役員の報酬,賞与及び退職金(法人34条,35条,36条)

〔役員報酬〕
  1. 過大な役員報酬の損金不算入
    役員報酬は損金となるが,過大部分は損金とならない。
  1. 過大かどうかの判定基準(法人令69条)
    次の(1),(2)のいずれか多い金額が過大報酬とされる。
    (1) 総会又は定款で定めた限度を超えて支給した報酬額
    〔備考〕
     総会等の定めは,役員各人別でも役員全体の総額でもよい。また,使用人兼務役員の使用人分を差し引いてもよい。
    (2) 役員の職務内容,収益及び職員給与の状況並びに同業種で規模の類似する他の法人の役員報酬の支給状況等に照らし相当と認められる金額を超えて支給した報酬額
    〔備考〕
     判定は役員各人別に行われるので,支給額が (1)の総会等で定めた限度内でも,過大と判定された役員については損金不算入となる場合がある。
  1. 特殊な役員報酬
    (1) 非常勤役員に対する報酬
     毎月支給しない非常勤役員等に対して年俸等の名目で年1〜2回支給する場合でも,その旨の定め等によって支給する場合は損金となる(法人35条,基通(法)9−2−14)。
    (2) 経済的利益の供与
     一定の現物給与,使途不明の渡切交際費,特定の社交クラブ費等の経済的利益の供与で定期的なものは報酬とされる(基通(法)9−2−10,9−2−16)。
〔役員賞与〕
  1. 役員賞与の損金不算入
     役員賞与は,利益処分によるべきものとの考え方から損金不算入となっている。
  2. 報酬と賞与の相違
     報酬は原則として月以下の単位で定期的に支給されるのに対し,賞与は退職金以外の臨時的に支給される一切のものとされている。
  3. 経済的利益の供与
     経済的利益の供与のうち,報酬とならない臨時的に支給されるもの,例えば,役員の資産を時価以上で購入した場合の時価との差額あるいは臨時に支給した交際費等で使途不明金等は,賞与として扱われる(基通(法)9−2−10,9−2−16)。
〔役員退職金〕
  1. 過大な役員退職金の損金不算入
     役員退職金は損金となるが,過大部分は損金とならない。過大かどうかは,役員の業務に従事した期間,退職の事情,同業種で規模の類似する他の法人の退職金の状況などを勘案して判断される(法人令72条)。
  2. 損金算入は,損金経理が前提となっており,損金経理をしないと認められない。
  3.  役員退職金は,総会の決議等により退職金額が具体的に確定した事業年度の損金に算入される(基通(法)9−2−18)。なお,退職金額を具体的に確定する前年に未払金として計上し,翌期にこれを取り崩し支給した場合には,翌期の損金となる(基通(法)9−2−20)。
〔使用人兼務役員の報酬・賞与・退職金〕
  1. 使用人兼務役員の範囲(法人35条,同令71条)
     工場長,部長など職制上使用人としての地位を有しているものに限られる。職制上使用人の地位を有していても,代表取締役,専務取締役,常務取締役,代表理事,専務理事,常務理事及び同族会社の特定役員等は兼務役員とはならない。
  2. 使用人兼務役員の報酬(法人34条,同令69条)
    (1) 兼務役員の報酬は,通常役員分と使用人分とが合算されたものであるが,役員報酬が過大かどうかは,使用人分を含めて判断される(基通(法)9−2−5)。
    (2) 総会等で定めた報酬限度額に使用人分が含まれていない場合は,使用人分が適正かどうか判断され,適正額については限度額に加算される(基通(法)9−2−6,9−2−7)。
  3. 使用人兼務役員の賞与(法人35条,同令70条)
     兼務役員の使用人分賞与は損金となる。ただし,適正額でない場合は,適正でない部分の金額については損金とならない。なお,使用人分賞与は,その支給方法について従業員と同一方法によることが必要である。
  4. 使用人兼務役員の退職金
    (1) 兼務役員の退職金は,通常役員分と使用人分とが合算されたものであるが,両者を区分して支給した場合でも合計額について過大かどうかが判断される(基通(法)9−2−22)。
    (2) 使用人から役員に昇格した際に,使用人としての退職金を支給した場合は損金となる(基通(法)9−2−25)。