同族会社の株式評価方法(財産評価基本通達178〜186―3)

 取引相場のない同族会社の株式を相続した同族株主の株式評価は,従来小会社については清算価格で評価する「純資産価額方式」,中会社については,「純資産価額方式」と類似業種の上場株式価額に準じて評価する「類似業種比準方式」の併用,大会社については「類似業種比準方式」の採用が原則となっているが,小会社においても「類似業種比準方式」を一定割合導入することができるなど事業の継続を参酌した制度となっている。また,平成6年度の通達改正により,会社区分の基準に従来の資本金額基準に代えて,従業員基準が導入されるとともに中会社における類似業種比準方式の適用割合の改善が行われた。

(1) 会社区分ごとの評価方法
@ 小会社
次のいずれかを選択できる
  1. 純資産価額方式(原則)
  2. 純資産価額50%+類似業種比準価額50%
A 中会社
次のいずれかを選択できる
  1. 純資産価額方式と類似業種比準方式の併用方式(原則)
    純資産価額40%+類似業種比準価額60%
    純資産価額25%+類似業種比準価額75%
    純資産価額10%+類似業種比準価額90%
  2. 純資産価額方式(注:(4)Bの(注)の2.及び3.を参照)
B 大会社
次のいずれかを選択できる
  1. 類似業種比準方式(原則)
  2. 純資産価額方式
(2) 比準の対象となる業種区分
 上場会社の株価と比較等をする場合の対象業種は,原則として小分類による業種区分が採られているが,小分類と中分類間(小分類のない業種については中分類と大分類間)での有利な選択ができる。
(3) 比準する株価の算定期間
 類似業種の上場株価を相続前3か月間の各月の平均株価のうちの最低の株価を採ることとされているが,前1年間の平均株価を選択することもできる。
(4) 取引相場のない株式の評価の原則
@ 純資産価額方式
純資産価額=
総 資 産 価 額
(相続税評価額ベース)
負債の
金 額
評価益に対する
法人税等相当額

課税期間における発行済株式数
〔備考〕
 平成2年9月1日以後に相続する場合における「総資産価額」の評価については,評価会社が課税時期前3年以内に取得又は新築した土地及び土地の上に存する権利並びに家屋等の価額は,課税時期における通常の取引価額に相当する金額によって評価する(「相続税財産評価に関する基本通達の一部改正について」(平成2年8月3日国税庁長官直評12直資2―203 185))。
(注) 株式の取得者とその同族関係者の持株数の合計が評価会社の発行済株式数の50%未満である場合は,上記により計算した1株当たりの純資産価額は20%減額評価される。以下,後記の「B純資産価額方式と類似業種比準方式の併用方式」の計算式における純資産価額についても同じ。
A 類似業種比準方式
類似業種比準価額 = A ×
(b)
(c)
(d)



× 0.7
(注)上記算式中の記号はそれぞれ次のことを示す。
上場類似業種の平均株価のうち最も低いもの(3か月間又は1年間の平均株価)
課税時期の属する年の類似業種の1株当たりの配当金額
課税時期の属する年の類似業種の1株当たりの年利益金額
課税時期の属する年の類似業種の1株当たりの純資産価額(帳簿価額によって計算した金額)
(b) 評価会社の直前期末における1株当たりの配当金額
(c) 評価会社の直前期末以前1年間(又は2年間の年平均)における1株当たりの利益金額(欠損の場合はc=0とする。)
(d) 評価会社の直前期末における1株当たりの純資産価額(帳簿価額によって計算した金額)(マイナスの場合はd=0とする。)
(注) 上記の1株当たりのb,c及びdは,すべて1株当たりの資本金の額が50円とした場合の金額として計算することとされているので,1株当たりの資本金の額が50円以外の場合の類似業種比準価額は,上記の算式によって計算した金額に1株当たりの資本金の額の50円に対する倍数を乗じて計算した金額になる。
B 純資産価額方式と類似業種比準方式の併用方式
評価額 = 純資産価額 × (1 − L) + 類似業種比準価額 × (L)
(注)
  1. Lは,各価額に乗ずる割合で,会社の規模によって区分されている。((5)参照)
  2. 計算式中の純資産価額については,上記@(注)の20%減額評価が適用される。
  3. 納税義務者の選択により算式中の「類似業種比率価額」を「純資産価額」に置き換えて計算することができる。この場合の計算式は
    純資産価額 × (1−L) + 純資産価額 × (L)
    となるが,純資産価額については減額評価は適用されない。
(5) 会社の区分
 同族会社は,従業員数,総資産価額及び年間取引総額を判定基準として,表1のとおり大・中・小会社に区分される。