
(2)  高度化事業制度による資金返済について支援措置を切望する。
【共同店舗】
(3)   個人消費回復の為の所得税減税の実施、また金融機関の貸し渋りについて支援を願う。
【小売業界】
(4) 高度化事業制度既往借入分資金の金利引き下げ(借入年度によって生じる金利格差の是正)を望む。
【卸売業界】
(5) 中小企業に対するセーフティーネットの緊急整備を求める。
【電気機械器具製造業界】
(6) 制度資金はもとより保証協会の更なる支援を要望する。
【鉄鋼・機械製造業界】
(7) 借入金の返済を長期にシフトする方策支援を期待する。
【食料品製造業】
2.公共関係
(1)  現状では料金負担に耐えられないため、高速道路通行料金の値下げによる利用の増大を望む。
【運輸業界】
(2)  民間・公共工事について工事量の確保(前倒し発注・大型物件への地元事務所のJV参加)と発注の平準化を求める。
【建設業界】
(3)  大型景気対策の導入を望む。
【小売業界】
(4) 中小企業の育成強化、情報提供、補助事業等各種支援制度の継続実施を求める。(特に中小零細企業に実りある)また、公共物件について県内事業者の優先、下請企業への適正金額での発注を望む。
【鉄鋼・機械製造業界】
(5) 景気対策や雇用の安定化、また地域社会の発展に不可欠な高速道路交通ネットワークの拡大をはじめとする社会基盤整備の促進、県内公共工事において県内産コンクリート製品の最優先での採用等、これらについて強く要望する。
【窯業・土石製品製造業界】
(6) 行政への申請書、付属資料の簡略化簡素化に併せて支援を求める。
【出版・印刷業界】
(7) 抜本的な景気対策の実施と共に日本経済を支える中小零細企業への支援策を強化してほしい。 
【木材・木製品製造業】
4.その他
(1)  経営革新の為の情報、支援を願う。
【卸売業界】
(2)  中国等の台頭による製造業の空洞化が懸念される中、高度な機械設備等の有利な貸与制度や、製造現場にマッチした技術指導員、相談員の確保が必要である。
【鉄鋼・機械製造業界】
(3)  ファンデーション業界のほとんどのメーカーにおいて海外進出の兆しがある中、国内の空洞化は避けられない状況にあり、アパレル業界の末端にある縫製業は最も弱い立場にあるので、ユニクロ現象などともてはやさず国内企業を使うメーカを育成してほしい。
【繊維・同製品製造業】
(4)  県内中小企業に後継者が生まれ育つ産業構造を作ってもらいたい。【食料品製造業】
(5)  円安が強くなり原料大豆の値上がり傾向が続いているため、輸入大豆の価格安定を切望する。 
【食料品製造業】